~学園~6
沈黙を破ったのはリーシャだった。
「・・・グニスさん。どのようにしてこの事を知ったのですか?見たと言っていましたが魔法で何かを見たと言うことですか?」
「見たのは夢の中だ。ただあまりにも現実味のある夢だったんでな」
「夢ですか。だとしたら本当に起きることではないのでは?」
シューゲンが当然の事を言った。
「普通ならな。だがそうとも言い切れない。前に現実味のある夢を見た後に実際その夢と同じことが起きたからな。この国の事だから2人には教えておいた方がいいかと思ってな」
「それって予知夢ではないですか?」
話を聞いた後にリーシャが答えた。
「そうかもしれないが、ただの夢だったということもある。だから今話した事が起きるのが確定しているわけではない。だが、一応警戒はした方がいいかもな」
リーシャは考え始めた。
シューゲンは考え始めたリーシャを見てから、
「わかりました。グニス殿が仰ったのですから何かあるのでしょう。私はグニス殿の見た夢を信じます。ただの夢であれば良いのですが、もし夢でなかった場合は陛下やリーシャ様を守るために今からでも何か出来るかもしれませんので」
「・・・ええ、私もグニスさんを信じます。夢とはいえ我が国の事です。この国の者としてそのような事態になる前に何か手を打つ必要がありそうですね」
「そうですね。この事は陛下にはお伝えした方がよろしいかもしれませんね」
「父上に伝えようにもどのように伝えるかが問題です。グニスさんの夢で起きるかもしれないと伝えても信じないでしょう。予知夢や未来が見える者から聞いたと伝えてもグニスさんに迷惑をかけることになります。父上の事ですからその者を呼ぶように指示を出すでしょうし。・・・今は私達だけにしておきましょう」
「承知しました。では私はグニス殿に教えてもらった技を出来るようになるために修練を積みます」
「ええ。私は怪しい人物を探したり情報を集めます。グニスさん、この件について何かありましたら教えていただけませんか?」
「まあいいだろう。この事を話したからには情報があれば教える」
「ありがとうございます。それと怪我の方は本当に大丈夫なのですか?」
リーシャは心配そうに確認する。
「完治させてあるから気にするな。それにあの程度の傷、どうとでもない」
「それならよかったのですが。私の護衛が大変申し訳ありませんでした」
リーシャが深々と頭を下げた。
「私からも謝罪させていただきます。部下がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
シューゲンも深々と頭を下げた。
「気にしなくていい。城に入るためにわざと切られただけだしな」
リーシャとシューゲンは頭を上げた。
「でも、グニスさんでしたらいつでも来ていただいても入れるようにしていたのですが」
「何かの予定のついでに来るならいいが話だけのためにここにくるのは面倒だったんだ」
「それでしたらせめて私には念話の時に教えていただきたかったです。予め殺すなと言われてても理性を保つのに必死だったんですから」
「悪いな。だが付いてくるのは無しと決めていたのにヨツカが付いてきたのが悪いんじゃないか?」
「うぅぅ・・・」
ヨツカは落ち込み、尻尾も下がってしまった。
「とりあえず案内してくれないか?」
グニスはリーシャに向けて言った。
「えっ?あっ!はい!父の元へ案内しますね。その後に時間があれば城の中も案内しますね。シューゲンはあの者から話を聞いてきなさい」
「分かりました。では行ってまいります」
シューゲンは騎士の挨拶をして部屋を出ていった。
「それでは私達も行きましょう」
リーシャの後に付いてグニスとヨツカも部屋を出た。
少し歩いて、大きい扉の前に着いた。
「グニスさん、ここが謁見の間です。こちらで父が待っています。グニスさんに失礼な態度を取ってしまうかもしれませんが、王としての立場もあるのでなにとぞ・・」
リーシャは軽く頭を下げた。
「それは分かっているつもりだ。ヨツカもここでは殺気を出すのもやめてくれよ」
グニスはヨツカに向かって言った。
「分かりました。迷惑をおかけしないようにします」
グニスは頷いてリーシャの方を見た。
「じゃあ頼む」
「では」
リーシャは扉の前に立っている騎士に話しかけた。
「グニスさんとヨツカさんをお連れしました。陛下への謁見をお願いします」
リーシャの言葉に騎士は騎士の挨拶をしてから大きな声で、
「はっ!リーシャ様、グニス様、ヨツカ様がお見えになられました!扉を開きます!」
そう言った後、謁見の間の扉が開いた。
中の騎士が引いて開けたのだろう。
リーシャが歩き出した後にグニスとヨツカも歩き出した。
中は広く、玉座には二つの椅子があり、玉座から扉まで少し離れている。
グニスは奥を見て、左の玉座に座っている男性と右の玉座に座っている女性を確認した。
玉座の少し前に段差があり、段差の下の左側に小太りした男性、右側にも眼鏡をかけた執事のような恰好をした老人が立っている。
歩きながら周りを確認すると、玉座と扉の間の両端に騎士が並んで立っている。
その間を三人は歩いている。
玉座の前に着いてリーシャは片膝を地面に付け、頭を下げた。
グニスとヨツカはそのまま立っている。
「父上、母上。私を救っていただいたグニスさんとヨツカさんをお連れ致しました」
その言葉を聞いて父が答えた。
「よく連れてきてくれた。そなたらが我が娘を救ってくれたグニス君とヨツカさんだね」
そう言いながら王は立ち上がり、段を降りて二人の元へ歩いて行った。
王は二人の前に立ち止まり、グニスの手を取り大きく上下に振った。
「本当にありがとう。君たちがいなければ娘は攫われていただろう。この出会いと助けてくれたことに感謝を伝えさせてくれ」
感謝を伝えたいあまり、大きく手を振っているようだ。
「いや、いい。偶然出くわしただけだ。そんなに感謝される必要はないが、今の言葉だけでいい」
「しかし、それだけでは感謝を伝えてもいないし、礼も出来ていない」
王は手を振ることをやめていた。
「礼はいらない。リーシャに学園の招待状をもらったからな。それだけでいい」
「それは娘からの礼であって、私からの礼ではないのだ。どうしても礼をさせてほしい」
王は手を掴みながら頭を下げた。
その姿を見て、左にいた小太りの男性が話に入ってきた。
「陛下!皆の前で頭を下げるなど!それに陛下の前なのにこの者達の態度にまず何か言うべきでございます!」
王は頭を上げて振り向いた。
「娘を助けてくれた恩人に頭を下げるのは当然のことだ。王としてではなく親としての礼儀だ。彼らの態度は関係ない。それに彼らの態度には何も言うつもりはない」
小太りした男性は驚き、問うことにした。
「そうかもしれませんが、ここは謁見の間でございます!騎士たちも見ておられるのですぞ!それにこの者達が恩人とはいえこの場での態度はあまりにも不釣り合いです!せめて態度はしっかりしていただきたいです!」
「其方の言うことも一理ある。だが、今は非公式の場。親が恩人に感謝を伝え、礼をする場である。彼らの仮面を被っていない姿こそがこの場では正しいのだ」
「しかし・・」
小太りの男性が何か言おうとしたが、
「そうですよ」
その場の全員が声をした方を向いた。
玉座に座っている女性、王妃を見た。
「この場はグニスさん、ヨツカさんに感謝を伝える場です。確かにここは謁見の間ですが、私達が来てもらうように頼んだ側なのです。本来であれば私達が出向いてお礼を伝えないといけない立場です。ですが、私達が出向くと国民の皆が困惑するでしょうし、何よりグニスさんとヨツカさんにご迷惑をおかけします。一度断られたみたいですが、リーシャがしっかり私達の言葉を伝えなかったのでしょう」
「・・・申し訳ありません」
グニスはリーシャを見て、リーシャ頭はまだ下がったままだがさらに下がったように見えた。
「リーシャもここは非公式の場です。そんなに畏まらずに普段通りで構いません」
「・・・はい、お母さま」
リーシャは頭を上げて立ち上がった。
「そういうわけだ。これから彼らと私達家族だけで話す。他の者はここから出るように」
王が周りに指示を出した。
小太りした男性が止めようとした。
「それは出来ません!陛下に何かあれば守るものがおりません!」
「構わぬ。それにいつまでもそんな事を言っていると逆に危険であるぞ」
「な、何が危険なのですか!?危険ならなおさら出ていくことなど出来ません!」
「いいから皆出ていくように!これは王命である!」
王が大きい声で謁見の間全員に聞こえるように言った。
「ぐっ・・・。かしこまりました。では後ほどお伺いいたします」
王と王妃、リーシャ、グニス、ヨツカ以外の人は全員謁見の間から出ていった。
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