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~いざ、エルロッテ国へ~8

奥に連れて来られた場所は丸い広場のような場所だった。

「ここは訓練場でございます。冒険者が修行したり調整したりする場所になります。この訓練場で模擬戦をしていただきます。セレーネさんはこの方達が冒険者登録をして問題ないかのご判断をお願いします」

「だから私はまだ何も言ってないのだけど」

「仕方ないじゃないですか。偶然見かけたとはいえこの冒険者ギルドの中でも一番実力のあるセレーネさんなのですから、試験官よりも実際に仕事をしておられる人が見る方がよろしいでしょう?本当はこんなこと言いたくありませんが、最近の冒険者さんはちょっと戦える程度で実力のない人ばかりなんです。試験官が適当な判断をしているのもわかっています。だから信頼のあるセレーネさんにお願いしたのもあります。なのでここはどうかお願いします」

受付のリラは頭を下げた。

セレーネは少し気まずそうにしながら自分の頭に手をやり髪をくしゃくしゃしている。

「あーもうわかったよ。やればいいんでしょ」

「ありがとうございます。それではどちらからやりますか?」

リラはグニスに尋ねた。

「ヨツカからやるか?」

「はい!任せてください!」

「彼女からで頼む」

「わかりました。それではお二人とも真ん中の方へお願いします」

ヨツカは広場の真ん中へ歩いていった。

「リラ。気持ちはわかるけど貴女がさっき言ったようなことは他には言わないようにね。それから君も」

セレーネはグニスに指差した。

「さっき彼女が言ったことは周りに言わないようにお願いね」

「ん?さっき言ったこととはどれのことだ?」

「試験官が適当な判断をしているとか、実力のない人ばかりとか言ったことよ。そんなことが知れたらこの子がクビになっちゃうからね。だからお願い」

「そもそも話すほどの相手がいないから心配するな」

「そう、わかったわ」

セレーネは広場の真ん中に向かって歩き始めた。

「随分と気に入られているんだな」

「そうみたいですね。私なんかを気に入るところなんてないと思うのですけどね」

「そんなことないんじゃないか?」

「えっ?」

リラはその言葉に疑問を抱き、グニスの顔を見た。

「彼女は君の性格を気に入っているんだ。さっき言っていたことも本当は受付の人が言うべき言葉じゃないかもしれない。だが、今の現状をどうにかしようと君は考えている。受付がするべきことではないことを君はやろうとしている。彼女はそんな君の想い、性格を好んで気に入っているんだ。仲良くするといいんじゃないか?」

「・・・まるで私とセレーネさんを知っているような言い方ですね。セレーネさんのことはわからないですが、私は彼女の事は受付と冒険者ではなく、友人として付き合っていきたいと思っていますので」

「そうか。二人なら上手くいくと思うぞ」

「でもどうして私がどうにかしたいと思っていることが分かったのでしょうか?そんなに分かりやすかったでしょうか?それとも何かの魔法ですか?」

「いや、ただの受付がそんな風に言うってことはそうなのかと思っただけだ。勘ってやつだから気にするな」

「なんですかそれ」

リラは少し笑った。

すると、少し遠くから声が聞こえた。

「リラ~!!始めてもいいのか~?」

それに気付いたリラは返事をした。

「はい!お願いします!」


「貴女・・武器とか何か使う?」

セレーネはヨツカに尋ねた。

「いえ。素手で十分です」

「・・・まあいいわ。手加減するから貴女は持てる力全てを使って来てね。隠して戦って登録が出来なくても困るかもしれないし」

「お気になさらず。早く始めましょ」

セレーネはポケットから銅貨を取り出した。

「これが地面に落ちたら模擬戦開始ってことでいいかしら?」

「ええ。構いません」

「それじゃあ」

セレーネは銅貨を親指で弾いた。

そしてすぐ、腰に下げている剣を抜いて構えた。

銅貨が着地したと同時にセレーネはヨツカとの距離を縮めて剣を振った。

しかし、その剣は何も当たらなかった。

そこにヨツカはいなかったからだ。

周りを見渡すもヨツカの姿が無かった。

上を向いてもいなかった。

しかし、上を向いた直後に首に衝撃を受けた。

意識が飛びそうになるも何とか踏み止まって膝をつき、振り返った。

そこにはヨツカが立っていた。

「思ったよりもやりますね。まさか今ので気絶しないとは思いませんでした」

「一体・・・何が・・?」

「わからないんですね。やっぱり人族は弱いですね」

その光景を見ていたリラは目を見開いて両手を口元へ持ってきていた。

かなり驚いているようだった。

リラには何が起きたかわからなかったが、気が付いたらセレーネが膝をついていたのだ。

「簡単に説明してやるよ。攻撃のようなことをしてきたからヨツカらは躱して移動しながら少し様子を見て、上を向いたときに手刀で首に一撃。それでヨツカは気絶させるつもりだったみたいだけど、思っていた以上の強さはあったみたいで加減していた力で気絶させることが出来なかった。ただそれだけのことだ」

「それだけ・・って・・・くっ!」

セレーネは立ち上がり、剣を構えた。

「わかりましたか?手加減せず向かってきてください。力を見るのはこちらです」

(あの白銀の髪・・それに尻尾・・・。もしかして彼女は伝説の?)

セレーネが考えていると、

「考え事とは随分悠長ですね」

セレーネの背後から声が聞こえた。

その声の主はもちろんヨツカだった。

しかし、目の前にもヨツカがいる。

振り向くと当然だが声の発したヨツカがいた。

再び前を見るとヨツカの姿はなかった。

セレーネは体を後ろに向けてヨツカの方を向いた。

「・・・わかった。私が手加減をすると失礼なことになってしまうな。では本気で行くぞ!」

セレーネの体から大量の赤色の魔力が現れた。

それを見たリラは、

「ちょっとセレーネさん!どうして本気になるんですか!?模擬戦と言ったでしょ!?」

「まあ大人しく見てな。君も彼女が膝をついたときは驚いていただろ?彼女が本気で戦ってもヨツカには勝てない」

「えっ?そんな・・まさか・・。セレーネさんより強い方が存在することがあるんですか?」

「そりゃあいるだろう。まあ見ていたらわかるさ」



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