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悪党の俺、覚醒します。  作者: ひつきねじ
51/145

51<聖なる星々の国~タウィスの事情、アヴィオール~

ルルムスの無敵教皇スマイルを前にしても

イケメンに囲まれ耐性を付けていたらしい女生徒は

俺への極刑を主張して引かなかった……が


クラウスの顔を見るなり態度を一変させた


「彼をタウィスに迎えるわ

それを聞き入れるのなら、そこの無礼な男の振る舞いも

一夜限りの謹慎で許してあげる」


クラウスめ、折角俺が背後に隠していたのに

ワザと女生徒の目の前に歩み出やがった

こんな連中と付き合ったら情操教育上よくない事が起こるに決まってる

それを解ってるくせにルルムスの奴、


「分かりました、公女の良きようになさって下さい」


「導師様はお話の分かる方なのね

お父様にはルルムス様に全面的に協力するようお願いしておきます」


「ありがとうございます」


シンキングタイムも設けずに了承しやがった

さっき茶化した仕返しかよ、と心の中で非難轟々していたら

耳元に顔を寄せてきたルルムスが囁く


「神殿区域の内偵をお願いしましょう

この国のどこかに居る『破邪』の能力を持つ聖女を探します

暫く滞在しますよ」


嬉しい報告ありがとよ、だがクラウスの教育状況が最悪なんだが?


「ふふっ!それじゃあ行きましょう、クラウス?」


クラウスの美貌に魅入られた女生徒がいそいそと歩み寄り

その手を取ろうとしたが見事に躱され頬を膨らませる

慕ってもいない男子を侍らせるほどの無神経ぶりだ、この程度でへこたれる女生徒ではない

すぐに時間はたっぷりあるのだと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべ

唯一己を慕っているカストルという盗人クソガキを傍らに呼ぶとその腕にぴったりと寄りかかりながらクラウスを見下し尊大に言い放つ


「自分の立場を弁えた方がいいわよクラウス

私の言葉一つでそこの男の生死が決まるのだから

貴方は今から私のタウィスなの、分かったら共に来なさい

ステラの慈悲に縋らせてあげるわ」


こういう子供の思考回路ってどうなってるんだろうな

元悪党なのに全く理解できねェ

ちら、と俺に振り向いたクラウスはそのまま

タウィスの最後尾から少し離れつつも大人しく……


付いて行くんかーい


なんだよ!ルルムスと無言の会話でもしてたのか!?

俺の心配そっちのけかよ!もういいよ!!


「いい大人がいじけないでくれますか」


「くそぅ……二人で勝手に談合しやがって」


「聞き捨てならない事を仰いますね

あの行動はクラウス個人の判断によるものです

むしろ反省すべきは貴方かと」


ルルムスにも考えがあるのは分かってるがこうなっては仕方がない

だが俺に反省すべき点だとォ!?なんだってんだそれは!と思うがそれよりも遠くなっていくクラウスの背中に向かって必死に念じておく


(嫌だと思った事からは全力で逃げろ、無視して構わん

攻撃してくる奴の相手は加減しろよ?殺しちゃ駄目だからな

誰かが理不尽な目に遭ってたら出来る限り守ってやれよ

あと俺の心配は無用だからな!例え処刑される事態になっても単独で逃げだせる自信滅茶苦茶あるから気にすんなむしろお前の方が心配で堪らん!)


うっかり目の前で両手を組んで神に祈るみたいなポーズを取ってしまった

ルルムスが痛々しい眼差しを俺に注いでいるが無視だ

クラウスの背中が見えなくなるまで祈り続け

見えなくなってやっとその場から立ち上がり勢いよくルルムスに向き直る


「で!?俺に反省すべき点があるとか言ったな!」


「クラウスは貴方の心配をしているのですよ」


「心配なんかする必要はない」


「そこが反省点ですよ、私だって心配してるんです

大切な友人を、一晩とはいえ牢に ブ チ 込 む のですから」


「……」


一部分だけ言葉崩しただけでなく声色まで変えるの止めよう、な?

心底困った表情で清らかな格好してるのにそんなん言われたら

別の意味で心臓に悪い


「ご理解頂けましたか?」


「お前の発言の所為で色々吹っ飛んだ」


「冷静になって頂けて何よりです」


「……ったく、まだ耄碌してねェっつの」


「心配もそうですが

自分なりに貴方の役に立ちたいと思ったのではありませんか?」


「人身供物みたいな扱いでなきゃすんなり許可出してたよ」


「クラウスなら貴方が許さない事には決して手を出しません

もう少し信用してあげましょう、それに

彼の意志もそれなりに尊重してあげないと……」


「あげないと?」


「貴方の弟妹みたいな性格になってしまうかもしれませんよ」


「……」


衝撃の余り絶句する

思い出したのはキチガイ染みた公爵邸の一部屋……

今俺が持っている魔導袋のひとつに収納されている

『早く燃やしたい部屋ランキング第一位』の部屋の持ち主である双子の弟妹だ

というか、え?それはつまり弟妹があんなキチガイになったのは

俺の所為だとか暗に言ってないか?言ってるよな?

数秒置いて震える息を吐き出した俺は眩暈を覚えつつルルムスに背を向ける


「ちょっくら連行されてくるわ……」


「一夜の謹慎、楽しんできて下さいね

良い夢を」


ルルムスめ、洒落にならん冗談……という事にしておきたい

どうせ形ばかりの投獄だ

付き添っていた衛兵の二人も酷く申し訳なさそうにしていた

宮殿には地下牢があるらしく道中の道順や仕掛けもしっかりと見て覚えておく


「申し訳ありません、当国のステラがお客様にご無礼を」

「お連れの方を守ろうとしただけなのに、よりにもよって

タウィスにされてしまうなんてなんとお詫びすればいいか」

「本当に牢に入る必要など無いのですよ?なんなら

先ほどのお部屋より質は劣りますが

私たち衛兵の部屋にでも上がっていかれますか?

独房の寝台よりはずっとマシな作りになっておりますので」


中々に魅力的な申し出だ

上手くいけば宮殿の地下見回りに同行して他にも色々と見て回れるかもしれない、こんなことなら一晩と言わず三日ほど謹慎貰っとくんだったなぁ~……

とは思ったが『心配しているのですよ』という

ルルムスの言葉を思い出して浮かれた思考を落ち着かせる


クラウスも、俺の事を心配したのだろうか

アイツが望んでステラに付いて行ったとルルムスは言っていたが

もしそれが俺の為だとしたらそういう事はしないように教えておかなければ


俺の為に何かをしてくれる存在なんて

今はまだ、まともに向き合える自信が持てない


本当の聖女の情報がどこに転がってるかも分からない状態だ

情報収集すると決めたなら二度手間にならないように

しっかりと見聞きしておかなければ


「お前らの寝床に邪魔してもいいか?

ここでしか聞けない面白ェ話をしてくれよ

俺の居た国の話も色々させてもらうぜ」


「喜んで!」

「他の奴らも集めないとな!あのステラに

『クソみたいな聖女』って言ってくれた時はスカっとしましたよ!」

「もっと言ってやってくれ!って思いましたね!自分は!」


ああそうか、道理で彼らも妙に俺に対して親し気だなと思った

使用人だけでなく衛兵たちも相当鬱憤溜まってるぞこれは。

その証拠に衛兵の一人が嬉々として酒を手配してる

今夜は彼らの間でステラへの不満暴露大会が開かれそうだ


そうか、部外者が多少ステラを罵ったぐらいで

宴会を開きたくなるほど普段から嫌な思いをしてるのか彼らは


案内されたのは、両サイドの壁際に等間隔で並べられたベッドの合間合間が衝立で仕切られており、中央には数十名が座れる長机と椅子のある大部屋

宮中の衛兵が寝起きする為の、牢屋へと続く地下通路に面した一区画

階層は既に地下だし、これなら確かに

どんちゃん騒ぎしても外に漏れることは無いだろう

長机の上にはカードやチェス盤、装具手入れ用の油や布が散乱している

衛兵専用の部屋らしい殺伐とした雰囲気だ


入室と同時に既に室内のいくつかのベッドで身繕いをしていた数名の衛兵のひとりから

「よっ!英雄!」などと称賛が飛んで来たので愛想笑いで返しておく

来賓部屋前での出来事はもう広まっているらしい、早いな。

夕食時まで適当な場所に腰を下ろして寛いでいてくれと言われたので

静かそうな奥の壁際手前の誰も使って無さそうなベッドへと足を向ける

隣りには物静かそうな若い兵士がベッドに座り黙々と装具の手入れをしていた

俺を連れて来てくれた衛兵二人はご機嫌な様子でどこかへ行ったので

隣りの寝台に腰掛け装具の手入れを続けている若い衛兵に声をかけてみる


「よォ、若いの」


「どうも」


「これから仕事か?」


「はい、貴方は新入りには見えませんが

どういった理由でここへ?」


「ただの客人だ、今夜一晩だけここで寝泊まりさせてもらう

夜、そこが空くなら貸してくんねーか?」


「構いませんよ、大部屋の布団は皆自由に使っているので

開いてる所で寝て下さい、それより

先ほどの質問の答えをお聞きしたいのですが」


「ん?だから客人だって」


「客人が何故ここで一晩寝泊まりするのかとお聞きしているんです」


「あー……それは、」


「なんだアヴィオール、さっき来たばかりだから知らねーのか

この兄さんがお前の従妹に一発かましてくれたんだよ!スカっとしたぜ!」

「イプシロネに?」

「おうともよ!でもその所為で兄さんの連れがタウィスにされちまってな

どうなるか心配だがもう一人のお連れさんが大層偉いお人らしくってよォ

なんとかなるかもしんねーって話なんだ、だから兄さんも心配する事ねーぞ!

あのステラにかまして一晩の独房謹慎で済んだのなんて初めてなんだからな!じゃ、お前の分の見回りも行ってくるから

その間このお兄さんの相手、よ ろ し く な っ」

「え?あの、先輩!」


青年が手を伸ばし呼び止めるが

男は言うだけ言ってこれまたさっきの衛兵と同じく上機嫌に部屋を出て行ってしまった

どうやら見回り時間になったらしく他の衛兵もぞろぞろと出て行き

最後の一人が「英雄の接待頼んだぜ!アヴィオール!」と言って扉を閉めた


「……」


暫しの沈黙が室内を包む


「悪いな

話しかけちまったばっかりに」


これじゃあ職場の先輩が後輩に雑務を押し付けたようなモンだ

申し訳なく思っていれば目の前に座っていた青年は

装具を持っていた手を力なく下ろし深くため息を吐く


「いいえ、先輩たちはどうせ面白がってるだけですから気にしないで下さい

今代のステラ……イプシロネは俺の従妹なので」


「そうなのか?家系が同じだからお前も嫌われてるとか?」


俺の問いに青年は苦笑いを浮かべて俺を見る


「普通なら聞きにくい事を平気で聞いてくるんですね」


「言いたくないなら無理には聞かねェよ」


「いいえ、部外者だからこそこうして無遠慮に踏み込んで

もらえるんですから、今の俺には少し有難いです

今代ステラのイプシロネ・ファイフと

俺、アヴィオール・セイフは本家と分家の関係ですけど

ほぼ他人と言ってもいい間柄なんですよ

だから先輩方からは嫌われてるわけでも

いじめを受けている訳でもありません、よくしてもらってます」


「それなのに面白がられてんのか?」


「俺もタウィスに任命されているので」


うわ、マジか

こんなトコにも居たのかよタウィス

何人旦那作ってんだ、あのステラ


「合点がいった、それで無駄に顔が良いんだな」


「お褒めの言葉と受け取っておきます」


アヴィオール・セイフ

黒髪青目の長身美形、当然だが四肢は鍛え上げられており体格もいい

学生には見えないから成人か?礼儀正しく実直な印象を受ける

だが国の重鎮を親に持つステラと違い、この……なんというか

持ち物からもどことなく漂う清貧ぶり。金持ちという”におい”がしない


「イプシロネが見目を基準にタウィスを選んでいるのは事実ですよ

俺の事も伴侶の一人と言うよりは慈善事業みたいな扱いと言うか」


「慈善事業?」


「タウィスになると様々な面で待遇が良くなるんです

主に給与面ですね、うちは……セイフ家は貧乏なので

不本意ではありますがそういう意味では助かってます

家族に仕送りしているのでいつもギリギリの生活ですけどね」


それで本家と分家でも他人、でもって慈善事業扱いってことか

ということは今のステラがステラでなくなった場合はタウィスの権限も無くなってアヴィオールは金銭面で苦労するってことだな

苦笑いしたアヴィオールはそのままの表情で俺を見る


「お連れの方がタウィスにされてしまったとか

自分も無理矢理引き入れられてしまったクチです

籍を外したりなど直接的な手伝いは出来ませんが

タウィスとしての立場で、ある程度お連れの方をお守りできる場合は

微力ながら力にならせていただきますね

こう見えて俺、兵士(セイン:グラード)の称号があるので」


「騎士職の序列三位か、相当腕が立つんだな」


「これぐらいしか取り柄がないので」


「十分すげェ事だろ

俺なんか身体強化をちょこっと使える程度だぞ?

武器に導力流すなんて出来た事ねェよ」


「ステラに一発かませるだけの度胸を

持っていらっしゃるというだけで十分羨ましいです」


「なぁ、他のタウィスの事とかプラムの事とか

知ってたら教えてくれないか、差しさわりのない所だけでいいからさ

タウィスにされた連れが心配なんだ

保護者として周囲の環境を把握しておきたい」


「そういう事でしたら俺が知っている限りお教えします

先ず、現時点でのタウィスの人数ですが……」


その後にアヴィオールから聞いた情報は『濃い』の一語に尽きた

名前とプロフィールだけでもういっぱいいっぱいだ

相関図はやはり思った通り、ドロッドロのグッチャグチャ。

三角関係とか三つ巴とか横恋慕とかいう可愛い話ではない


(ルルムスが聞いたら絶対に頭抱えるだろうな、これ)


いや、先ほどタウィスたちとも顔を合わせたから

その時に全部『視た』のかもしれない

頭痛そうな顔してたもんなぁ

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