~この世界で俺は~18
グニスは右手を自分の腰を掴んで立っている。
あの薬はなんだったんだ?
食べる前に鑑定しておけばよかったな。
魔力を自分の上限以上に開放させるなんて。
もっとこいつの過去を見ておけばよかったな。
すると背後から声がした。
「グニスさん。この人はどうなったんですか?」
リーシャが話しかけてきたのだ。
「ギリギリ生きているといった感じだな。でももう・・・」
魔族の体は朽ち果ててきた。
「これは!?何が起きているのですか!?」
「おそらく魔力を自分の上限以上に使い続けたせいだろう。自分の上限以内だったら魔力切れで倒れるだけだが、上限を超えていたから体が耐えられなかったんだろう」
リーシャは話していたグニスを見ていたが、もう一度魔族の方を見た。
魔族は朽ち果てて灰になっていた。
「・・・くっ・・」
リーシャは悲惨な現状を見ていられず目を背け歯を噛みしめた。悲しいのか、助けられなくて悔しいのかはわからない。
「グニス殿は彼がこうなると知っていたのでしょうか?」
グニスは首を横に振った。
「いや。推測でしか言えないが、本人もこうなるとは知らなかったんだと思う。誰かに渡されたであろう妙な薬を服用しただけだと思う。その薬がおそらく自身の魔力の上限以上を開放するものだったんだ。そして人の姿では体が耐えられないから魔族のような姿に変化したのではないかと思っている。変化しても元は人間だから結果的に灰になったと推測している」
「確かに彼は捕らえる前に何かを口に入れていたな。それがまさかあのような危険な薬だったとは」
「シューゲンさんはあの薬のことは知っているのか?」
シューゲンは少し考えた。
「・・・。いえ、話も聞いたことありません。薬も見えたわけでもなかったですから、見当もなく・・・。リーシャ様は何かご存じですか?」
リーシャは落ち着きを取り戻していた。
「・・・いえ。私も存じ上げません。もしかしたら父が何か知っているかもしれません。帰ったら聞いてみます」
「そうか。何かわかったらいいんだがな」
グニスは他人事のように語っている。
もう関わろうとしていないみたいに。
実際今回限りと決めていたので二人には関わるつもりもなかったのだ。
「・・・グニスさん。まずは二度、いえ三度も助けていただいてありがとうございます。もしよろしければ半年後、もう一度お会いすることは出来ませんか?一度目に助けていただいたときにお渡しした学園への招待状もありますし、今回の件も調べてご報告したいと思っています。三度も助けていただいて何も返せないのは私が・・、いえ我が国として感謝をしたいと思っています」
「いや、いいよ。俺は別に目立ちたいと思っているわけでもないし、礼として招待状はもらったが二人の反応を見て学園に通っても意味がないと思ったからな」
当然のようにグニスは誘いを断った。
二人の反応というのは魔法のことや剣に魔力を纏わせることを知らないということだ。
「・・・それでしたらグニスさんの知識を私に少し教えていただけないでしょうか?お礼にはならないですけど、今まで勉強していたことが何だったのかと思いまして・・。学園に通っていただいて専属としてお願いできないでしょうか?もちろんグニスさんが目立たないようにいたします!教えていただいたことも他言しないと誓います!どうかお願いします!」
リーシャは深々と頭を下げた。
グニス困惑していた。
俺に何のメリットもない提案なんだがな。
もしかして俺を監視みたいなことでもしたいのかな。
・・・・・・・・。
今回限りってことで関わったんだけど。
今回とは別で新しく恩を売るか、拒否するか・・だな。
すると念話でヨツカが話しかけてきた。
『グニス様。勝手ながら私のご意見を言ってもよろしいでしょうか?』
『ヨツカか。どうした?』
『私はその提案乗ってもよろしいかと思います』
『えっ?ヨツカがそんなことを言うなんて珍しいな。てっきり「絶対駄目です!」とか言うのかと思っていたけど、ヨツカがそういうには何か思う所があるのか?』
『はい。今回の件とは別でグニス様は一度どこかの国の街に行こうと思っておられたと思いますが、それが早くなったと思えばよろしいのではないかと。・・・それにその薬。私の集落と関係がありそうだと少し気になってまして。私自身の事を持ち出して申し訳ありません』
『・・・確かにあの薬は復讐に繋がりそうだと俺も思っていた。根拠はないがヨツカも気になっているなら行ってもいいかもしれないな。まあ恩をさらに売ると思えばいいか。』
『はい。根拠のないことでグニス様にご意見を言ってしまい申し訳ありませんでした。でも、どうしても何故か気になってしまって。グニス様と一緒に調べられたらと思いました』
『・・・それならヨツカも学園に通うか?礼としてもう一つ紹介状書いてもらうことも出来ると思う。けどそれにはヨツカにはこの場に出てきてもらうことになるし、人族と関わることになってしまうが』
『よろしいのでしょうか?私はグニス様と一緒にいられたらそれでいいので気にしません。むしろ他の人族の事など興味ございませんので』
『ははっ。わかった。それじゃあ提案に乗るか。ただ提案に乗るだけじゃなくて条件も提示してみようか』
『条件ですか?』
『・・・それは・・』
「グニスさん?」
返事がなかったのでリーシャはグニスを呼んだ。
「・・あっ!ああ、悪い。ちゃんと教えるかはわからないが、一応提案を受けさせてもらおうと思う」
「あっ!ありがとうございます!」
「だが条件がある」
「じょ、条件・・ですか?」
リーシャは唾を飲み込んだ。
「俺の自由は保障すること。学園で学ぶ必要がないと決断したときは学園を去ることを止めない事。俺の邪魔はしない事。教えるのは俺の時間が空いてるときだけ。だが教えることは約束するから、教える時間は確保するからそこは安心してくれていい。まあとにかく俺が何かすることに対して邪魔しない、自由を保障してくれたらいいよ」
リーシャは少し考えた後、
「わ、わかりました!それで大丈夫です!ありがとうございます!」
「あと礼として一つもらいたいものがあるんだがいいか?」
「いいですよ!なんですか?」
「もう一人分の招待状をもらえないかな?」
リーシャはキョトンとした表情をした。
「もう・・一枚・・ですか?・・それはどうして?」
グニスは自分が待機していた方を向いた。
リーシャとシューゲンも同じ方を見た。
「いいよ。出てきて」
その声とともにその場所から少しずつ全身のヨツカが現れた。
認識阻害の魔法を解いたのだ。
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