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~この世界で俺は~15

リーシャは振り返る。

そこには騎士4名が歩いてきて、何かを抱えていた。

「リーシャ様!お連れしました!誘拐犯の者たちです!リーシャ様から連れてきてほしいと我々に伝えていただきたいとそちらの方から言われましたので連れてきました!」

騎士たちはグニスの方を見た。

「えっ!?私そんな事・・・」

リーシャはグニスの方を見た。

変わらず腕を組んで待機しているグニス。

視線に気付き、頷いた。

(そう。貴方はこうなる事を見越して、このようなことを・・・)

リーシャも頷き返した。

「ええ。ありがとう。ちょうどいいタイミングで連れてきてくれたこと感謝します」

「いえ!それでは我々はこのままこの者たちを見張っておきます!」

誘拐犯はまだ意識を失っている。

腕には特殊な金属で出来た手錠のようなものが付けられていた。

手錠にはいくつかの魔石が付いている。


あの手錠はなんだ?

鑑定してみるか。

・・・・・。

なるほど。

魔力を使うことが出来なくなるアイテムか。

古代の産物〈アーティファクト〉のようなものか。

あの魔石のような物の力で封じているのか。

手錠のような形にしているのは抵抗出来ないようにしているみたいだな。

でもあれはアーティファクトではないな。

それを元に作った感じだな。

技術的にエルロッテでは作るのは無理だから、おそらく作ったのはグランタだな。


「さて、誘拐犯も連れてきたのでもう言い逃れは出来ませんよ。シューゲン、捕らえなさい」

シューゲンの方を向いて言い放った。

「かしこまりました」

シューゲンは歩いて騎士に近寄る。

リーシャは誘拐犯の方へ歩き出した。


このまま素直に騎士が捕まればいいんだがな。

少し読心魔法使うか。


グニスは読心魔法を使って、騎士の心を読んだ。

(・・・くそ!どうしてこうなった!あいつらが失敗なんかするから!・・それにあいつ!あいつもいなければこんなことにならなかったのに!・・・せめてあの姫様だけでも!あの誘拐犯に万が一としてもらった薬を飲めば!)


・・・薬?

嫌な予感がするな。

極力あの人たちの力でどうにかしてもらいたいが。


「・・・くそっ!」

騎士は懐から何か赤いような薬を口に入れて飲み込んだ。

その瞬間その騎士からどす黒い魔力が溢れ出した。

「えっ!?なに!?」

リーシャは振り返り、どす黒い魔力の方を見た。

シューゲンも何が起きているのかわからないが、近くで魔力が溢れ出しているため吹き飛ばされないように耐えている。

魔力が収まり、リーシャとシューゲンは驚いた。

そこにいたはずの騎士の姿が変わっていた。

まるで魔物のような姿に変身していた。

実際には魔物ではない。

肌の色が黒く変色し、頭からは角が生えている。

背中から翼のような物が生えていた。


あの姿・・・。

魔族か。

魔族に変身出来る薬だったのか?

・・・・・。

いや、そうではないな。

あいつから心の声が消えた。

何も考えることのできない化け物といったところか。

おそらく最後に願っていたことは成し遂げようとするだろう。

・・・つまり、狙いは。


グニスはリーシャを見た。

急な変身で驚き、戸惑っている。

それは周りの騎士も隊長のシューゲンも同じだった。

そして、魔族はリーシャ目掛けて突進した。

リーシャは魔族の動きにようやく気付いて、腰から小さな杖のような物を取り出したが慌てていたので落としてしまった。

シューゲンも少し遅れて気付き、叫んだ。

「リーシャ様~!!!」

シューゲンが走り始めるも間に合わない。

リーシャもやられることを覚悟して魔族を見ていた。


しかしその刹那、リーシャの目には何かが一瞬見えた。

一瞬過ぎて何かはわからなかった。

しかし、一瞬見えたあとに魔族は後方の少し上に飛んで行った。

いや、飛ばされたのだろう。

体の向きが逆になっているからだ。

何に飛ばされたのかわからず、戸惑っているとシューゲンがリーシャの元へ辿り着いた。

「リーシャ様!ご無事で!?」

「え、ええ。今のはシューゲン、貴方が?」

「いえ、私は何も。突如奴が後ろに飛ばされてました。リーシャ様が何か魔法でしたのでは?」

「違うわ。私は杖を落として魔法が使えなかったんですもの。杖が無くても使える魔法もありますが、貴方も知っての通り飛ばすことの出来る魔法なんて使えないわよ」

(・・・・もしかしてグニスさん?)

リーシャはグニスの方を見たが、グニスは変わらず腕を組んで待機していた。

(・・・違いそうね。ていうかこの状況で変わらず腕を組んでいられるグニスさんって一体・・・)

魔族は態勢を立て直して空中に浮いた。


まあ、疑うよな。

でも俺が何かするのはここまでだ。

どうしてもってときは手助けするが、それまでは任せよう。

・・・ヨツカに連絡しておくか。


グニスは読心魔法を使って疑われているか確認はしていた。

そして念話でヨツカに連絡した。


『ヨツカ』

『はい。グニス様!何かありましたか?』

『ああ。ちょっと魔族みたいな奴が現れてな。詳しい事情は帰ってから話すが、人族がその魔族みたいな奴との戦いが始まるみたいだ。面白いかもしれないから見にくるか?ヨツカの村の事も何かを掴めるかもしれないから、一応連絡してみたが』

『・・・人族ですか。どうしてグニス様が人族といるかは分かりませんが、魔族の事は少し興味があるのですぐ行かせてもらいます。グニス様の元へ転移しますので、許可だけお願いします。認識阻害はつ使っておきます』

『わかった。許可する』


そう言った後、グニスの横にヨツカが現れた。

認識阻害を使っているので周りには気付かれる可能性は低い。

転移に関して、グニスとヨツカの間で取り決めていることがある。

緊急ではない限り、どちらかがどちらかの元へ転移する際は念話で許可を取るようにした。

許可しない場合は理由は言う必要がない。

「どうだ?一目見たあの魔族は?」

「そうですね。初めて魔族というものを見ましたが、あの魔族からは人族の臭いがしますね。何があったのですか?」

グニスはこれまでの事を簡潔にヨツカに話した。


「そうでしたか。だからあの魔族から人族の臭いがしたのですね。・・あれは本当に魔族なのでしょうか?」

「どういうことだ?」

「私も実際に会ったことはないのですが、以前父が一度会ったことがあったみたいで、その話を聞いたことがあるのです。そうしたら、魔族からはとてつもない程の魔力を感じたと言っていました。父が戦ったわけではないのですが、肌で感じたそうです。父を信じるのでしたら、魔族には人族・・いえ、この世界の生物の魔力を遥かに超える魔力があるはずなのですが、あの魔族からはそのような力を感じないのです。ただ、力を与えられている・・・いえ、人族の魔力を開放していると言っていいのでしょうか。そのような感じがします」

「なるほど。神狐族はそういうのを感じる力を持っているのかもしれないな」

「神狐族の力の事を教わる前に村が襲われたので、何も知らずですみません」

ヨツカは落ち込んでいる。

「気にしなくていい。人族の魔力を開放しているってのは正解だ。あの姿は魔族であって魔族ではない。自分自身の魔力を上限以上に開放しているから、体が耐えられるようにあのような姿になったんだろう。つまり、開放し続けているから、いずれ魔力は空になる。それに自分自身の魔力上限以上で開放しているから魔力が空になったらあの魔族は死ぬだろうな。自分の魔力上限で空になってしまえば魔力は増えるけどそれ以上は毒・・・ということ。勉強の成果と修行の成果と神狐族の力の一部かわからないが、それで少しでもわかったのはヨツカも成長したってことだな」

ヨツカの頭を撫でる。

「えへへへへ」

ヨツカは頭を撫でられてすごく嬉しそうな顔をしている。

顔だけじゃなくて尻尾も振っている。

この光景はリーシャ達には見えていない。

見えていないというより見る余裕がなく、魔族の方へ集中している。

「さて、そろそろ始まりそうだな。まずは見物するか」



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