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悪党の俺、覚醒します。  作者: ひつきねじ
69/145

69<聖なる星々の国~空前絶後の避難経路~

想像だにしない事態だ

ルルムスだけでなく俺まで手配されてた


フリッツの話によれば

魔国中心部では人相書き付きで手配書が出回っているらしい

他の領主が集まっていた先ほどの会議の場でも情報提供が行われ

『”アシュラン”ことアースラム=セインツヴァイトを引き渡せ』という勧告が出てから

暫くして町や村が蹂躙されたそうだ


しかし何故かここ、アレグロスティ領に関しては

勧告される事なく問答無用で侵略が始まりその後竜が大挙して押し寄せ

先ほどになって例の勧告が行われた、という経緯だ

何故この領に関してだけ問答無用で侵略行為が行われたのか

その辺りの謎は他領と比較してみない事にはなんとも言えん

で、最大の疑問は


何故俺が指名手配なぞされねばならんのか


という事だ。青天の霹靂というヤツだな

以前のサバイバル中ルルムスが言っていたが(※45話後半参照)

まさか本当に俺まで人相書き付きで指名手配されているとは。

あの時ルルムスの言に従い町に降りるのを止めておいてよかった


しかし何がどうしてそうなった?


(……)


まさか、金庫で今か今かとスタンバってる

例の魔王な旋律を奏でる強請りネタの書類が原因じゃないよな?

王族相手にやらかした過去があるけど、それが原因じゃないよな?

問題の国は滅亡して新しく魔国になったし、今更そんな


(……違うよな?)


「建国したばかりの魔国に指名手配されるって

一体何やらかしたんだよアシュラン」


「心当たりはない」


フリッツの問いに対する答えは俺も是非知っておきたい所だ

既に指名手配されている導師ルルムスの名前が出てくるなら理解できる

この指名手配に個人的な意味があるとすれば

俺の心当たりはルルムスが指摘してくれていた双子の弟妹ぐらいだ

もし手配書の人相書きが”例の別人”だったなら俺を指名手配したのが双子だというのは確定的なのだが『かなり私的な理由』になってしまう

奴らの公爵邸内私室の惨状を思い出してゾクリと背筋が寒くなった


アイツらには絶対に、死んでも捕まってなどやるものか


決意を新たにしていると

終始俺を睨みつけているベスカトーレのじいさんが口を挟んできた


「心当たりが無いなどと言われても微塵も信用できませんな

貴方が過去アレグロスティ領に対して行った非道を

忘れたとは言わせませんぞ」


ここでその話を持ち出すのか

今はそれ所じゃないと思うんだが

俺の立場では撥ねつける訳にもいかない


「当時の件は本当に申し訳なかった

今ここで正式に謝罪する、ブロッサム・アレグロスティ」


「む?どういう事だベスカトーレ

彼は元公爵家の嫡男とはいえ

廃嫡されたのは私が領主を交代するよりもっと前だろう

謝罪を受けるような覚えはないのだが、心当たりがあるのか?」


なんてこった

俺の悪行をアレグロスティ本人が関知してないとは思わなかった

ベスカトーレ卿宛に手紙をしたためてはおいたが

どうやらその部分について彼は領主に話していないらしい

というか領主が一切把握していないという事は当時もベスカトーレが個人対応で俺の魔の手を跳ね返したという事か?


(アシュランの悪知恵に単独で対抗していたとは)


とんでもなく優秀な人材を抱えてるんだなアレグロスティは。

今回の手紙の件すら話してないなら

ベスカトーレ卿個人の都合があるのかもしれない

ならばこの場で俺が申し開きをするのは彼にとっても都合が悪いのではと悩んでいると、フリッツが話に割って入って来た


「アシュランの過去の話をしてる場合じゃないだろ

問題はアースラム=セインツヴァイトがここに姿を見せた事だ

普段と見た目は違うからまだ誰も

コイツが公爵家嫡男だと気付かれてはないと思うけど」


「話し合う必要などありますまい、彼は即刻魔国兵に引き渡します」


「そんな血も涙もないことはできない

俺の命の恩人なんだぞ」


「坊ちゃんが彼にどれほどの恩義を感じていらっしゃるかは存じ上げませんが、彼は決して善人などでは御座いませんよ

何しろ彼自身が五年前、我らの領地を弄び

アレグロスティ家から全てを奪った元凶なのですから


つまり、奥方をあんな目に遭わせたのも

アレクサンドル様があのような殺され方をしたのも

何もかも全て彼の所為だという事です」


ベスカトーレの言葉に、場の全員が悲壮な表情で俺を見つめた

奥方?アレクサンドル?

卿の言い方だと、どうやらその二人は既に故人のようだが。

顎に手を当てて記憶を掘り起こしてみる


(当時のアレグロスティの家系……)


駄目だ思い当たる事がない。俺が忘れているだけか?

首を傾げてみるがすぐに「いや、そうではない」と否定する

フリッツにアレグロスティ領の謀反に関する資料や書類を提供する際、宿で情報を総浚いしたから過去俺が関わった部分の経緯や内容は十分に思い出せる

ベスカトーレ宛に謝罪の手紙だって綴ったが彼の言う事が事実であったなら、今の言葉にも謝罪と後悔の念を抱く事が出来たはずだ

だが生憎と俺には「アレグロスティの奥方」と「アレクサンドル」という人物に関する情報に心当たりがない、俺が一切関知していない案件だ


って事はベスカトーレの奴

アヴァロッティが主導した悪事も俺に背負いこませようとしてるのか

本来であれば濡れ衣だと騒ぐところだろうが、アシュランの過去の所業を思えばもっと背負いこんでもいい位だとしか思えない

エメラインの隣に立っている騎士風の男の表情が見る見るうちに憤怒に染まっていく、これは時間経過と共に殴りかかってくるヤツだな

ちら、と斜め前に立っているフリッツを見ると

彼は真顔で俺をじっと見つめていた


探るような、観察するような目だ


俺と目が合ったフリッツが僅かに眉を顰め

感情を抑えたような声色でゆっくりと尋ねてくる

必死に冷静を保とうとしているのだろう、理性的な振る舞いだ


「あんたの……所為なのか?なにも、かも……」


言葉を紡ぐうちに卿の言う「奥方」と「アレクサンドル」を思い出したのだろう

今にも泣き出しそうな、酷く辛そうな表情へと変わっていく


「フリッツ」


目の前で起こった変化に思わず名を呼んでしまった

余りにも追い詰められたような顔をしていたものだから

こいつもこんな表情ができるのか、と驚いてまじまじと見つめてしまう


(なんつー顔してんだよ……)


その表情だけでもフリッツがひどく辛い目に遭い心に深い傷を負っているのだと理解できてしまって憐憫の情から反射的に眉を下げる

真に悲痛な表情というものを前にすると、まるで自分もそれを見てしまったかのように目を合わせていられなくなるものらしい

数秒と持たず逃げるように俯いてしまった俺は無力感から眉を顰めた

俺のダチがこんなにも辛い思いしてんのに何があったのか分からない

なんの慰めの言葉もかけてやれない

卿の言う案件に関わっていたなら当時の状況を説明するだの詫びを入れるだのして少しでもフリッツの気が済むようにしてやれるのに

どう返答したものかと考えながら横目でベスカトーレを見る


卿は厳しい目で俺を見つめていた

まるで、今ここでそれを肯定する事こそが俺の贖罪だと言わんばかりに。

当事者からすれば謝罪も金も、どれだけ尽した所で意味がないのだろう

しかも直接頭を下げても当の領主からはなんの事だと返される始末


当時のアシュランは

アレグロスティ領の下剋上騒動に便乗し、ひと稼ぎしていた

事態がより混迷するよう火に油を注いだのも事実だ

それに関連付けて言うのであればフリッツの身内が何らかの酷い目に遭ったのも元を辿れば俺の所為、という事になる

被害者である彼らが俺に罰を望むのならそうするべきだ

しかもフリッツが滅茶苦茶傷ついてる、だから

今の俺に出来る事があるのなら


(どんと来いや、全部引き受けたるわ)


「俺が魔国軍に出頭すればいいんだな」


「アシュラン?!」

「ええ、是非そうして下さい

少しでも償おうという意思があるのなら」

「ベス!何てこと言うんだ!」


俺の返答に驚き目を見張ったフリッツは

それを後押しするベスカトーレに向けて声を荒げる

卿の主張に完全に乗る事はできないが

この場で否定しなければそれで十分だろう


ハッキリとした関与を認めてしまえば

遺族から求められるものは”真実”と相場が決まっているからな

何があったのか知りたい、真実を話してほしい、なんて求められても

答えを持たない俺は返答に窮してしまう

だからこう、ぼんやりと受け入れる感じで許してほしい

説明を求められたら何も知らない俺は黙るしかなくなってしまう

真実を語れる唯一の人物であろうアヴァロッティ前領主は

既に討ち取られたと領民が話していたからな、死人に口なしだ


フリッツには恨まれるだろうが仕方がない

出来たばかりの友人より家族の方が大事に決まっている

家族と領民の為に五年間ずっと諦めず進み続けて来たんだ

フリッツたちは報われるべきだ

こんな所で町と共に滅ぶなどあってはならない


「俺がアレグロスティを陥れたのは事実だ、言い訳はしない

だが、俺が連中の元へ出向いても町が蹂躙される事態は避けられんぞ

ベスカトーレ卿」


「言われずとも、現状は正確に把握しておりますよ

セインツヴァイト元公爵子息殿」


ああ、そう、うん

「助かろうが助かるまいが貴様と死地を共にすることはありえない、さっさと魔国に引き渡されてどこぞで惨めに野垂れ死ね」って言いたいんだよな

はぁァ~~心の底から嫌われてるなァ~!

理解してはいるがそこまで清々しい笑顔で言い切られると辛い

しょうがないよな、これほどに恨まれる事を過去でやらかしてるんだから。

領民たちの大脱出の手筈だけ整えて

タイミングを見計らって魔国軍に出向けばいいか


「ならば、もはやこの土地を捨てて逃げ出す以外に

貴様らが生き残る術がないのは理解しているだろう

俺はその方法を伝える為にここへ来た」


「この期に及んで領を憂う振りなどお止め下さい

どうせ五年前と同じく更なる混乱と不幸を呼び寄せようとしていらっしゃるのでしょう?万の軍勢を相手に貴殿ひとりで何ができるというのです

マクシミリアン坊ちゃん、あの者を魔国軍に引き渡します

捕縛して頂けますか」

「ああ、分かった」

「待ってくれ兄上!」

「聞き分けろフリードリヒ

コイツが元凶だとベスが言うのなら間違いはない」

「違う!

アシュランはそうやって領民全員から陥れられていたんだ!

憎しみをぶつける都合の良い対象として!

行き場のない怒りを抱えている今の俺たちがやろうとしてるように!」


フリッツの訴えは一定の効果があったのだろう

迷う素振りでその場に踏みとどまるマクシミリアン

ベスカトーレは更に険しい顔つきで俺を睨みつけているが

領主は冷静に様子見

エメラインはこちらを気にしつつも導術の安定に努めている


フリッツは実直と言うか真っ直ぐというか

一度懐に入れた人間は過去がどうあれトコトンまで信じきるタイプだ

お前みたいなヤツ中々居らんぞ、俺から言わせれば絶滅危惧種だ

騎士をこじらせてる影響もあるんだろうがそれについては一言言いたい


(すみ)やかに俺を庇護対象から外せ


目線の上に位置しているフリッツの後頭部を適度な力で空手チョップする

痛くない程度にしたにも関わらず大袈裟に「いで!」と

声を上げたフリッツが勢いよく振り向いた


「なんだよ?」


「お前しか聞く耳持ってないみたいだから

領民全員を安心安全なルートで一夜で隣国に逃がす方法を教えとくぞ

道案内が俺の仕事だしな」


シン、と

場が静まり返ったのも束の間、フリッツが体ごと俺に向き直る


「はァ!?あんた今なんて」


「報酬は銀貨五枚でどうだ」


「報酬?!そんな事言ってる場合か!」


「見送りなら町の出口まででいいぞ

俺と一緒に外に居る軍まで引き渡しに同行しても

同行者は殺されるだけだろうしな」


「いや、だからあんたは絶対に引き渡さないからな?!

ってそうじゃなくて!いや!そうなんだけど!!」


「なんだ、落ち着けフリッツ」


「いやいやなんであんたのほうが冷静なんだよおかしいだろ!

殺されると分かってるのに引き渡しを了承するあんたも問題だが

さっきの、一夜で領民全員を逃がすとかいう話は実現できるのか?!」


「俺が嘘吐いた事あったか?」


「な……かったような、あったような?」


おいおい失礼だな

隠し事はしてたが嘘は吐いてないぞ


「過去に山ほど御座いますぞ坊ちゃん」

「ベスはちょっと黙ってろ」


「言う通りにしてくれりゃあなんの問題も無く隣国まで案内するぜ」


「……安心安全なルートで?」


「おうともよ」


張った胸を拳で軽く叩き即答すれば

フリッツは苦笑いして肩の力を抜いた


「あんたが言うなら、とんでもなく快適な道案内なんだろうな」


「空を飛んでるような心地にさせてやるさ」


「ははっ!天国でも見せてくれんのか?

楽しみにしてるぜ」


「笑い事じゃねェぞ」



飛ぶからな、実際に。



と、いう訳で更に詳しく説明すべく伯爵邸の一角

避難民が集まる分館から遠くひと気のない裏庭へフリッツたちを連れてくると

開けた場所に立ち頭上高くから様子を窺っていた小竜をハンドサインで呼ぶ

呼びかけに即座に応じて俺の肩に降り立った小竜にフリッツたちは面食らい

彼らが二の句を告げる前に一番近くにいる翼竜を一匹ここへ呼ぶよう

小竜を通してクラウスへ指示を出した


間を置かずして裏庭を囲む雑木林の奥から

長い首を低くし、屈んだような姿勢で進行上にある枝葉の大半をへし折りながらのっそりと歩いて姿を見せた一匹の翼竜に

フリッツとマクシミリアンが顔を青褪めさせながらも剣を抜いた

ベスカトーレはブロッサムとエメラインの前に出て身を挺し

エメラインは杖を構えて導術の発動態勢に入っている

臨戦態勢に入ったフリッツたちを意に介さず俺の隣にそっと寄り添いどっしりとその場に座り込んだ大人しい翼竜の姿に

暫し身を固めたフリッツが声を震わせながら俺に尋ねた


「嘘、だろ?」


「嘘じゃねェよ」


「安心安全なルートって、」


「言っただろ、空を飛んでるような心地にさせてやるって」


「す、げェ……本気かよ……野生の翼竜を

こんなに間近で見れる機会が巡って来るなんて」

「いきなり町を襲撃してきた竜の大軍が領民を襲うことなく魔国兵だけを攻撃していたとか行動が統率されていたという報告は受けていたが

まさか、貴殿がやっていたのか?」

「馬鹿な、一体どうやって」

「あり得ないわ……魔物が人間に従うなんて、そんなの……

そんな事が出来るのは、伝説の」


おっと、竜人クラウスに繋がるかもしれない話題は極力避けておきたい

エメラインの呟きをかき消すように言葉を被せる


「一応言っておくが、竜を統率しているのは俺じゃないぞ

ちょっとしたツテがあってな、ここら一帯の主が

今回だけ力を貸してくれることになったんだ」


「あ"!!そのツテってまさか、卵を返した時の!?

って事は、その肩に乗ってる小さい竜はあの卵から孵った奴か?!」

「どういう事だフリードリヒ?何を知っている?!」

「ギルドの輸送依頼の時に……長くなるから詳しい話はまた後でする」


「まぁ、そんなモンだ」


「まさか命張って卵返しに行った行動がこんな形で返ってくるなんて

魔物に対しても恩ってのは売っとくモンだな

あの時アシュランに同行してて良かったぜ」


フリッツ、すんなり信じすぎだ

普通に考えてもあり得ない事だぞ?

そもそも卵はアシュランが盗みにいったものだし

奪われたものが返ってきたからって

竜が人間に恩なんか感じるはずがない

それでも場を納得させる空気になっているので

真実を隠したい俺はその空気に大いに便乗させてもらう事にした


「さて、ベスカトーレ卿

大至急大量に作ってもらいたいものがあるんだが、頼めるか」


「……なんでしょうか」


「ゴンドラだ、一度に少なくとも三十人は運べる大きさのゴンドラか

それに類する乗り物が必要だ、避難者は何人いる?」


「少なく見積もっても

他領の避難民を含め五千人以上は居ります」


「ならゴンドラは最低でも百は必要だ

町で待機してる翼竜の数は五十ほどだが頼めばもっと集まってくれるだろう

往復で二時間ほど掛かる

五千人程度なら百の翼竜で二往復すれば全員助かる

隣国に不法侵入する羽目になるがここで死ぬよりはマシだ

避難後の国との交渉事はそっちでうまくやってくれ

例の軍資金もまだ十分に余ってるだろう」


「軍資金?

ベス、アシュランが把握してるような軍資金があるのか?

何も聞いてないぞ」


「フリッツ、それは今はどうでもいい

早急に竜が両足で掴んで持ち運びできるゴンドラが必要だ

町を包囲してる軍に気付かれないよう移動は夜が更けてからになる

それまでに乗り物を用意しないと全員逃げ切れないからな」


「ゴンドラかそれに類する乗り物ですがこの場での作成は無理です

町へ材料を調達しに行かない事には」


「材料になりそうなものや人を乗せて運べそうなものは

町で待機してる竜に手あたり次第調達してきてもらう

この裏庭を作業場、兼発着場にさせてもらうぞ

数が足りなければ縄に括るか布で包むかしてでも

運ぶ手筈を整えなければ間に合わない

集まってる避難民には空路での移動に関して

これから言う注意事項を周知徹底させておいてほしい」


「それに関しては俺に教えてくれ、俺が領民に説明して回ろう」

「兄上、俺も手伝います」

「マックス、私も手を貸すわ」


フリッツとエメラインが伝達係に立候補したマクシミリアンに続く

空路での移動で一番気を付けなければならないのは温度と空気だ

避難者の多くは導力を扱えない為

出来る限り個人で自衛してもらう必要がある

空はとても冷たい、高度が高くなればなるほど

人間が生きていける世界ではなくなるので防寒は必須だ

町を包囲している魔国軍に気付かれる事無く大移動するには

夜闇に紛れて高高度を進み隣国に逃れるしかない

空が曇ってくれれば尚良いのだが、生憎と今見上げている空は晴天だ


空路移動中の注意点をフリッツ達三人に事細かに伝えて

避難者全員への伝達を始めてもらう

移動手段が竜と聞いて騒ぐ連中も多いだろうが頑張ってほしい

ベスカトーレ卿はゴンドラの手配をすべく邸に向けて踵を返した

しかしブロッサム・アレグロスティは

俺に目を向けたままその場を動こうとしない


「旦那様、邸へ戻り他の領主にも説明なさいませんと」

「それはお前に任せる

私はこの方と少し話しておきたい事があるのでな、先に行け」

「旦那様」

「二度言わせるな、ベスカトーレ」


主人にひと睨みされた卿は表情を崩さぬまま場に踏みとどまったが

態度を崩さない主人を前に目を伏せると一礼して邸へと入っていく

不機嫌そうな気配を纏ったベスカトーレ卿の背中を見送った俺は

改めてブロッサム・アレグロスティへ目を向けた

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