~いざ、エルロッテ国へ~9
ヨツカは余裕そうに右手を腰に当てて立っている。
「それでは行きます!」
セレーネは間合いを詰めて剣を振った。
ヨツカは少し後ろに下がり、剣を躱した。
さらにセレーネは連続で剣を振り続けた。
ヨツカは全てを躱している。
そのスピードはリラには見えないほどの動きだった。
「何が起きているのですか?」
「見えなかったら登録の判断に困るだろうし、見えるようにしてやるよ」
グニスはリラの肩に手を置き、二人の戦闘を見えるよう魔法を使った。
すると、リラに二人の争いが目で見えるようになった。
「あ、ありがとうございます。こんなことが出来るんですね」
「ああ。とりあえずこれで二人の模擬戦を見てくれ」
そう言われ、リラは二人の模擬戦を見ることに集中し始めた。
「すごい、何が起きているのか分かりませんでしたが、はっきりとわかります。セレーネさんの攻撃に対してヨツカさんはずっと躱していますね」
「彼女もそれなりには鍛えているように見えるけど、ヨツカには勝てそうにないな」
「・・・正直この光景を見ていなければ信じられませんでした。この攻撃を避け続けるのはすごいです」
セレーネは攻撃を止めた。
「それではこれでどうでしょうか」
セレーネは剣を上に掲げた。
「はっ!!!」
剣を振り下ろして斬撃を飛ばした。
ヨツカは避けることなく直撃したが、斬撃の方が粉々に砕けた。
「・・なぜ・・斬撃が?」
セレーネは焦った。
斬撃が砕ける所を初めて見たからだ。
「これが全力ですか?それともまだ何かありますか?」
無傷なヨツカが尋ねた。
「・・・無傷か。まだ技はあるが、他の技はこの訓練場が壊れるので今出せる技は今のが限界だ。元々私はスピード特化で魔物と戦っているからね。技も無傷でスピードでも勝てないとなると遥かに私より強いことになるので模擬戦は終わりにしたいと思うが、貴女の攻撃を見ていないので何か見せてもらうことは出来るか?」
「わかりました。それでは・・・」
そう言ってグニスの方を向いた。
セレーネもヨツカが見ている方を向いた。
「あの方とここで同じように模擬戦をするというのでどうですか?私の力は貴女には十分わかっていると思うので、その私とあの方と模擬戦をしたら手間も無くなると思います」
「それで構わない」
セレーネとヨツカはグニスとリラの元へ歩き始めた。
「セレーネさんとヨツカさんがこちらへ来ますが終わったのでしょうか?」
「終わったと言えば終わったが本番はこれからって感じだ」
「???」
四人が集まった。
「彼女は合格なのだが、まだ攻撃するところを見れていないのでよかったら二人で模擬戦をしてもらえないだろうか?貴方との模擬戦を彼女が申し出てきたので、それを引き受けました。身内同士なので贔屓があるかもしれないが、そこはしっかり確認させてもらうから心配ない」
「それでいいのなら、俺は構わない。さっきと同じように受付の人にも戦闘を見えるようにするし、君にもそうしよう。そうしないと恐らく見えないだろうからな」
「やりました!久しぶりにグニス様と戦えます!」
ヨツカはかなり上機嫌なようだ。
「・・・わかりました。セレーネさんがそういうのでしたら模擬戦はお二人でやっていただくということで」
グニスはリラにしたことと同じことセレーネにしてから、広場の真ん中に向かった。
ヨツカもグニスに付いていった。
「大丈夫ですか?セレーネさん」
「ええ。少し吐き気がするだけでそれ以外は何もないよ」
「あの方達は一体何者なのでしょう」
「男の方は知らないが、女性の方はおそらく神狐族ではないかと思ってる」
「神狐族ってあの伝説の!?」
「うん。あの銀色の髪に尻尾。私も伝説でしか知らないけどもしかしたらと思ってる。他の種族の可能性もあるが、私を圧倒できる種族なんてそうはいないと思う。苦戦することはあっても圧倒されることなんて今までなかったからな」
「もしそれが本当だとしたらどうしてこんなところにあの伝説の種族が?」
「・・・その話は後にしよう。今はあの二人の模擬戦に集中しよう」
真ん中に付いたグニスはセレーネの方へ向いた。
セレーネは再びポケットから銅貨を取り出した。
「模擬戦の開始はさっきと同じでこの銅貨が地面に落ちたら開始だ。準備はいいな?」
グニスとヨツカは頷いた。
「よし、それでは」
セレーネは銅貨を広場の真ん中に向けて投げた。
銅貨は弧を描いてグニスとヨツカの間で地面に落ちた。
銅貨が地面に落ちた瞬間、ヨツカは超スピードでグニスに向けて殴ったり蹴ったりしている。
しかし、グニスは全て腕や足で受け流したり、防御している。
防御した際に激しい音が鳴り響く。
攻撃するもグニスには届かないのでヨツカは距離を取った。
距離を取ったが、その姿は一人ではなかった。
ヨツカが全員で八人になっていてグニスを囲んでいた。
それぞれが魔法を放った。
雷、火、水、風、地、氷、光、闇。
全て違う属性の魔法だ。
魔法がグニスに直撃した。
・・・ように見えたが、その場にグニスはいなかった。
雷の魔法を放っていたヨツカの背後にグニスは回っていた。
グニスは手のひらでヨツカを掌打した。
他のヨツカが消え、吹き飛ばされたヨツカが一人になった。
ヨツカは少し血は吐いたが態勢と整えて反転し、グニスの方を向いた。
しかしグニスはすでにヨツカの目の前に来ていた。
ヨツカは防御姿勢を取り、グニスはその上から左蹴りをした。
ヨツカはその蹴りを受けて地面に叩きつけられた。
地面にはクレーターのような大きなが開いた。
ヨツカも態勢を立て直して、降りてきたグニスに向かって雷魔法を放った。
着地を狙っての攻撃だ。普通の人なら避けられないが、グニスは防御魔法を展開して防いだ。
それだけでなく、魔法は反射されてヨツカに返り、直撃した。
ヨツカは膝をつき、息を荒げている。
反対にグニスは息一つ乱れていない。
すると、そこへ、
「そこまで!」
声の方を見るとセレーネが手を上げていた。
「これ以上されるとギルドが壊れかねない。模擬戦はこれにて終わりにさせていただく」
「わかった。結果は?」
セレーネは呆れたように言った。
「はぁ。当然合格よ。彼女が全く歯が立たない君が不合格なんてありえないでしょ。一体何者よ、貴方は」
リラはヨツカの元へ向かっていった。
「何者と聞かれてもな。ただの人間なんだがな」
「ただの人間が彼女に勝てるわけないじゃない。彼女って神狐族じゃないの?」
「よくわかったな。髪や尻尾でわかるものなのか?」
「伝説について詳しい人ならわかるかもしれないわね。私も少しは知っているけど詳しいってほどじゃないわ。私の場合は他の種族なら負けることはなくても苦戦することはあるから、手も足も出ないとなるとその可能性が一番だったってことよ」
「そうか。ヨツカの種族に付いては内緒で頼む。詳しく話してもいいが、信頼に足る人物だと判断してからになるが」
「それは構わないが」
ヨツカとリラが歩いてきた。
「やっぱり手を抜いた状態でもまだ勝てないのですね。もっと修行が必要ですね」
セレーネは驚いた。
「手を・・抜いて・・?」
グニスは驚いていることを気にすることはなかった。
「いや、実力は十分上がってるぞ。少しびっくりしたからな」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ヨツカは何度も頭を下げた。
「ヨツカさん、もう大丈夫なの?」
ヨツカは不機嫌そうな顔でセレーネを見た。
「ええ。お構いなく。治癒魔法を使えばどうとでもなります」
「治癒魔法まで・・。さすがとしか言いようないな」
「えっと、それでは試験は合格ということで登録するために受付の方まで戻りますので、また付いてきてください」
リラが歩いて行き、一緒にセレーネも付いていった。
グニスは穴を開けた場所を魔法で元に戻してから付いていった。
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