~いざ、エルロッテ国へ~14
セレーネは水を少し飲んでから続きを話し始めた。
「一つ目の理由として、魔法剣があるからね。魔法剣の一つ一つに何かしらの魔法が付与されているの。自分と違う属性の魔法が使えるから便利なのよね。私も剣じゃないけど、ナイフで持ってるからね」
セレーネは左手を自分の体の後ろに持っていき、腰からナイフを取り出した。
「このナイフには水属性の魔法が付与されているわ。使えるのは簡単な魔法の〈スプレッド〉。水を指定した場所に落とせるわ。魔力を込めると発動する。でも魔法剣のスプレッドは普通のスプレッドよりは少し弱いわ。それでも自分の属性じゃない魔法を使えるのは戦闘において多くの戦略が増えるの」
セレーネはナイフを戻した。
「魔力を込めるだけだから誰にでも使えるの。柄の部分に魔法剣の元になっているアーティファクトがあって、それを通じて魔法が使えるといった感じね。もちろん身体強化の魔法が付与されている魔法剣もあるわ。その便利さに囚われている人が多いのよ。私もこの魔法剣を使ってるから人の事言えないんだけどね」
シューゲンもセレーネに続き話し始めた。
「セレーネが言ったように、誰でも使えてしまうので盗賊の標的になったりすることもあります。このアーティファクトには魔法がかけられていて、使用者しか使えないようになっています。しかし、魔法剣は闇取引などで高値で売れるようでして」
「つまり、魔法剣があるから普通の剣は道具のように扱われるということか」
「そう。そこで二つ目の理由よ。当然だけど、魔法剣は高いわ。迷宮で見つけられる可能性も低いからみんな買うの。で、買えない人は普通の剣。もう試してる人がいるのよ。普通の剣に魔力を流すことが出来るのかって」
「結果は不可能。何人もの研究者が集っての答えです。それを発表されては誰も普通の剣に魔力を流せるとは思いません」
「そういうことか。じゃあ俺がやったのはとんでもない事だったんだな」
「そうなんです!」
シューゲンが机に両手を叩きつけて立ち上がった。
いきなりのことだったので三人とも驚いた。
「あの時、グニス殿がした事は常識を覆したようなものです!グニス殿!もう一度あの時の剣を見せていただいてもよろしいでしょうか!?何かヒントになるかもしれませんので!」
「見せてもいいが、とりあえず出ようか。ここで剣を出したりしても店の人に迷惑かけてしまうからな」
グニスとヨツカは立ち上がった。
「そうですね。では外へ出ましょう」
セレーネとシューゲンは席から離れて支払いを済ませに行った。
「・・・結局払ってくれるなら自分で払えとか言わないでいいじゃん」
セレーネは小さな声で呟いた。
四人は店を出てからグニスとヨツカの宿の前に来た。
まだ道もわからないと思って親切に道案内をしてくれたのだ。
その間にグニスはあの日使った剣をシューゲンに渡していた。
濃い紫色をしている剣で柄の部分にはアーティファクトは付いていない。
普通の剣だが、一級品以上の代物だとわかる。
その剣をシューゲンから返してもらった。
「やはりアーティファクトは付いてなかったですね。その剣が特別ということはないですか?」
「それはないな。普通に俺が作っただけだからその辺に売ってる剣と同じだと思うぞ」
「剣も作れるのですね。・・・グニス殿が作ったのであれば普通の剣とは言えないと思いますが」
「・・・ならシューゲンの剣を貸してくれ。それに魔力を流すよ。そうしたら他と変わらないだろ?」
シューゲンは自分の剣をグニスに渡した。
そしてグニスは剣に魔力を流した。
剣に魔力が乗り、刀身が少し光っている。
「まあ、こんな感じだ」
「えっ!?すごい!どうやったの!?」
セレーネが目を輝かせている。
「シューゲンにも言ったが、剣を体の一部と思うんだ。別々で考えているから駄目なんだ。魔力を流すだけだから詠唱もいらない。属性を付与するなら詠唱はいるかもしれないが」
魔力を流していた剣に火が付いた。
グニスが火属性を付与したからだ。
「でもグニスさんは詠唱してないし、いらないんじゃないの?」
「セレーネ。信じられないかもしれないが、グニス殿は詠唱無しで魔法が使える」
「えっ!?そんなことってあるの!?」
「私と姫様がそれを見ている。間違いない」
「・・そういえばあの模擬戦でヨツカさんも詠唱してなかったし、ヨツカさんより強いグニスさんも詠唱無しで魔法が使えるって言われても納得できる・・」
「俺とヨツカは詠唱無しで属性付与出来るけど、他の人が出来るかは知らない。初めて会った人間も以前シューゲンとリーシャと会った時だけだからな」
「・・・リーシャって・・・リーシャ姫!?」
セレーネが驚いている。
「???何をそんなに驚く必要が?リーシャとシューゲンと会っていることは、さっきから話しているときに何度も出てるだろ?今更何に驚いているんだ?」
「姫様を呼び捨てにしているのに驚いているのよ!お兄!いいの!?」
「姫様の望んだことだ。何も言うな」
グニスは魔力を流すのを止めて、シューゲンに剣を返した。
「まだシューゲンの中に剣を体の一部と思えてないところがあるのかもしれないな。話を聞いて思ったのは”道具”という概念を捨てたら出来るかもしれないな。感覚の問題だからいい方法ってのを伝えるのは難しいんだ」
「いえ、今の”道具”という概念を捨てるっていうのは、自分の中で引っかかっていた何かが無くなったような感覚でした。もう少し修練してみて出来るようにしてみます」
「ああ。リーシャによろしく伝えといてくれ」
シューゲンは軽く頭を下げて城の方へと向かっていった。
「それでセレーネは帰らなくてもいいのか?」
「大丈夫。私もここなのよ」
まだ呼び捨ての衝撃から戻ってこれていないセレーネは何とか言葉を絞り出した。
「そうか。なら入るか」
グニスとヨツカは中へ入った。
「・・・一体何者なの~この人達は~・・」
疲れた様子でセレーネも後を追うように宿の中に入った。
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