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悪党の俺、覚醒します。  作者: ひつきねじ
70/145

70<聖なる星々の国~息子を頼む?冗談じゃない~

「俺になんの用だ?伯爵」


今更改まって二人で話すようなことは無い筈だ

説明の為だけの顔見せで用が済んだ翼竜は再び歩きで雑木林の奥へと姿を消し、小竜は離れるつもりがないらしく大人しく肩に留まっている

多少警戒心を覗かせて尋ねると、伯爵は俺に向けて頭を下げてきた


「我が腹心の無礼、謹んでお詫び申し上げる」


「今の俺はただのアシュランだ

詫びる必要はない、顔を上げてくれ」


「いいえ、私たちは貴公に感謝してもしきれない恩がある

資金援助と証拠書類に関しては本当に助けられた

アシュラン様の介入がなければ我々の蜂起は成功しなかった」


「敬称は不要だ、感謝する相手も間違えてる

俺は例の証拠書類を五年も前から保持し

アレグロスティ家へ更なる追い打ちをかけた

だが、伯爵の優秀な腹心がたった一人で凌いだんだ

アレグロスティには優秀な人材がいる、羨ましい事だ」


「やはり、貴公は私の妻と息子の件に

関与してはおられないのですね」


見抜かれたか

顔色を窺うことに長けた貴族ってのは厄介なんだよな


「伯爵を(おもんばか)っての事だろう

主だというのなら部下の気持ちは汲んでやれ」


「承知しております、ですがあ奴はご覧の通り

少々過保護すぎるきらいがありましてな

今回のように肝心な事を隠し通そうとする……

あれにだけは毎度頭を悩ませている次第です」


会話の流れでふとフリッツの顔が浮かぶ


「フリードリヒは養子か?」


考える間もなく思いのままに疑問が口を突いて出た

しまった、言葉にする気はなかったのに。

素早く口を手で覆った俺の指摘に

心底驚いたという顔を見せたアレグロスティはその表情のまま答える


「なんという慧眼

未だかつて誰にも覚られなかったというのに」


「尋ねるつもりはなかったんだが

つい口が滑った」


「いえこちらこそ、咄嗟の事に

誤魔化せなかった私にも非が御座います」


こういう事は気が付いても指摘しないのが貴族のマナーだ

しかしマジか、思わぬ事実が発覚した

フリードリヒの実父はアレグロスティではなくベスカトーレ卿らしい

この様子じゃ本人は知らないんだろうな

やっぱり貴族社会は血縁関係がどこも泥沼だ


「ベスカトーレと顔を合わせたのは今日が初めてであった筈

容姿の類似点など全く無いのに、何故お分かりに?」


「殆ど直感だったが、強いて言えば『過保護』なトコか」


「…… …… ……ああ、」


物凄く納得した様子で遠くを見つめる伯爵のリアクションに小さく噴き出す

しみじみと納得できるほどの類似点だったという事だろう


「貴族の間で養子縁組など珍しい事ではないからな

俺でなくとも分かる奴には直ぐに分かる」


「フリードリヒは貴公を殊の外慕っているようですから

知られたのが貴方で良かったと思っております

……ところで、魔国軍へ出向かれる件ですが」


「それなら本格的な避難が開始される直前に

陽動とかく乱も兼ねて出向くつもりだが」


「なっ!?そのような事、お一人でなさるおつもりか!!」


「死にに行く訳ではない

もとより領民の避難移動中は軍の目を地上に引き付ける為に地竜に陽動を頼む予定だった、そこに俺が一人加わるだけだ

陽動が成功すれば翼竜を頼って脱出する

ベスカトーレ卿の提案は俺にとっても都合が良かった

それだけだ」


「敵の目を欺くための陽動ならば尚の事、我々も共に!

公お一人では怪しまれます!」


「貴族社会での俺の評判は伯爵も耳にしているだろう

一人で出向いたとして、納得はされても疑問には思われん」


「しかし!!」


「此度の侵略には義も、誇りもない

この地を愛し、領民を想うお前たちが相手をしてやる価値すらない相手だ

反乱を成功させ取り戻したばかりの伯爵には辛い決断だろうが

今、この土地に固執していてもアレグロスティに未来はない」


「……分かっております、ですが

この地は我々にとって故郷なのです、どれだけ蹂躙されようとも

この地を任されている限り、領民に望まれる限り

私には最後まで守り抜く義務がある」


「伯爵、この国は既に死んでいる

人が居なければ土地も生まれない、優先順位を違えるな

守るべき領民と共に隣国に逃れ市井に下れ

生きてさえいればまたここへ戻る機会も巡って来るだろう

新しい国、新しい土地で再出発することだってできる」


言いながら、

これまでぼんやりとしていた俺の『行動指針』が

明確に定まった気がした


贖罪の地、セインツヴァイトは焼き払われてしまったが

暮らしていた人にとってはそこが故郷である事に変わりはない

人が戻ってくるのも、住めるような場所になるのも相応に時間が掛るだろう

死体が積み上げられた忌むべき土地だと考える者もいるかもしれないが、そこは導師ルルムスや今後見つかるであろう聖女に頼みこんで祈祷と浄化をしてもらえば問題解決どころかむしろ導師と聖女が祝福を施した地として”箔”が付く

そうすれば領民も戻ってき易くなる


故郷へ帰りたい


そう願う人が一人でもいたなら、散々人々を苦しめてきた俺は

彼らの願いを叶えるべく力を尽くすべきではないだろうか

そして、その土地で……”セインツヴァイト”で生涯をかけて償い続ければ俺が背負った罪も少しは軽くなってくれるのかもしれない


(聖国に戻ったらルルムスに頼んでみよう)


どんな結果になろうとも俺が歩むべき人生は変わらない

今後の予定をつらつらと考えていたら

暫し黙り込んでいた伯爵がつと、と真剣な様子で俺を見つめてきた


「アシュラン様」


「敬称はいらないと言っているだろう」


「公が公爵家嫡男として育てられたのだというのがよく分かります

話していると、人の上に立つ者としての威厳が感じられる

何が大切かをよく分かっておられる」


「買いかぶり過ぎだ」


「それでなくともセインツヴァイト公爵家は長い間私共の後ろ盾をして下さっていました、自然と口調も改まってしまうものなのです

社交場では何度かご挨拶させて頂きましたが、」


「……」


「随分とお変わりになられた

フリードリヒは、よき主に巡り合えたようだ」


「は?」


今、何か不穏な単語が聞こえたのだが気のせいだろうか

短く問い返すも伯爵は満面の笑みを浮かべるばかり


「ベスカトーレを見ていれば分かる事かと思いますが

ご存知の通りあれの気質を強く受け継いでいる子です

一度護ると決めた相手にはとことんまで忠義を尽くす……

とはいえフリードリヒはまだ経験も浅く向こう見ずで視野もすぐに狭くなる

真面目で融通が利かず、何かと厄介事を持ち込む事も多い

末っ子で甘やかされて育ったせいか我が儘だ」


「欠点だらけじゃねェか」


アイツの融通の利かなさと頑固さは先の道案内の折に十分理解してる

冒険者パーティとも意見が分かれてすったもんだしてたからな

領民に食って掛かろうとする真っ直ぐさも思い出す

伯爵の言う通り幼少期から厄介事を持ち込みまくったんだろうな


「しかし剣の腕は中々のものです

不出来な息子ですが、よろしく頼みますアシュラン様」


「まるで息子を俺に託す、みたいな言い回しだな」


「そう申しております」


「……」


「……」


「連れてかねェぞ」


「ははは、果たしてそれをフリードリヒが聞き入れるかどうか

私もベスカトーレに『仕えたい』と頼み込まれた時は

一か月も攻防を繰り広げて結局折れてしまいましたから」


「融通の利かない厄介な奴だと分かってるなら

そんな面倒なものを押し付けるな

兎に角、俺に(とも)は必要ない

そもそもなんでそんな話になるんだ、本人の意思は無視か?」


「意思確認なら既に済ませております」


「嘘つけ

会議室からここまでそういう話する暇なんぞなかっただろう」


「公が亡くなったと信じ込んでいた時に

珍しくヤケ酒に付き合わされましてな

あんなにも落ち込んで憔悴しきったのを見たのは初めてでした

家を奪われた時も、長男が行方不明になったと聞いた時も

泣き言一つ言わなかったというのに」


「……そうなのか?」


「ええ、『やっと自分が仕えるべき人を見つけられたと思ったのに』と

泣きべそをかきながら延々と訴えられました

公が生きていると分かって、今頃は飛び上がるほど喜んでいる事でしょう」


「喜ぶだと?無い無い

ベスカトーレ卿の思惑に乗っかったんだ

フリッツの中じゃ俺ァ母親と兄が殺された元凶になってんだろ」


「その心配はありませんよ

あの子も父親に似て地頭は賢い方ですからね

先ほども公の様子を見てからすぐに察したようで

ベスを射殺さんばかりに睨み付けておりましたから」


先ほどと言われてもそんな場面一度も見てないのだが?


「ベスが私にしか話さなかった軍資金の件にも

直ぐに噛み付いておりましたし、むしろ本人の中で

私とベスへの疑心の方が大きくなっているのは確かでしょうな」


だからなんだ、何を言われても絶対に連れていかないからな

クソ、伯爵に陽動の件を言うんじゃなかった

裏で手を回されてフリッツが俺についてくる可能性が高い


(いやまて、いくらなんでも

わざわざ息子を死地へ向かわせるようなことはしないよな?)


考え込む俺をよそに伯爵は踵を返す


「さて、私も会議室へ向かわなければ……公はどうされますか」


「竜族の統率に回る

領民を傷つけたりしないよう念押ししておいたほうがいいからな

俺が陽動に出る件だが、フリッツの耳には入れるなよ」


「的確なご指示ですが、確約は致しかねますね」


「ア”ァ?」


「言わずとも本人が気付いてしまえばどうしようもありません」


曖昧な返答を受けて反射的に睨みを利かせてしまったが

続く言い分に苦虫を噛み潰したような顔をしてしまった

イカンな、不意の瞬間にゴロツキまがいなアシュランの反応が出てしまう

戒めの意味も含めてペチペチと自分の顔を軽く叩き

改めてマイルドな対応を意識した


「そりゃまぁ、そうかもしれんが」


ポリポリと頭を搔く俺に笑みを浮かべ、一礼した伯爵は邸へと戻っていった

場に残った俺も竜たちの動向を確認すべく雑木林へと足を踏み入れる

翼竜が往復した影響で進みやすくなっている林の中を歩きながら考えに耽った

フリッツが同行するかもしれないと言われた所で

そもそもの話、俺はそれを判断できる立場にないんだよな


今の俺はルルムスの旅の同行者だ


聖者を探し出し、古の王を討伐するという重要な役目を担っている彼の判断も聞かずに誰かを連れていく訳にもいかない


大体、フリッツは養子とは言えアレグロスティ家の一員だ

隣国に避難する事ができて万々歳で終わる筈がない

領民を束ねるにはアレグロスティ家の者が一人でも多く必要な筈

隣国での立場の確立やそういった諸々の交渉をするにも人手が必要だろう


よって、フリッツが俺に付いてくる必要性を感じない


何を思って伯爵が俺に託す発言をしたのかは知らないが

俺に付いてくるよりも領民と共に隣国に避難して

伯爵と共にアレグロスティ再興に努めていくのが筋ってもんだ

伯爵の言う通りフリッツの心が決まってるなら尚の事

俺と「付いていく」「付いてくるな」の言い争いになるのは目に見えている



――― よし、時間が来るまで逃げ回ろう



結論が出ているのに言い争いをすることほど不毛なものは無い

卵運びの時は時間に追われて仕方なく同行を許したが今回はそうはいかない

奴が俺に付いてくる前にさっさと翼竜に乗って退散しよう


この時の俺は、フリッツの”暴”険者ぶりを知っていながら

相当に甘く見ていたのだと思う。退散するだけでは足りない

もっと徹底して、それこそふん縛ってでもゴンドラに放り込んで

隣国へ強制連行してやれば良かったんだ


そんな後悔をするまであと十二時間。






*****






「アシ……おーい、ドコ行こうとしてんだ」


「フリッツか」


そろそろ日が暮れるという頃合いで伯爵邸へと戻った俺に

フリッツが手を振りながら追いかけてきた

不特定多数が行き交う場で名前を呼びかけて咄嗟に口を噤んだのは

俺がアシュランだと周囲に知られない為だろう


表情は緊迫した状況下において非常に晴れやかで

何やら達成感を漂わせている

俺の横に並んで歩き始めるその顔を見上げた


「お前、この状況でよくもまぁそこまで能天気に笑ってられるな」


「今さっき領民全員への避難指導が終わった

こんな顔しちゃいるけどもうクタクタだ」


「へぇ、終わったのか

竜が運ぶなんて話を領民全員が信じたのかよ」


「その辺は兄貴の手腕と信頼の成せる業だな

あと五時間もすれば予定通り避難開始だ

そっちは大丈夫なのか」


「問題ない

今夜に限り、翼竜は全面的に俺たちに協力してくれる」


「町の中が数えきれないほどの地竜で溢れかえってるのは

お前の指示なのか」


「今回の協力に対する見返りを求められてな」


「見返り!?またそういう大事な事を一人で勝手に!

卵の件の時もそうだったけどな!

あんたはもっと自分を大事に、」


「華の都アレグロを地竜に明け渡した

数日もすればこの町全体が地竜の巣になるぞ

当然だが人は住めないし寄りつけない、期間限定でな」


上から押さえつけるように怒鳴って来たフリッツの言葉を遮って話を続けると、すぐに口を噤んだフリッツは眉間に深い溝を刻みつつ唇を窄めた

おうおう、イイ男が台無しな顔してやがる


「期間、限定?」


「ああ、期間限定だ」


「……それ、親父に伝えたのか」


「わざわざ言う必要ねェだろ?」


俺が指示した訳ではないのに地竜がこの町へ集まって来た理由は

ルルムスからそういう提案があってクラウスがそれを受け入れたからだ

小竜との問答でどうにかこうにか聞き出したから間違いない


「言う必要ないって……もしかしてこれまでもずっとそうだったのか?

駄目だろ色々」


「お前にだけは駄目出しされたかねェよ」


呆れかえるフリッツに冷え冷えとした眼差しを向ける

このまま避難を終えたとして地竜と翼竜が町から去れば

何者かが意図して竜族を扇動したと思われかねないからな

カモフラージュも兼ねていっそのこと地竜の巣にしてしまえば

アレグロの町が蹂躙されることも無く贄塚を築かれることもない

魔国軍の侵攻を阻む防波堤の役割ができる上に

アレグロスティの難民への追撃も阻止できるとかどんだけ万能だよ


「で、どこへ行こうとしてたんだ?」


「会議室だ、あと数時間で避難開始だってのに

いつまで経っても顔を見せないから気になってな」


「……あんた、ちゃんと休んだのか?」


「お前よりかは元気だと思うぞ」


「親父に会いに行くんだよな

せめて風呂に入って最低限身なりを整えてからにしたらどうだ」


「そんなに酷い格好か?」


「ここに居る奴らの中で誰よりも汚いと断言できる程度にはな」


「そんなにか、じゃあ風呂貸してくれ

代えの服も頼んでいいか?」


「任せろ、その服はどうする」


「大事な私物だからな、持っていく」


「大事なのか?どこにでもありそうな服にしか見えないのに」


「この服は俺の理想郷を体現してんだよ

だから大切に着るって決めてんだ」


「ふぅん?」


意外そうな表情は神妙な顔に変わり

理解が及ばないのか最後には仰々しく顎に手を添えて顰めッ面になる


「分からない……」


暫し考え込んだフリッツは最終的に一言呟き、俺は笑った

朝からずっと砂塗れだった俺は小汚い姿のまま改めて会議の場に顔を見せるのも憚られ、フリッツの厚意に甘えて風呂を借りることにしたのだが

何故かフリッツも同行して共に風呂に入ると言ってきた

この申し出には最初ギョっとさせられたが

ドン引きした俺のリアクションに慌てたフリッツは直ぐに補足説明を入れる

どうやら大衆浴場のようなでかい風呂場らしい

湯治の効果もあるとかで今だけ一般開放されているらしく

他の者も何名か入っているとの事だった

なんだそうか、と安堵に胸を撫で下ろす俺をじっと見るフリッツ


「あんたは抵抗ないのか?

他人と一緒に風呂」


「そういうのには慣れてる」


「珍しいな、貴族は大抵嫌がるのに」


「市井に降りた身だからな

それに裸の付き合いってのも結構良いモンだと思うぞ」


「そうか、そうか!」


フリッツは嬉しそうに笑みを浮かべて俺を数歩追い越し歩き始めた

何がそんなに嬉しいんだか。

当然、アシュランは他人と風呂を共にするなど断固拒否とばかりに嫌悪を露にしている。反して田崎は大衆浴場に足繁く通っていた時期があり

温泉の醍醐味もよく知っている為むしろ楽しみで仕方がなかった

そんな二人の感覚の間に立っている俺は

ただ身を清めて少しばかり休憩を取っておこうという合理的な理由しかない


(他に人が居るならヘタに前髪上げない方がいいよな)


魔国軍が行った『勧告』を知っている領民は多い筈だ

俺がアシュランだとバレたら場を混乱させてしまう可能性がある

一応周りの耳と目を確認してからフリッツの隣へと歩み寄り声を潜めた


「フリッツ、言い忘れてたが俺の事は『アッシュ』って呼べよ

エスティール聖国で冒険者登録をしてるから身元もバッチリだ」


「身分詐称だろソレ」


「ンなこと言ってる場合か

俺の身元がバレたら混乱するのは目に見えてんだろ

俺を引き渡せって勧告が出てるんだからな」


「それはそうだが、ギルドでの二重登録は罰則対象だ」


相変わらず頭固いな。


「お前が言わなきゃ済む話だ」


「俺に悪事の片棒担がせるつもりか?」


「場の混乱を避けるために伏せることのどこが悪事だよ

それに本名は隠してても魔国軍に出向く事は決まってるんだから

別にいいじゃねェか」


「よくないだろ!

なんでアシュランがそんな窮屈な目に遭わなきゃならないんだ

堂々としてればいいじゃないか

それに魔国に引き渡すなんてことは絶対にさせない!」


「噛み合わねェなぁ」


互いが重視してる部分が異なると会話に差異が生じる

今の俺とフリッツの会話は正にそれだ

決まり事を遵守するのが悪いとは言わないが、多目的な観点から物事を見るのも大切な事だと学べる機会はこれから多く訪れる

その過程で迷惑被るのはフリッツの周りに居る人なんだろうなぁ

と、思うとまだ見ぬフリッツの隣人にご愁傷様と合掌したくなった

怪訝な顔で見下ろしてくるフリッツを半目で見返す


「何が噛み合わないんだ」


「兎に角風呂行くか

お前のその凝り固まった思考回路を解すにゃ丁度いい」


「……凝り固まってるように見えるのか?」


「視野が狭いのは確かだな

ま、お前の立場なら追々矯正されるだろ」


今度は俺がフリッツの数歩先を歩いて風呂場へと向かう

後ろを付いてくるフリッツは視線を落として落ち込んだ様子を見せていた


「コランダスやヒユイにも散々言われた……」


「頭が固い、融通が利かない、柔軟性がないって?」


「なんで俺が言われた事全部知ってるんだよ

あいつらから聞いたのか?」


「極めつけは独断先行するな、って所か

聞かんでも分かる」


前を向いたまま答えて

後ろを歩くフリッツの様子はあえて窺うような事はしなかった


俺の指摘で更に落ち込んでいるのは

その後の沈黙で十分察しがついたからな

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