家にある暖炉に話し続けたその結果…。
僕の名前は、ハミルトン・ミンツ。このミンツ男爵家でずっと冷遇されている13歳の末っ子だ。
僕はいつも実の母にこき使われ、兄にも姉にも殴られたり罵声を浴びせられながらも、今日も元気に生きている。
別に家の屋根裏に追いやられていても、たまに食事を抜かれていても、気にしていない。
だって僕には、この家にある『喋る暖炉』が味方についているんだから。
「おーい、ダンロくん。いる?」
『おう!いるぜい、ハミー。今日はどうしたんだ?』
「えっとね。また兄さんにお腹をグーで殴られたよ。でも、ダンロくんが『腹筋と足腰を鍛えろ』って言ってくれたおかげで、お腹が硬くなった上に踏ん張れて、全く吐かなかった!偉いでしょ?」
『おーおー!さすがハミーだな!それで、お前のにいちゃんはどんな反応だったんだ?』
「僕の腹筋が硬すぎて、手が真っ赤だった!顔もすっごく歪めてて、痛そうだったよ」
『ブワッハハハハ!ザマァないな!』
そう言いながら、ダンロくんは大きな声で笑った。それにつられて僕もふふっと笑う。
こんな幸せな日がいつまでも続けばいいなと思っていたんだけど、それも長くは続かなかった。
なぜなら、暖炉は次の日に壊されていたんだから。
「…ふっ。お前がこの暖炉と話しているの、俺は昨日見てたからな?こんなのと話す必要があったら、俺と遊んでくれよ。俺のサンドバッグとして、な?」
「兄さん…」
どうやら、この暖炉を壊したのは兄さんのようだ。しかも彼の後ろには、母さんと姉さんがクスクス笑っているのも見えた。
…うーん。別に暖炉が壊されてもいいけれど、まあいっか。
「じゃあ、僕は家を出ますね」
「…は?」
僕はもうこの家に用事がないので、呆然とする家族を尻目に、屋根裏に走って戻り自分の荷物をすぐにまとめる。
そして、荷物を持って屋根裏にある小窓から飛び降り、地面に足をつけてから、自分の家を後にした。
…はぁ、本当に兄さん達は分かってなかったんだね。あの家は生きているという事を。
そして、兄さんが壊したのは家の心臓部分だということを。
もちろん、この生きている家に憑依していた『ダンロ』くんは兄さんが殺してしまった。だからもう話し相手はいないけど、仕方ないだろう。
「さて、あの家はもう速攻崩れるだろうし、孤児院にでも行こっか」
そうして、ポツリと独り言を言った僕は、ガシャンと大きな音をたてて一気に崩れた家に振り向きもせず、目的地へと歩き続けたのであった。
ここまでお読み頂きありがとうございました!
ちなみに、家の屋根裏は大体3階建てマンションの屋上ぐらいの高さで、ハミルトンくんは足腰がすごく鍛わっているので、そこから降りるのも実は苦ではありません。超人並みのチートですね( ̄∀ ̄)
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