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コーザのはからい

 貴族パーティーが終わったあと、父上の用事がすむまで数日王都ですごして、俺達は帰郷した。



帰る前にどうしてもリーシェンと話をしたかったから、家の場所を調べて会いに行ったけど、全然とりあってくれなかった。




リーシェンは、変態、野蛮と罵詈雑言をはくばかりで会話が整理しなかった。



お別れ際だけは、また会いにきてもいいかい? ときくと、顔を赤らめてしおらしく頷いていたので、絶交は免れたらしい。


こうして、俺ははじめての男友達を失わずにすんだ。


リーシェンと別れてからは、定期的に文通をしていて関係はいたって良好だ。




 人が沢山いて、賑わいのある王都の旅は楽しかったが、やはり実家に勝るものはない。



帰ってきてからというもの、毎日フブキちゃんのお世話に、ルシアの稽古と大忙しだ。


フブキちゃんはこないだ五歳の誕生日を迎えておおはしゃぎだ。


俺がお土産で買ってきた髪飾りは気に入ってくれたみたいで、毎日つけている。


これも、あのずっこけ三人組のおかげだ。


ちょっと性格はあれだったけど、金貨二枚もくれたから、皆にお土産を買うことが出来た。素晴らしいよ、あいつらには感謝しなくてはな。




■■■■■■■



                    

「おにぃぃちゃーん!」



机で、リーシェンへの手紙を書いていると、お昼寝を終えたフブキちゃんが抱きついてきた。



「フブキちゃん、どうしたの?」



脇の下を持ち上げて膝の上にのせてあげる。

母上と同じ綺麗な金色の髪の毛を撫でると、仔猫のように嬉しうにする。



「おとうさんが呼んでるよ」



「父上が? 分かった、一緒にいこうか」



「肩車して!」



「しょーがないなぁ」



フブキちゃんを高い高いして、肩にのせてあげると、キャハハと嬉しそうにする。



あー、俺はなんて幸せ者なのだろう。



優しい家族に囲まれて、幼馴染と遊び、遠くに住むマブダチと文通をする。



これだよ、これ。


俺が求めていた生活ってやつはさ。


時代はスローライフ。


間違っても、ドラゴンと戦ったり、ポークビッツ切り落としたり、サイコパス殺人鬼と殺し合いをすることではない。



実家で平和にいきるのが、俺のただひとつの望みだね。





 フブキちゃんをあやかしながら、父上の書斎に入ると、無駄に渋い雰囲気を醸し出して、神妙な面持ちで父上が待ち受けていた。



「きたか、ルークよ」



「はい、俺に話があるとフブキちゃんから聞いたのですが?」




「フブキちゃんと言ったよ!」



 フブキちゃんが俺から降りて、父上に駆け寄ると、おーえらいでちゅねフブキたん、と父上はさっきまでの渋みをかなぐり捨てて、赤ちゃん語を扱うクレイジーなおっさんに早変わりした。




ごほん、と俺は咳払いすると、父上が慌てて、もう一度渋い雰囲気をつくろうとする。


いつもより低い声をだして、テーブルに両肘をつき、顔の前で手を組む。


「ルークよ、良い話と悪い話どちらから聞きたい?」


流石に、十年も一緒いたら、実は父上がなんちゃって系渋いおじさんなのは理解している。


可哀想なので、優しい俺は、あえて突っ込まずに空気をあわせてやる。


腰の後ろ辺りで腕を組み、ゆっくりと窓辺まで歩いて、青空を見上げながら言った。



「良きことも、悪きことも、己の歩く道しだいでどうとでも転ぶ。大切なのはどう生きるか、違いますか父上?」



質問に質問で返す。


父上から学んだ上級テクニックだ。


正直、自分でも何を言ってるのか分からなかったけど、父上は満足げに頷いた。



どうやら、どこか特殊なツボに突き刺さったらしい。



「そのとおりだ、よく言ったルーク。ではお前のいうように悪い知らせから話そう」



「ええ」



俺の言った言葉のどこにそんな意味があったのかは分からないが、大切なのは訳知った風な顔で頷くことだ。



「お前が冒険者活動で貯めていたお金がなくなった。明日から我が家の食卓は元に戻る」



「なっ、なんだって!?」


本当に一大事じゃないか!


呑気にいぶし銀の空気感で遊んでる場合じゃない。


俺が慌てて、あたふたしていると、フブキちゃんが不思議そうに見上げてくる。



「おにぃちゃん、どうしたの?」



「フブキちゃん・・・・・」



俺はハッとする。


そうだ、あの頃と違い、我が家には家族が増えた。



三人でも硬いパンと痩せた魚で生活してたのに、フブキちゃんまで加われば、魚すらでないかもしれない。



それは絶対にだめだ。


最悪、俺と父上はその辺の雑草でも齧りついていればいい。


けど、成長期のフブキちゃんには栄養のあるものを沢山与えなくてはいけないし、優しい母上が硬いパンを食べているところを黙って見るなんて出来ない。



こうしてはいられないッ



俺は父上に頭を下げる。



「父上、不肖ながらこのルーク、お願いしたき義があります」



「なんだ、言ってみよ」



「我が手にふたたび、剣を握る許可を」




もう一度、ルシアとパーティーを再結成してモンスター狩りをしなくては、我が家に未来はない。


愛する家族のためなら、このルーク、不死鳥のように何度でも蘇り、剣をとろう。




「ダメだ。子供には危険だ」




「俺もルシアもモンスター程度に遅れはとりません」





「・・・・・ふむ、それもそうか。よかろう、お前の強さは私が一番よく知っている。ルシアちゃんにボコボコにされて思い知らされたからな」



「・・・・・・・」




「お前が実力を隠して、訓練のときはわざと負けて『ふぇぇ、強すぎるよ父上、降参だぁ』と言っていたのは忘れもしない」




ま、まだそんな昔のこと根に持っていたのか。



あれは本当に悪かったと思っている。


けど、父上に喜んでもらいたくてやっていたのだから、もう許して欲しい。



「だが私の器は大きい、可愛い息子のイタズラだと思い水に流そう」



いぶし銀な父上は、俺を見下ろしてそう言った。


俺もそんな父上に言い返したかった。


どれだけ大きくも、砂の器ではなんの意味もないです、と。



───が、俺はもう十歳。


一人の男として、背負うものがある。


口にださず、心に秘めておいた方いいことがあることは知っている。

 


「父上、感謝します」



「かまわん」



「では、早速ギルドに行ってきます!」



俺は颯爽と振り返り部屋を出ていこうとすると、父上が呼び止めた。



「こら、ルーク。まだ良い話を聞いてないだろ」




「ああ、そうでした。気持ちが前にいきすぎて忘れてました」



「突っ走ろうとするクセは幼い頃から変わらんな」



「お恥ずかしいばかりで。して、良い話とは?」



「うむ、実はエルロンド公爵家のコーザ様から手紙がきた」



コーザ?


ああ、あのずっこけ三人組のリーダーか。


俺に知らせとはなんだろうか。



「コーザ様にかわり私が伝えよう」



父上は机の上にある手紙を拾い、読み上げる。



「ごほん、『我がライバル、ルーク・ベルモント。貧乏貴族のお前のために父にお願いして、お前の入学金はこちらで用意してやった。必ずや、俺がお前を学園で叩きつぶしてやる。覚悟しておけ』だそうだ。良い友達を持ったな。三年後、お前は一人で王都行きだ。そこでよく学び、成長しくるのだぞ」







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― 新着の感想 ―
[良い点] 施し系ライバルとはルーク・ベルモントくん良いキャラしてますね。 話が進む毎に作品の味わいが増してる気がして面白くなってきました。 今後も楽しみにしています!
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