20:泉ルート
花に向かって、ドボン。
銀色の妖精の泉を通っていく。
これって触れてしまったら「変質」の危険性があるらしい。
けれど妖精女王──タウ姫たちは移動手段にも使えている。影響を受けないのは妖精族だから。そして妖精の魔力で体全体を覆っているからなんだって。
それならね?
私たちだって魔力で全身を覆ったら、泉の銀色が肌に触れさえしなければ、このままの状態で高速移動できるだろうって。
やったろうじゃんって思ったわけですよ。
──春龍様の叫び声が聞こえたから。
もう超特急で行くしかないなあって。
この妖精の泉を抜けることができたなら、冬姫としても新たな技術取得になりそうじゃん?
めっっっっちゃ怖いけれど、私にはフェンリルがいてくれるから。
手を繋いで「大丈夫」って声をかけてくれて、励ましてくれる。うん、感覚がつかめるよ!
問題はハオラウ王子の方だよねえ。超怖いと思うよ? いくら身体強化に慣れているとはいえ。
導くのがさぁ、タウ姫だもん。
「うふふふ。もしも変質してしまったら貴方様が妖精王になってくださるかしら〜」
「断固拒否だ!」
そうなんだ。
妖精王になってしがらみから離れて暮らすよりも、国と繋がっている責任を取っている。
えらいなあ、と思う。幸いにしてなんだか前よりも元気で、苦痛のまま無理やり答えているわけでもなさそう。
みんなこうやって大人になっていくんだねぇ。
なんだかしみじみしてしまったぞ。
「!!」
一面の白銀の視界にかわった。
さっきまではちょっと薄暗くて、土や葉っぱが浮かんでいた。それらは妖精の泉に溶けるようにして無くなり、よく目を凝らしてみると、妖精未満の半透明のクリオネみたいな生き物になって、どこかにたゆたっていった。あれらは自然を豊かにするものだと、冬姫の感覚が正解を出す。
この白銀世界はまるで雪原みたいで懐かしいなぁ。
ふんわりと光り、体を包んだ魔力の表面を撫でていく感触は、春の小川のせせらぎのようになめらかだ。
「あちらなのよぉ!」
タウ姫がハオラウ王子を引っ張り上げる。
両足を揃えて泳ぐように揺らす独特のうごき。それは龍の尾のようにも見えた。
ハオラウ王子も同じようにしている。
──なるほど、ああすると足の表面積が少し減るから泉に触れにくくなるってわけだ。
私も同じようにする。
感覚でゴー!
「エルの尻尾が尾びれのように動いてる。ふふ」
ちょ、フェンリル笑っちゃって大丈夫?
しかしさすがだ、意識をしっかりと保っていたから泉による変質の危険はなさそうだ。
というか私のメンタルを保つのが大変〜!
よしあとちょっと。
「ぷはあっ!」
「あらぁ冬姫様。息を止めていらしたの?」
「集中していたら一時的に呼吸を忘れてたみたいです……げっほごほっ」
「妖精の泉にもお恵みをくださったのねぇ」
「へ?」
なんですと?
「エル。尻尾と髪の毛が、わずかに溶けたようだ。しかしそれくらいなら、くたびれていた妖精の泉を全快するくらいでとどまっている」
「とどまっている感ないよ?? ねえ? それってやっちゃってよかったこと?」
「よかったわぁ! ありがとう!」
「だそうだ。良いことをしたな」
うーーん良いことをシタナー。
多分まじでやばかったらフェンリルが私の表面も魔力で覆ってくれていただろうし、ま、大丈夫なのかも。
青い顔をしているのはハオラウ王子だ。想定内すぎる。
「そんなこともありますよ」
「ソンナコトモアリマスヨ……ソンナコトモアリマスヨ……ヨシ」
病んでない?
変わろうとして頑張ってるのはわかる。
ほら、タウ姫、ツンツンとちょっかいかけないの。
シャーー!ってハオラウ王子が表情で威嚇してんじゃん。仲深まったみたいだね。まあいいや。
タウ姫がふあーーーーっと深呼吸している。
けれど私たちはこの場所で、身体強化を解くこともできなさそうだ。
ジェニ・メロたちを置いてきてよかった……
ここってさ……
毒毒毒毒!!!! 毒林じゃん〜〜〜!
RPGトラップかと思うようなドス紫の沼。
触れたらやばそうなねちねちした汁をにじませるトゲ植物。
花々はやけに鮮やかなビビットカラーで、それ警戒を促す色なんじゃないですか?
虫が、でかい。鳥も、でかい。そしておかしな色味だ……。
ハネムーンがしたい。
私は切実に思った。
「フェンリル」
「ああ、エル」
「「──春よ、来い!」」
読んでくださってありがとうございました!
予定について、
明日おやすみ(書き溜め)
金曜レアクラ
にさせてください!
園行事があるんですよね。家庭と仕事両立させつつ、趣味のweb小説のほうもつづけていきたいです。
これからもぜひぜひ遊びにきてください( *´꒳`*)੭⁾⁾
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