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~この世界で俺は~2


――15年前――


東京某所のとある夕方の飲食店


二人の男性が向かい合って座っている。

一人の男性はスーツを着ていて、もう一人はTシャツにパーカーを羽織りジーパンを穿いている青年。


「それでいつお支払いが可能ですか?そろそろ待つことも難しいのですが」

スーツの男性がパーカーの男性に問いかけている。

「もう少しで準備が出来るのでもう少しだけ待ってもらえると」

「・・はぁ。貴方いつまで引き延ばすのですか。本当でしたら、本日いただくことになっていたのですが」

「・・・次の時には必ず」

「前回の時も次の時にって、ご自身で仰っていたではありませんか」

パーカーの男性は黙ってしまった。

少しの沈黙の後、

「・・・はぁ。では次回確実にお願いしますね。もし次回お支払いいただけない場合はそれなりの対応をさせていただきますので。今回はここの支払いは私がしますので」

そう言い、スーツの男性は立ち上がり伝票を持ってその場を立ち去った。


昔からそうだった。学生の頃は周りから目立っていたり頼られたりした。

それが嬉しくて見栄を張ったり、お金が少なかったりしても奢ったりして。

頼られたい、見放されたくない、楽な方がいいと思い、楽な道を選んでは結局駄目な方に向かったり。

高校の同級生とは友達だと思っていたのは俺だけで、同級生たちは奢ってくれる人、頼めば代わりに何でもしてくれるなどと思われていて卒業して疎遠となった。

両親はすでに他界しており、大学に行くお金もなく高校を卒業して工場で働くこととなり、東京に一人出てきた。

同期はいないので親しい中になる人もおらず、仕事も厳しい。

少しのミスでもすれば上司や先輩に怒鳴られてしまう。

仕事は出来る人でもなく出来ない人でもない至って普通だった。

しかしここでも頼られたい、見放されたくないと思い懸命に仕事を行うも職場での事故により入院することに。

しかし会社は自己責任だと言い張り、会社からの支援もなく、クビにされた。

退院して仕事探しをしている最中に出会ったのが先ほどのスーツを着た彼だ。

彼は親身に話を聞いてくれた。

始めは話すことを躊躇っていたがこんなに親身になってもらえることが嬉しくていつの間にか話していた。

そして彼は仕事の話を持ち掛けてくれた。

仕事といっても会社に属することではなく、紹介したりなどをするよくあるマルチ商法のようなものだった。

その仕組みなど知らず楽にお金を稼げるようになると思ったのとメリットしか聞かされていなかったので簡単に稼げるようになると思っていた。

そして入会するのに多額のお金が必要となったが、彼は建て替えてくれて後ほど返してもらえればいいと言われ二つ返事で承諾してしまった。

これが間違いだったのだ。彼の策略とも知らず甘い言葉に乗せられてしまったことに気付いたのはそれから半年後のことだった。


立て替えてもらった分を稼ぐためアルバイトをして少しずつ返却していく日々となり、

同じ飲食店で話をしてトイレに行った後、席に戻るときに彼が電話をしているのを聞いてしまった。

「ええ。彼は順調に返していってもらっていますよ。ただあまり役に立たないのではと思っていまして。・・・それでしたら見切りをつけて次を。かしこまりました。では次のカモを探します」

(・・・カモ?・・見切り?・・・どういう・・)

彼は電話を切り、携帯をカバンの中に戻した。

「あ、あの・・」

彼は声をかけられて少しびっくりした様子だったがすぐに察したようだった。

「・・・とりあえず座っていただけますか?」

男性は再び座った。


「どうやら聞かれていたようですね。それでしたら今更隠す必要もないので、はっきりと言わせてもらいます。貴方を見つけた時は取り入りやすそうだったのですよ。親身にしてみれば貴方はぺラペラと話してもらえたので簡単でしたよ。紹介など始めから何もありませんよ。貴方からお金さえ頂ければ用済みだったのですよ」

「そんな・・・それって立派な詐欺じゃ・・」

「いえ。貴方は契約書にサインをしましたよね?内容も読んでいただいてたではありませんか」

「それは・・でも仕事とかなかったら契約書なんて関係ないのではないですか?」

「しかしこれはちゃんとした契約書です。ここには私が一括で返済を求めたらそれに従うと記されています。なので私はここで一括の返済を求めます。残りの金額は100万円ほどですので来週中に用意してください」

「そんな!・・・急に・・無理ですよ」

「しかし契約なので従っていただきますよ。本当でしたら一括で返済を求める気はなかったのですが、貴方が役に立ちそうにも無かったですし電話も聞かれたのでね。では来週またここで」

彼はそう言って店を出ていった。

そして翌週になり待ってもらって今に至る。


何でこんなことになったんだ。

わかってる。俺が悪いんだ。

学生の時も社会人になってからも今も何も変わらない。

苦しいけど何とかしないと。

親も亡くなって、頼れる友人もいない。

借りることも出来ない状況でどうやってあんな大金を・・

とりあえず一度帰って少し考えよう。


男性は店を出て家の方へと歩いて行った。

そして信号を渡るため待っている間、ふと空を見上げた。


夕暮れか。こんなにも綺麗だったかな。

今まで当たり前のように思っていたけど改めて見ると綺麗なんだな。

もしかしたらこんなに綺麗に見えるようになったのって俺の心が汚れているってことなのかな。

この人生では目立ったり頼られるために頑張ったり、騙されたりしてきた人生だったから来世では目立たず、自分のやりたいように思った通りに動いてみたいものだな。

まぁまずは今の現状を何とかしないといけないのと来世の事はまだまだ先の事だしな。


信号が変わり、空を見上げることをやめて歩き出した。

ふと男性は歩きながら左側を見た。

止まる様子のない車がこちらに向かって走ってくる。中の男性は何かを見ているのか下を向いている。その先には携帯を見て歩いている女性。

男性は危ないと思い、少し走り女性を左手で突き飛ばした。

女性はそのまま少し飛ばされて倒れそうになるも何とか持ちこたえた。

男性は女性を庇ってそのまま車に轢かれてしまった。

車を運転していた人は車を停めて降りて倒れている男性に駆け寄った。

突き飛ばされた女性は後ろを向いて文句を言おうとするも目の前の惨状に唖然としていた。

轢かれた男性からは大量の血が流されている。


・・・あれ?体が痛い。

俺は、轢かれたのか?

血が止まらない。

死ぬ・・のか?

まさか・・こんなに早く来世に行くことになるとは・・思いもしなかったな。

・・それなら今度はさっき思った・・ように・・・


生きていこう



__________


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