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6 それが今夜のディナーだ

 例のごとく、部屋をぬけだした俺は、隠密ハイハイで父上の書斎に向かう。


そこには父上と、伯爵、それと心配そうに見守っている母上がいた。


部屋の床には花瓶の割れた残骸があり水浸しだ。


俺は皆にバレないようにドアの隙間からこっそりのぞく。



「お前がやったに決まっている。昨日のエリーナの件で私に仕返しでもしたつもりか!?」


まさか自分の名前がでるとは思わなかったのか、母上は驚いた様子で父上の顔を見る。



「・・・昨日伯爵が来た時に、エリーナを引き渡せば金を貸すと言われたんだ。愛人にしたいらしい。もちろん断ったがな」



「・・・・・え」



母上がケダモノでも見るような顔で伯爵を睨む。



ぷぷぷ、お前嫌われたな。


母上はなっ、俺がいれば十分なんだよっ


俺も母上がいれば十分なんだよっ


つまりお前の入る隙間はないってわけ。分かるぅ?


あっ、もちろん父上も尊敬しているが、俺は断然母上派だ。断じておっぱいで選んでない。



「うるさいっ、黙れ! いまはそんなことどうでもいい、どうやったのかは知らんがさっさとあのドラゴンを屋敷から追い出せ!」



「そういわれても、してないので、私にはどうしようもありません」



「まだとぼけるのか! お前が差し向けたドラゴンは私の屋敷を粉砕したんだぞ!? どれだけの損失だと思っている。コレクションの美術品だけでお前の人生が何度でも買える額だ」



「・・・・あの、本当にしらないのですが?」


「くそがぁぁぁぁ!!!」



 太った伯爵はまた近くにあったものを殴りつけて、ぜえぜえと息を切らしている。


ビッショリ汗をかいて、自慢のカールした前髪がおでこにくっついて気持ち悪い。


醜い豚にしかみないわ。



「あのドラゴンのせいで、私の領地はパニックだっ、住民も逃げ出してゴーストタウンのようになっているんだぞ!?」



「なら、伯爵が自分で言っていた、S級冒険者を雇えばいいじゃないですか」



「馬鹿をいうなっ! そんな貴重な戦力が都合よく待機しているものか、魔王討伐の遠征にでているに決まっているだろ!?」



「なっ!? では昨日は私をだましていたのですか!?」



父上が怒りに震えて、伯爵に飛びかかりそうだったが、母上が腕を掴んでとめる。



「ふん、田舎貴族が、だまされる方が悪い」



「帰れっ!!二度とくるなっ」


「言われなくてもそのつもりだ」



そういって伯爵はあっさりと引き下がり部屋を退出する。


俺もお馴染みのツボへダイブした。


あの意地汚いブタが、そう易々と諦めるものか。絶対になにか仕掛けてくるな。どうせ、せこい小物は、夜に夜襲でもしてくると相場できまっている。


なら直接引導を引き渡してくれるわ!!!


俺は夜に備えて、急いでベッドに戻り眠るのだった・・・




■■■■■




――――夜


町の外れにある先端が尖った大きな岩の上で一人ただずんでいた。


眠くはない。なぜなら既にカフェインを注入してきた。


苦くて飲むのに苦労したが、大切な人を守るためとなら俺はいつだって修羅となろうぞ。



目をつむり精神を研ぎ澄ませていく。



静だ・・・耳に入ってくるのは虫や夜鳥の鳴き声と、カチャ、カチャ擦れ合う鎧の音だけ。




ゆっくりと目をあけて、眼下に集まっている不届き者を見おろす。




百人ほどか。


それは伯爵が集めた、盗賊風の男たち。

おそらく、兵士の装備をワザと汚くして変装させている。


身のこなしと、統一のとれた全体の動きから訓練された兵士なのは丸わかりだ。


おおかた、我が父カイリーがドラゴンを差し向けたとか言って動かしているのだろう。




そいつらは、町に向かって列になって進行していた。


一番後方には馬に乗っているデブの男がいる。


顔は布で隠しているが、その腹で伯爵だとすぐに判断できる。


ふっ、お粗末な変装だぜ、俺の足元にも及ばない。



俺はいま、漆黒のタオルケットで全身を隠し、顔を隠すように目から下にはよだれ掛けを巻いている。


さらに父上の汗拭きタオルを帽子かわりに被り、完全に誰かわからなくなっている。



俺は月光に照らされながら、ぱさぁと漆黒のマントを翻らせて、盗賊共の前に躍り出た。




「だっ、だれだ貴様、小人かっ!?」


「全員構えろ、妙な奴があらわれたぞ!」



(騒ぐな、お前たちの命はすでに俺の手中にあると知れ)


昨日会得したテレパシーで全員に話かける。



「なっなんだ頭の中に声がぁぁ」



はじめての経験に全員がうろたえて、騒がしくなる。だが、有象無象がどれだけ群がろうと興味はない。


伯爵の位置を確認する。


すると、後方にいた奴は、馬から降りて物資を運ぶ馬車に逃げ隠れたようだった。



ふん、所詮は醜いブタか。


すぐに終わらせてやろうと、包丁を上段に構える。


だが、正面から男が一人、槍を持って突撃して来たので、俺はすれ違い様に剣をふりぬいた。


男は俺が居た場所を、通り過ぎたあとも止まらずに走り続ける。


盗賊たちがどうしたんだと、その男に呼びかけるがもう遅い。


ちょうど十歩目を踏み出した瞬間、男は縦に真っ二つに割れて絶命した。



「な、なにが起こっているっ!?? いつ切られたのだ!」


(言っただろ、お前らの命は俺が握っていると)



すこし魔力を解放して威圧してやると、全員ビビって怖気づいた。



(馬車までの道を開けろ、邪魔だ)


そう伝えると、すぐさま人垣が左右に割れて、伯爵の隠れる馬車までの道ができた。


俺は馬車をみつめたまま、近くにいる男と会話する。



(お前は、猛烈に腹が減っている時に、目の前に前菜とメインが並んでたらどちらを選ぶ?)



「・・・な、なんの話だ?」



(俺はな、もし目の前に御馳走があったら、飛び起きてむしゃぶりつく主義なんだ。いつもそうしている)



「そ、そうか?」



(つまり俺が言いたいことはだ、本当は母上を侮辱された瞬間にこうしてやりたかったんだが、諸事情で大っぴらには手を下せなかった。昨日からずっとお預けさせられている気分だったんだ)




また包丁を上段に構える。



(だからお前等みたいな前菜はいらねぇ、一口目からメインディッシュに噛みついてやるぜ!!)


包丁を振り、伯爵がいる馬車を分解する。


中には怯えた表情で震えるブタが一人。



俺はブタにテレパシーをとばしてやる。


(喜べ伯爵、貴様には今宵、この最強の俺が手ずからつくったディナーを食わせてやるっ)


「ひ、ひィ!!」


(すこしお粗末だが、醜いブタのポークビッツだ、とくと味わえっ!)


斬撃を飛ばすと、伯爵のズボンが赤く染まり、股間を両手で抑えたまま気絶して倒れてしまった。



唖然と立ち尽くす兵士達・・・・・



これでもう奴は、母上の乳を求めようとは、しないだろう。

今の一撃には濃厚な魔力ものせてある。よほど凄腕の回復術師でなければ治せない。


いつか、奴が反省していれば俺がなおしてやらんこともない。


一人切り殺してしまったが、武器を向けてきた以上やられても文句はいわせない。


俺の存在は純粋な人間ではないからな。見知らぬ盗賊風情が死んだ所で心は痛まない。


(さあ、お前達もああなりたくなかったらさっさと帰れ、俺も最近外出がおおくてホームシックなんだ)



そういうと、みんなビビって急いで撤退していった。


全員が見えなくなるまで見送った俺は、これでまた明日から平和なスローライフがおくれるぜ、とルンルン気分で家に帰るのだった。



少しでよかったとおもえたらブクマ感想をお願いします!!


下の星が、主人公のミルク代になります、どうかお願いします( ゜Д゜)

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