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悪党の俺、覚醒します。  作者: ひつきねじ
57/145

57<聖なる星々の国~アシュラン、久々の単独行動~

(アヴァロッティの内乱は治まったが

魔王軍の侵攻でどうなってるかは分からない)


そしてギルド勢力の今までにない強硬な方針

この国の対策の拙さといい身の回りの何もかもが問題だらけだ

ここ数日魔導袋内の整理を進めながら町に出て情報収集していたが

探れば探るほどヤバいネタしか出てこない


(アヴァロッティ伯爵領の件は)


ルルムスには伏せておくべきだな

なによりも優先すべきは

国を挙げて妨害工作が始まった『真の聖女』の捜索だ

聖国の人間はこぞってルルムスを宮に閉じ込めようとしている


日々出てくる食事にも当たり前のように毒が混ざり始めた

食べ物に関しては神眼があるので不純物を見つけ次第

ルルムス自身が浄化導術で無毒化しているので全く問題ない

こんな状況でアヴァロッティ伯爵領へとんぼ返りするなど出来るはずがない

フリッツの事は心配だが成り行きを見守っておくしか方法が……


(……)


思い出すのは融通が利かず曲がった事が嫌いで

友人になりたいのだと訴えてきた男の実直な姿

心配だが、やはり今のような状態ではどうする事も出来ない


ギルドを出た俺は人通りの多い街路を通って路地裏に入り

尾行が付いているかどうかを確認してから現在塒にしている建物へと入る



昨日から俺だけ宮殿を出て町で暮らすようになった



なんでかって?

神殿の連中に宮殿から追い出されたからだよ


ルルムスは導師として国賓の対応が約束されており

クラウスはタウィスとして神殿に住まなければならない義務が発生している

だが俺は自称冒険者でただの同行者、護衛という肩書だった


ルルムスが国賓として迎えられたので冒険者である俺は用済み

彼らの警護は速やかに国の警護部隊へと引き継がれた、となると

国にとっちゃたかが冒険者の俺を宮中に滞在させる理由がなくなるワケで


俺自身ルルムスの旅の同行者って認識だったから、俺の事を『ただ護衛を依頼されただけの冒険者』と認識をしていた国の対応には流石に驚いたなぁ

いや~驚いた驚いた、対応が余りにも突然な上迅速だったモンだから本当に驚いた

……ワザとそういう解釈をして追い出したんだろうけどな。


(はぁ~、今思い出しただけでも腹が立つ)


ステラの父親の息がかかった衛兵どもめ

まるで罪人を引っ立てるように宮殿から問答無用で叩き出しやがって

俺の足を思いっきり蹴りやがったあの衛兵の顔絶対に忘れんぞ

その衛兵の顔ぶれはどいつも初めて見るヤツばかりで

俺に友好的だった兵士や宴会に参加した兵士の姿は無かった

ルルムスもクラウスも、使用人すら場を離れていた夕暮れ時のタイミングだった

たかが冒険者のお前には過ぎた施しだと言わんばかりの偉そうな態度で「一晩だけは宿を手配してある、そこへ泊まれ」などと言われた


こうなったのは確実に、初日で俺がステラの機嫌を損ねたからだろう

短い宮殿生活だった

なんの準備も無くルルムスと話をする暇すら与えられず追い出されたその日の晩

一日だけ宛がわれた宿の部屋に

と~っても不思議な事に、見知らぬ男数名の襲撃があった


あれれぇ~おっかしいぞぉ~?

と、疑問を口にするまでも無くこうなった理由は察したが

いくらなんでも殺そうとまでするか?ノリがアウトローでハードボイルド過ぎるんだよ、なんだよそのコッテコテなお約束展開は。

用心深いアシュランだったから襲撃もなんなく回避することが出来たが

能天気田崎だったら確実に殺されてたぞ


どうやって回避したのかって?

とりあえずは指定された宿の部屋に入り間取りを確認した後

ゆるっとファッションに着替えて髪も下ろし身なりを整え

布団部分にアシュランが眠っているような細工をして

窓際にあるベッドサイドのランプを灯し、密室になるよう工作してそそくさと退散

向かいにある建物が丁度良く空き部屋を貸し出していたので

真向かいに位置する部屋を新しく借りて一晩中向かいの宿部屋の様子を

カーテンの隙間からこっそり確認したからに決まってる


深夜を回った頃合いで案の定外套で姿を隠した連中数名が

俺が細工を終えた宿の室内に押し入り

膨らんだ布団に向けて問答無用で剣を突き刺しまくる様子を

向かいの窓から見て盛大にため息を吐いた

ベッドサイドのランプを灯してたお蔭で暗殺の詳しい状況が良く見えたわ


しかもその暗殺者ども、布団の上から刺すだけ刺して

対象の死亡確認すらしないままさっさと逃げて行ってしまった

ありゃあ多分素人……学生かも知れないな

ステラの指示でラピスの妹を山で殺そうとしていたタウィスの一人

確かカス……カス、なんとか。名前思い出せないからカス野郎でいいか

山で拘束した取り巻き連中の人数も同じだったし

背丈も動きも妙に連想できたから外套の中身は

おそらくそいつらなんだろうと目星だけはつけておく


迎え撃ってその場で全員斬り捨てても良かったんだがそこは田崎の抗議が五月蠅過ぎたので平和的に「回避するだけ」に留めておいた

あんなステラを好き放題させている国のお膳立てをすんなり信用できるような純粋さなんぞアシュランはこれっぽっちも持ち合わせていない

元々手荷物も全て魔導袋に詰め込んでいたし

腕にそれなりの覚えもあるので襲撃された所で

対策さえ万全にしておけば痛くも痒くもない

全員見事に分断されたが二人と連絡を取る手段はいくらでもある

今日あたり宮殿に忍び込んでルルムスとコンタクト取ってみるか


と、いう経緯から

単独行動を取るにあたって翌朝真っ先に行ったのは

変装……もとい、本来の姿に戻る事


アシュランとして歩き回っても良かったんだが命を狙われている事が分かってしまったし、わざわざ身動きとりにくくする必要もないだろうって事で

アシュランのギルドカードを処分して新たにアッシュとして新規登録を行った

嗚呼……結局油断しきったこの服装が変装扱いになっちゃったなぁ


甚だ不本意である


(冒険者以外に情報規制をしてるギルドの動きと

有事の際のギルドとの共闘が絶望的である現状は

ルルムスに伝えておくか)


クラウスは心配ないだろうがルルムスについては若干の不安が残る

俺と殴り合える程度に腕は立つが人数で来られると

成す術も無い筈だ……多分、おそらく、そうに違いない

と、山での容赦ない麻痺導術を放ったルルムスを思い出しながら考える

案外大丈夫かもしれないが

クラウスほどの戦闘力は無いからやっぱり心配だ

今夜宮殿に忍び込んだ際にクラウスにも会いに行って

ルルムスの護衛も頼んでおくか?


いや、それだとオーバーワークになってしまう


クラウスにはラピス嬢ちゃんの事を気にかけてやってくれと話をしてるからなぁ

ルルムスが真の聖女の捜索に乗り出したというのに、イプシロネは往生際悪く「力を持つ聖女が見つかるまでは自分がステラだ」と言って聖女の地位にしがみ付いている所為でいまだクラウスのタウィスの任は解かれぬまま、俺が宮殿から追い出される直前まで四六時中神殿の方へ呼び出されていたし。

呼び出し、といっても教養や勉学のためなので

積極的に学んでこいと勧めたのは俺だ

他のタウィス……アヴィオールやセイリオスの話だとステラがクラウスの事を随分と怖がるようになっており今では一切近づこうとしないって話も聞いたからその辺は安心している


(何をやらかしたのやら)


一応女の子なのだからトラウマとして残るような事を

やらかしてませんようにと祈るばかりだ

ルルムスを従わせるために子供のクラウスを人質に、という目論見もあったようだがそれについては俺たちの側で一切対策を取っていないにも関わらずクラウス自身が上手く立ち回っているお蔭で相手の思惑通りにはいってない


そしてプラムのラピス嬢ちゃんの宮中での扱いだが

嬢ちゃんがエヴィル弟に襲われた事件の翌日

俺たちが滞在していた部屋の隣に住まいを移す事になった

昨日の今日で対応早すぎない?とその時は思ったが

独房で俺が眠っていた時、クラウスがひとり起きて何かしていたから

ラピスの衣食住の改善に関する根回しをしていたのだろう

ついでにクラウスの部屋も神殿のタウィスの居室から俺たちと同室になったのだが

これについてステラは何も言ってこなかった

てっきり猛抗議がくると思ってたので拍子抜けだ

よっぽどクラウスに怖い思いをさせられたんだろうなぁ


というわけでラピス嬢ちゃんは翌日から

『クラウス”に”くっついて』一緒に勉強しており……いや、言い方を間違えたな

『クラウス”が”くっついて』一緒に勉強をしている

助けてやれと言った俺の指示を完璧に守る為らしい

一人行動の時は風呂とトイレぐらいだとクラウス自身が言っていた

そっちの方が安心だけど極端だよなぁ行動が。

俺がまだ宮殿で滞在していた数日の間はずっとニコイチ状態で行動していた

三食しっかり食事して重労働からも解放され少しずつだが健康を取り戻していたな


宮殿から追い出されて二日目

塒に戻った俺は久方ぶりの一人の時間を満喫していた

田崎の感覚もあるから一匹狼も苦ではないが

これまでずっとルルムスやクラウスと行動してたからやっぱりちょっと寂しい

部屋の扉を静かに閉めて先ずする事は家具の取り出し

一通り設置し終えた所で上着を椅子の背にかけると

眠り慣れたベッドに腰掛けて金品の分別を始める


これまでもずっと、空いた時間を見つけては

所持している盗品や不当に入手した金品の分別に充てていた

アホみたいに量があるのでまだまだ終わりが見えないが

今後の為には必ずやっておかなければならない事だ


といっても、大半がセインツヴァイト領での案件なので

分別できてもすぐに持ち主に返還できるような状況ではない

というか、返還するより先に持ち主の生存確認をしなければならない

返還対象の人たちが無事避難していてくれればいいのだが

その人たちの避難先を探すのもまた骨が折れそうなんだよな

でも仕方ないよな、それが俺の贖罪だ


ちなみに。

エスティール聖国でアシュランが悪事を働いた形跡はない

悪党で有名だったアシュランのゴシップも王都や公爵領が中心で

その他の領ではさほど知名度は高くなかったと記憶している


全世界に俺の人相書きがバラまかれたとしても

名前だけに気を付けておけば追いかけられることもないだろう


(一応昨夜の宿屋襲撃の一件をそれとなく噂で流しておくか)


金品の分別をしながら窓の外を見ると

そろそろ日が暮れようとしている時間帯だった

物を片付けると設置していた家具も全て収納して外出の支度を整える

さて先ずは酒場のはしごだ。最低でも五軒は回りたいな

宿でとある冒険者が惨殺死体で見つかった、という

噂を流しておけばそこそこに広がるだろう

例の学生連中の耳に入れば御の字だ


ついでに酒場での情報収集もして

その後でルルムスたちに会いに行けばいいだろう

宮殿の部屋が変わってなければいいんだけどな

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