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悪党の俺、覚醒します。  作者: ひつきねじ
90/145

90<不義と背信の徒~町人たちの不穏な会話~

次からこいつら(元素竜)の事は 『 マッド・ドラゴン 』 と呼ぼう


そう心に決めた、待ちに待った大変に喜ばしい別れであった

一行で感想を言わせてもらえるなら

「乗り心地は最高だったが精神的には生きた心地がしなかった。」

全てが文句なしの極楽環境などそうそう整う事はない

世の中ってのは上手くできてるモンだな


視界を埋め尽くす眼球、というブラクラ必至な光景は

巨竜捕食事件、竜巣特攻事件に次いでしっかりと俺のトラウマになった

……で、どうやってマッドの腹から出たかって?


(……)


『 ヌ ル ッ 』 とな。


それ以上は言いたくない。


俺のトラウマ、今んトコ全部竜関連じゃないか

クラウス、頼むからこれ以上俺の心の傷を増やしてくれるな

意識を取り戻して対岸に辿り着くまでの間

自分まで肉体改造されてしまうのではないかという恐怖から

何度も、何度も泣きそうになった

田崎が無駄に想像力豊かな所為で

壁面から手術用の管が生えてきたりとか

ゆっくり体を溶かされたりとか、皮膚の下を何かが浸食し始めたりとか

色々想像させられて道中余計に怖かった


だから当初の着陸予定地より滅茶苦茶手前で、それこそ

海を渡りきったと同時に「下ります!ここで下ります!!」と

バスの降車ボタンを連打する勢いで降りた……


とかいうビビリな理由は誰にも言えない

「はよ着いて!はよ降ろして!」とか

半泣きで念じまくった情けない事実は絶対に誰にも知られたくない


記憶の底に沈めておけばバレない、絶対バレない

信じろ俺、俺なら出来る、忘れられる!忘れられるはずだ!

思い出すな思い出すな思い出すな……!!


(頼むから心が読める二人の前では絶っっっ対に

思い出してくれるなよ、未来の俺)


名残惜し気に飛び立った元素竜に表面上キリっとして手を振り

内心では「二度と乗って堪るかコンコンチキが!」と怒声を張り上げる

空を飛んで行く禍々しい姿がまだバッチリ見えている内に

元素竜との縁を永久に絶ち切るつもりでスパっと背を向け

事前に入手しておいたルベルタ帝国中心の周辺地図を広げると

方位磁石で方角を確認しておく


今いる場所も一応帝国内ではあるが

予定のポイントよりかなり早めに降りた為

都市部からはかなり距離がある

念には念を、と帝国の目が届かない森の深い海沿いの断崖絶壁に降り立ったワケだが、この場の自然環境は最悪と言ってもいい状態だった


先ず、背後の海の波音がおかしい

ドウン…ドウン…と、

なんとも言えない重低音がそこら中に響き渡っている

(おおよ)その現在地の確認を終え

地図とコンパスを仕舞いつつ振り返り

まだ禍々しい竜が飛んでいるであろう空は決っっして視界に入れないように崖上から見下ろしてみるが

透明性皆無の黒い海はやはり竜の腹の中から眺めていた時と同じで

波打つというより鈍く蠢いているように見える

何をどうやったらここまでおどろおどろしい海になってしまうのだろう


地平線ではキラキラと光を反射する青い波が僅かに見えるので

黒い海はここら一帯の局所的なものだと思われる


地面も常に小さく揺れている感覚があるので

粘度の高い液体がプラスチックのコップを揺らしているイメージが湧いた

常識では到底信じられないが、やはりこの音がこの海域での波音だ

海独特の潮の香りもしない

鼻の奥を突いてくる形容しがたい悪臭がここら一帯に漂っている

目の前に広がっている森も鬱蒼としており

生い茂る葉は汚泥のように濁っている


命名するなら『呪いの森』か『死の森』が相応しいだろう


何が原因でこうなってしまったのか……

手荷物からゴーグル付き防毒マスクを取り出して装着する

この悪臭と空気が人体に無害なワケが無い


このままだと肺をやられるぞ、瘴気マスクを付けろ!

と、某有名アニメ映画のネタを持ち出してる田崎のテンションが鬱陶しい


森に潜む魔物たちについては、先ほどマッド・ドラゴンが降り立った事もあり

粗方逃げ出してくれたのだろう、生き物の気配は無い

これほど環境が悪ければ元々生き物がいなかった可能性もあるが。

兎に角、この様子なら町に辿り着くまで

魔物の襲撃を受ける心配をせずに済みそうだ


「っし、行くか」


身体強化で右腕以外の全身に導力を巡らせて駆け出す

道中邪魔な藪や枝を短剣でスパスパと切り落としながら

風のように走り抜け、時には小さな崖を駆け下りて

大木を斜め走りしつつ、ようやく森の切れ目が見えてきた所で

徐々に速度を落とし、更に向こう側に見えた舗装された街道を確認してから森と平原の境目で一旦足を止めマスクを外して周囲の様子を窺った


空気がうまい、嫌な臭いもしない

汚染地帯からは無事抜け出せたようだ

外套に鼻を寄せて悪臭が残っていないか確認してみる


「……よし、臭いも残ってないな」


人が通りやすいように舗装されている太い道をざっと確認する

轍が浅いので馬車の通りは少ない

その割に舗装の手入れが行き届いているのが妙だ

都市外の街道を歩くのは避けた方がいいだろうか……?


もう一度地図を開いて現在地を確認する

目指す先は当然ルベルタ帝国の都心

そこまで行くには地図通りであれば町を二つ通り抜ける必要がある

間に小さな村や休憩所も点在してるとは思うが

詳細な地図は入手できなかった


「少し遠いな……」


夜通し走り続ければ明日の朝には辿り着けそうな距離

その場合は人目を避けるルートを通る事になるのでかなりの遠回りになる

かといって町を突っ切るにはそれぞれの町の出入り口で身分証を

提示しなければならないだろうし、時間もかなりかかってしまう


「さて、どうするか」


ルルムス達には数日で帰ると言ってあるから

あまりのんびりしてはいられない

つっても時間押してる原因は俺が着陸ポイント変更したからなんだけどな

都心部に行くまでにもっと近くて丁度いい着陸ポイントも探しておきたい


「ルルムスみたいに導術が使えたら隠遁や気配遮断で

人目を気にせず街中突っ切って走り抜けられるんだけどなぁ」


迷ってる内は旅人を装って街道を走っておくか。

今後の方針を固めた所で茂みから出る

外套についた葉っぱを払いながら軽く体を曲げ伸ばしして

何度か握った左手を見つめた


(ここ最近、導技関連でスタミナ切れした記憶がないな)


眠気や精神的疲弊はあるが。後者は主に竜の所為で。

セインツヴァイトでの卵運び以降体力が付いたなとは思っていたが

右腕の導力回路が欠けた後も全く疲れていない

一応回復薬と中和剤は腰に常備しているが

今回も俺自身が使う機会は無さそうだ


町か人が見えてくるまで走り続けたが

結局、一つ目の町を目前にするまで人に出会う事はなかった

街道沿いに休憩所も見かけたが無人だった


町の出入り口が見える所まで近づくと

瑞々しい野菜が入った籠を抱えた、見た感じ同年代の男が

畑の傍に立ったまま話しかけてきた


「あの、お兄さん

観光ですか」


俺の姿を遠目に見つけた時点で話しかけるつもりだったのだろう

畑が見えてきた時点で俺の方が先に男の姿を見つけて徒歩に切り替え

互いに目が合ってからはチラチラと何度もこちらを見てきていたから

話しかけられる可能性は高いだろうなと思っていたが。

やはり予想通り俺が通りがかるのを待っていたようだ

男の隣には妙齢の女性が立っている


「いいや、仕事探しだ」


短く答えると、男はあからさまに眉を顰め

傍らにいた女性の方もどこか困ったような表情を浮かべると

俺の目の前で互いにヒソヒソと耳打ちし始めた


なんだ?妙な雰囲気だな

声をかけられる以前から不可解なリアクションを

続けていた男が気になり、足を止めて相手の様子を窺う

女性との内緒話を終えた男は持っていた野菜籠を女性に託し

周囲に視線を走らせながら足早に歩み寄ってきた

表情は依然として険しい


「お兄さん、その格好は……まさか、冒険者ですか」


「そうだが、それがどうかしたのか」


「突然こんな事を言われても困惑するでしょうが……

直ぐにでも引き返して別の国に向かった方が良いですよ

ここに来る道中で休憩所がいくつかあったでしょう

町に入るよりそこで寝泊まりされた方が安全です」


男はそわそわと落ち着きなく周囲を見回している

挙動不審なその行動が、この場を誰かに見られたくないと言っている

もしかして帝国では冒険者の差別がとんでもなく酷いのか?


「冒険者に対する職業差別か?

それなら別に珍しい事でも、」


「違います」


男は食い気味に返してきた

声も表情も明らかに焦っている


「お一人ですか?ご家族は?」


「一体なんなんだ、冒険者だと何かあるのか?」


「やっぱり何もご存じないんですね

兎に角、町に入るのであれば冒険者とだけは名乗らない方がいいです

ギルドのライセンスを所持しているだけで()()()()されてしまいますから」

「あなた!警備の人がこっちに近づいて来てる!」


畑近くに立っていた女性が慌てたように声を上げ

野菜籠を背負っていそいそと歩み寄り早口で助言をしてくれた


「町の警備さん達に止められたら流れ者だと言った方がいいですよ

武具とかも、なるべく見せない方がいいと思います」


「武装してるとマズいのか」


「ええ、確実に身体検査されると思うので気を付けて下さい

冒険者だとバレたら連れていかれてしまいますから」


「連れてかれるって、どこに」


「すみませんお兄さん、私たちはもう行きますね

冒険者の貴方とお話している所を見られでもすれば

私たちも無事では済まないので」


なるほど、それで最初から視線が忙しなかったのか

男女に他者を欺くような怪しい素振りは無い

心から俺を心配してくれているが故の忠告だ

無償の善意を受けるのは田崎世界以来なので内心で戸惑ってしまう


体つきも身につけている物も

どこから見ても農民のそれで俺とは全く異なる人種なのに

冒険者かも知れない奴と関りがあると判断されるだけでヤバいのか

そそくさと俺から離れて行こうとする二人の背に声をかける


「忠告、感謝する」


男女は少しだけ振り返り小さく会釈で返事をして、行ってしまった

久しぶりに善良な人たちに出会えたな

もう一度心の中でありがとう、と礼を言って

上機嫌になった俺は鼻歌を歌いつつ潜伏の態勢を整えた

彼らの言葉を無駄にしない為に町には非正規ルートから侵入しよう

ここで得られる情報の精度次第では

わざわざ都心に行かずに済むかもしれない


先ずは帝国に支部を置いてるギルドの現状確認だな

夜を待って周辺を巡回している警備の目を掻い潜り

難なく町への侵入を果たす

そこそこに規模の大きい町だったから警備の穴を突き放題だった


(それもそうか)


侵入時、魔導具が設置されているのを見かけたから

町周辺の警備はおそらく対人ではなく対魔物用だ

人の侵入を想定していないのであれば

これほど楽に町に入れるのは当然か


目についた高い建物の屋根に上り

煙突の影から街灯が照らす地上を観察する


街並みも良く、夜間に外出する人々の表情も緩んでおり

子供連れで出歩いている人もちらほらと窺える

夜間に子供を連れて出歩いているという事は

町全体の治安がかなり良い証拠だ、そして

パっと見ですぐ分かるような武装した冒険者は一人も見当たらない


と、なると今の俺の完全武装な格好では明らかに浮いてしまう

どこかで着替えるべきか、と思ったんだが



実は着替えが一着も無いんだよなぁ~~~~~……



ガックリと肩を落として項垂れる

失敗した、安易に魔導袋を手放すんじゃなかった……

クラウスに二つとも預けてしまっているので

今身に着けている服と武具と諸々の道具以外の手持ちがない

つまり着替えられない、イコール、町に溶け込むため

早急に一般人に見えるような服を買いに行かねばならない

そうすると確実に手荷物が増えてしまう


(服ってめちゃくちゃかさばるんだよなぁ)


身に着けている防具を仕舞えるだけのバックパックは持っているが

残念なことに武装を解いてもお目見えするのは

年に似合わぬパンクでロックな格好をした俺だ


服を入手するまで絶対に人目を引いてしまう、悪い意味で。


いやだ……丸出しの腰とか胸元とか見られたくない……

だからって外套で全身隠してたら絶対に職質されてしまう

よって丸腰を主張すべく外套も脱いで行かねばならない

首元を隠せなくなるので肩に乗せている小竜も荷物番だ


肌を晒さねばならない恥辱から煙突の影でダンゴムシになるが

そうしてても埒が明かないのは百も承知だ

この格好のまま宿を取って

「冒険者みたいな客が来た!」とか通報されても困る

武装解いて荷物を隠して早急に服を買いに行くべきだ


行きがけだけだ、腹を括れ俺


夕飯時なので幸い人通りも多い

情報収集し易いタイミングを逃したくはない

そうと決まれば、と

その場で武装を解き外套で荷物をまるっと纏めたあと

結び目の上に小竜を置いて荷物番を頼み

服屋の位置にアタリをつけてから人通りのない裏道へと降り立った


さっさと歩いて一目散に服屋に入ると

ちゃっちゃと服を見繕った所でさぁ会計へ、その間五分

聖国に居る間に偵察資金を両替しておいた俺に隙は無い

購入後、試着室を借りて着替えると服装に合わせて前髪を降ろし

元着ていた服をついでに購入した大きめのバッグに押し込んで店を出る

足元は大事なのでガッチリしたブーツはそのままだが

ゆとりのある長ズボンで覆い隠しているので変に見られることはないだろう


選んだ服は俺が愛して止まない平和の象徴、ゆるっとスタイル


ナイロンに近い手触りと見た目が気に入って買った

しわになり難いアウターは、薄手で幅広の七分袖

重ね着する事前提の落ち着いた青紫色、裾は膝上までと結構長いが

生地が軽いので動きも阻害されず腰回りに物を隠すにはもってこいの見た目だ

トップは手の甲が隠れる長袖で

ボディラインにピッタリフィットした伸びが良くさらっとした着心地の灰色

ボトムはブーツを隠す事を考慮した柔らかい生地の黒いバギー


幸いにも現在の帝国の気候は過ごしやすい季節だ

春秋兼用の服も今後重宝するだろう、大事に着回そう。

アシュランの体は手足が長いから

何着ても大体似合ってくれて本当に助かる


即興で選んだにしては地味で目立たなそうで良いんじゃないか?

と、自画自賛して気分は上々だ

さて、屋根の上に置いてきた荷物も心配だし先に宿を確保して

荷物を運んでから酒場で情報収集してくるか

首元を隠せるものを見つけられなかったので小竜は宿で留守番


カバンに忍ばせるのも考えたが

俺が身に付けてる装備はどれも魔導具で贅を尽くした一級品だからな

万が一盗まれでもすれば非常に面倒臭い

町民に紛れて情報収集する間は荷物番をしていてもらおう

置いてけぼりで不満そうな鳴き声を零した小竜には

美味しい物を持ち帰ると約束してご機嫌取り。


そうして速やかに拠点を確保し

カウンターで売っていた情報誌を購入して

冒険者と疑われそうな荷物は全部部屋に置き

近場で繁盛している酒場に入ると真面目そうに話をしている客に近い席を陣取って店員に店のオススメを注文

まるで常連であるが如く一切の迷いがない流れるような行動は

長年アシュランが培ってきた情報収集能力の賜物だ


「それで、ギルドの上部会は……」


身体強化を聴覚に集中させ

潜めるように聞こえてきた客の声で「当たりだ」と口元に笑みを浮かべる

店に入って直ぐに目を付けたボックス席に居る三人の客は

やはりギルド関係者だった

細かな所作や体つき、手元を見れば大体見分けがつく

俺のように服装で身体的特徴を隠している場合は見分け辛いが

冒険者は往々にして動きやすい格好が板についているので

選ぶ服もどうしても体格を強調しがちだ


そう、アシュランのパンクロックな格好みたいにな!

俺のアレは相当極端な例だとは思うけど。


「駄目だ、動いてはくれなかった」


「既に死人が出てるんだぞ!このままでは全員殺されてしまうっ」


「私だってどうにかしたいさ、でも皇族が考えを変えてくれない限り

どうする事も出来ないんだ」


「皇室は覇権争いで忙しいんだろう?

今なら脱出させる隙は必ずある!」


「隙なんかないさ、ドゥベル地区の監視網を見ただろう

軍用犬まで配備してるんだぞ、助け出す者の中には女子供も居る

数人脱出させるだけでもどれだけ難しいか……」


「だが、このまま見捨ててしまう訳にはいかない」


「なんとしても上部会の力が必要なんだ

”動いてくれなかった”では済まされない

逃亡罪の適応を撤回してもらわなければ」


こそこそと話す数人の男たちの雰囲気はまるでお通夜だ

彼等の会話をもっと詳しく聞きたい

ギルド上部会のパイプ役になっているらしい男を尾行して

人通りのない所で声をかけてみるか


手早く食事を済ませて先に店を出ると

反対側の通りの壁にもたれて情報誌を開く

目的の男が店から出てくるまでの間

先ほど交わされていた会話の内容を分析しておいた


(善良な市民の忠告も踏まえると)


おそらく、冒険者を含むギルド関係者は全員

『ドゥベル地区』という場所へ収容されている


”強制連行”は現在進行形で行われており

都心から離れたこの町でも徹底されている、という事は末端の人間まで従わざるを得ないほど帝国の中でも相当上の人間による指示って事だ


(さっきの男たちは皇族がどうのと言っていたが)


ギルド連中の強制連行は皇帝の勅命だろうか

『逃亡罪』という単語から推察するに、国家反逆罪に相当するかなり重い罪が課せられているのかも知れない


国から撤退しようというギルドの動きを帝国に察知され

冒険者という勢力の国外流出を防ぐ策を講じられたのだろう


(関係者と話をしている所を見られるだけでも

巻き添えで強制連行される可能性がある)


忠告してくれた男女は周囲をとても警戒していた

冒険者やギルドに直接関係した者たちだけでなく、その家族や血縁

女子供もまとめて『ドゥベル地区』とやらに連行されたと考えるべきか。

聊か過剰な対応だが、それも帝国のお家騒動が関連しているのなら


(……)


嫌な予感しかしないな。


エスティール聖国の連中は揃ってお花畑な高官ばかりだった所為で

ギルドの撤退はすんなり完了してしまっているが

今にして思えばルルムスがギルドの動きに注目しないよう

働きかけていた可能性もあるのかも知れない

国家機関がまともに機能している国なら

帝国の対応はそれなりに順当なものだ


『ドゥベル地区』とやらの警戒態勢は非常に高く

ギルド関係者の中で既に『死人が出ている』かなり追い詰められた状態

直ぐにでも手を打たなければならないのに有効的な手段が無く

ギルド側は非常に焦っている……って所か。


加えて、帝国では覇権争いが勃発している


通りを行き交う人々の会話を盗み聞きしてみても

所々で同じ話題が囁かれているのでこの噂は信じてよさそうだ


皇族がお家騒動の渦中にあっても

『ドゥベル地区』に居るギルド関係者を開放する隙は見当たらない

帝国軍は強大で頑強、土台は盤石

逃亡罪を適応された人間が帝国国内に居る冒険者全員と考えると

軽く見積もっても数千人、家族まで巻き添えを食らっているなら

ヘタしたら数万……


(無理ゲーだ)


事情をかいつまんだ身としては、ギルドに所属している立場でもある事だし何かしら手を貸してやりたい気もするのだが

最終目的を『ギルド関係者の開放』と定めた場合

一介の冒険者がどうこうできるような規模ではない


(けど、)


俺の中で、悪党のアシュランが不敵に笑う

限られた情報だけでも付け入る隙は十分にあるぞ、と囁いている

そういえば()()だったなぁ

お家騒動とかドデカい勢力が大きく動くタイミングは過去のアシュランにとって

最高のかき入れ時だったからこういう話の流れ、大好きなんだよなぁ


(いやいやいや

『そっち』に関わる気は無いからな?!)


首を突っ込む方角を見誤ってはならない

悪党アシュランは関わりたがっているが、俺の手には余り過ぎる事案だ

本来の目的は『ルルムス達の為の先行偵察』だぞ!

帝国を管轄するギルドが陥っているであろう窮地も確かに気にはなるが

明らかに大規模確定の案件に関わる余裕なんぞ無い


上部会とのパイプ役であろう男と接触を図っているのだって

ルルムス達に危険が及ばないよう

帝国国内の勢力図を予め把握しておきたいからだ


気を付けろよ俺、アシュランの思考に引きずられて

目的を見失ったりするんじゃないぞ、俺!


ポーズで開いていた情報誌を睨み唸っていると

店からターゲットが出て来た

連れの男たちとは挨拶することなく別々の方角へ歩き始める


スニーキングミッション、開始だ

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