漫才「異世界転生したい」
ボケ「漫才」
ツッコミ「『異世界転生したい』」
ボケ「異世界転生ってのがあるじゃないですか?」
ツッコミ「あの人気のやつ」
ボケ「あれをやりたいんですよ」
ツッコミ冷静な口調で。
ツッコミ「一回死なないとダメですよ」
ボケ、驚きながら
ボケ「え、一回死ぬの?」
ツッコミ呆れ気味に説明する。
ツッコミ「知らないで言ったのか!? えっと、死んで……なんか異世界で生まれ変わるんですよ」
ボケ、怒り気味に。
ボケ「いやいや、命を粗末にしちゃダメでしょ!」
ツッコミも負けずに言い返す。
ツッコミ「いや、そういうものなんですよ!」
ボケ、落ち込むように。
ボケ「異世界転生って大変ですね……」
ツッコミ「知っててやりたいって言ったんじゃないんですか?」
ボケ、申し訳なさそうに。
ボケ「みんなポンポン『異世界転生』っていうから簡単かと思いまして」
ツッコミ「いやいや、あれも選ばれた人が異世界転生できるんですよ」
ボケ「どうすれば選ばれるんですか?」
ツッコミ「とにかくダメじゃなきゃダメだね」
ボケ「ダメじゃなきゃダメ?」
ツッコミ「もうこれでもかって。誰がどう見てもダメなやつじゃないと転生できない」
ボケ「僕、無遅刻無欠席で生れた時から皆勤賞で国立大学出てて家族にも恵まれてて、性格も良いし、恋人に困ったことないし、子猫を助けたことあるし、どうしようダメなところがないや……」
ツッコミ「そんなに良いこと尽くしの人生でよく転生したいって言ったね」
ボケ「みんなやってるから」
ツッコミ「ダメだよ。そんなイケないモノ始めるときみたいに言っちゃ。異世界転生して何がしたいんですか? 基本、ダメなやつが良い思いしたり、やっぱり大変な思いするけどみんなに頼られたりしますよ」
ボケ「楽しそうじゃないですか。スライムになったり、蜘蛛になったり」
ツッコミ「いや、楽しそうに見えるだけで大変ですよ。スライムになったり、蜘蛛になったり」
ボケ残念そうに。
ボケ「そっか……異世界転生て大変なのか……」
ツッコミ「でも、どういうのがやりたいかくらいなら聞きますよ?」
ボケ「『人生に恵まれた俺が異世界で苦労しまくるけどやっぱり恵まれるけど実は仲間たちは魔王の手下で酷い裏切りをされ、ボロボロになるけど一緒に旅した想い出が忘れられなくて魔王の手下のやつらが俺の元に戻って来てくれて最後魔王を一緒に倒す件について』」
ツッコミ「長い! ガリバー旅行記の初版タイトルか!? ロビンソン漂流記の初版タイトルか!?」
ボケ「いや、だってみんな長いから」
ツッコミ「そうだけど、そうじゃない!!!」
ボケ「じゃあ『俺戦記』」
ツッコミ「それじゃわかんないでしょうが」
ボケ「オレセン!」
ツッコミ「略すな! 可愛い四コマタイトルみたいでしょうが!」
ボケ「『デビルバイオレンス』」
ツッコミ「普通のタイトルになった!?」
ボケ、頭かきながら。
ボケ「異世界転生難しいな……」
ツッコミ、深刻な表情になって。
ツッコミ「ていうかお前もう……死んでるから……」
ボケ「え?」
ツッコミ「お前、子どもを助けようとしてトラックに引かれてるんだぜ」
ボケ「……」
ボケの顔両手で掴み客席に向ける。
ツッコミ「綺麗な顔してるだろ。死んでるんだぜ……これ」
ボケ「嘘よ……」
ツッコミ「異世界言っても元気でな!」
ボケ「イヤだ! デビルバイオレンスの世界はイヤだあああああああああ! あああああああああああ!!! なんかモテモテハーレムとかみたいな異世界を望むんだったあああああああ!!!」
二人「どうもありがとうござました」