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世界の王候補とは  作者: 輝月 叶
一年生
1/22

プロローグ

八月の日本

日本の春の代名詞の桜は勿論今の時期は咲いていない、しかし青々とした葉を身に纏う大樹を見上げている一人の男がいた。


ある山の中で褐色の髪と瞳を持ったその男にはまるで桜が見えているかのように、愛おしい者を見ているかのように、慈しむ目を向けている。その光景は女性だろうと男性だろうと見惚れるほど絵になるが、朝日が昇ったばかりの時間帯のため辺りには人はいない。


風が吹き枝が揺れる。


「八月ももうすぐ終わる。約束の時が来た」

「意外です。師匠がちゃんと約束を守るなんて」


師匠と呼ばれた褐色の男が後ろを振り向くと日本人特有の黒髪を持つ美人がいた。幼さの残る顔をしているが無表情のせいか冷たい印象を抱く。褐色の男は気にした様子もなく明るく話しかける。


「そりゃ、文字どおりの命を賭けた契約だったからね。それにね未良(みら)


樹を見上げていた未良と呼ばれた女は男を見た。


「この約束の先で何か面白いことが起こる気がするんだよ」


「師匠が楽しんでいるときは碌なことが起こらない」と反論しようとした未良は男の表情を見て開きかけていた口を閉じた。男があまりにも楽しくてたまらないという、少年のような顔をしたから。しかし、その瞳には悲しみや寂しさが浮かんでいたことをミラは見逃さなかった。


「それにもしかしたらやっと未良の運命の相手が見つかるかも知れないじゃん」


ふざけて話す男の様子に先ほどまでの可愛げのある表情はどこへやら。その話題にも未良は無表情のまま。


「殺されたいんですか。それにどうせ師匠の約束に付き合わされてそんな余裕ありません。恋愛なんてしたいとも思いませんし」


その言葉に男の表情がすっと真剣になる。


「こればっかりは教え損ねた僕にも責任がある。だからこそ言うけど、と言うか今までも何度も言ったけど恋も愛もきっと未良が思っているよりも良いものだよ」

「そういう師匠はどうせ特定の相手を作らず遊び回ってたんじゃないですか?」


てへっ、という音がつきそうなほどウィンク、舌ペロ、ピースをばっちりに決める成人男性に未良はこれからが不安になってくる。


「師匠の約束なので仕方ないですけど、結局私にはその約束の詳細は話してはくれないんですよね」

「さすが未良、わかってるじゃん」


未良は軽くため息を吐くと風が吹く。左手で髪を押さえると手首に付けたシルバーのブレスレットがキラリと光る。それを見て男の口元の笑みが更に深くなった。


「じゃ、行こっか。イギリスへ」




二人の目当ての人物は日本との時差が8時間あるイギリスの館でボロボロの教科書に食いついていた。


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