ずっこけ三人組
リーシェンのやつ、どこにいったんだ。
パーティー会場の中を探してもいなかった。
はじめて出来た男友達だったから、もう少し喋りたかったのに、残念だ。
でも、同じ貴族で同い年だし、その内にまた会えるだろう。
そのときに、思う存分語りあえばいい。
みんなの分のお菓子も確保したし、俺は俺で好きな料理を食べて適当に時間をつぶすとするか。
バイキング形式でたくさん並ぶ料理を眺める。
どれも美味しそうだ。
そこで、俺は自分のお皿を持ってないことに気がついた。
まずはお皿の確保をしないと、と思い、とりにいこうとすると、進行方向を塞ぐように、嫌な顔で、ニヤニヤと笑う三人の少年が立ちはだかった。
赤い髪の子が言う。
「おい、お前あの貧乏騎士の息子だろ」
彼が指差した先には、薄くなった頭をへこへこと、他の貴族にさげている父上がいた。
「・・・・・・いや、知らない人だ」
彼等を無視して、お皿をとりにいこうとすると、赤い髪の子に肩を捕まれてしまった。
「嘘をつくな、ルーク・ベルモント。お前のことは知っているぞ」
「そんなやつは知らない。俺の名は・・・・リーシェン。リーシェン・ストラディバリウス、ただの一般人だ」
「そんな仰々しい名前の一般人がいてたまるか」
赤い髪の子が眉間にシワを寄せて睨んでくる。
後ろの二人が俺を見て小声で話す。
「こいつ、ふざけてるよね?」
「ああ、馬鹿にしてる」
「じゃ、俺はお腹へったんで、これで失礼するよ」
そういってまた抜けだそうとしたが、赤い髪の子がさっきよりも強い力で俺の肩をつかんだまま、顔を赤くして言った。
「いい加減にしろッ、ルーク・ベルモント!」
「いや、人違いなんで邪魔しな──」
──邪魔しないでもらえるか?
と、言おうとしたら赤い髪の子がパチンと親指で金貨を弾き、俺に投げてきた。
「自分を貧乏底辺貴族だと認めるならその金貨をやろう」
「・・・・人違いだから、こんなの受け取れないよ」
と、俺は金貨をポケットにしまいながら言った。
後ろの二人がまたコソコソ会話する。
「おい、あいつ言ってることと、やってること無茶苦茶だぞ」
「完全に貧乏人じゃねーか」
「おい、本当のことを言うならこれをやろう」
赤い髪の子が金貨をさらに一枚、指先で摘まんでさしだしてきた。
「そうだ、あれは俺の父上だ」
少年から金貨を奪いポケットにしまう。
明らかにトラブルの匂いがしたので、スルーしたかったけど、家庭の事情はいつまでもつきまとうものだ。
「ふざけやがって、早くそう言え」
「忘れてたんだ」
「白々しいやつめ。だが、認めたならまぁいい。ルーク・ベルモント、命令だ俺の靴舐めろ」
「はい?」
うん?
ちょっと、俺には文脈が分からない。
なんで、このクソガキの靴を、俺が舐めなければいけないのだろうか。
「俺、べつに靴を舐める趣味はないから、遠慮しとくよ」
赤い髪の子を無視してお皿をとりにいこうとすると、残りの二人、青髪の子と、茶髪の子が邪魔をしてきた。
「騎士爵の分際で、コーザ様の命令を無視するな。お前と違いコーザ様は、公爵家の跡継ぎだぞ!」
青髪の子がそういって、わざわざ靴を舐めろと言った子供の自己紹介をしてくれる。
「だからどうした? そんなに舐めたければお前が舐めろよ」
「き、貴様ぁ!」
ちょっと、おちょくってやると、青髪の子が叫んで殴りかかってきたので、ひょいっと体をひねり避けてやる。
ステップを踏むまでもない。
歳のわりに、ずいぶん鋭いパンチだったが、それだけだ。
相手にもならない。
パンチをスカしたせいで、そいつはバランスを崩して転んでしまった。
それを見ていた茶髪の子も素早く動いて蹴りをいれてくる。
どうやら二人ともそこそこ訓練をしているらしい。
俺は半歩下がって余裕でかわす。
急に乱闘がはじまりそうな空気になると、コーザといわれていた男の子が声をあげた。
「やめろ、ズク、ミーゴ。騒ぎは起こすな」
「は、はい、失礼しました」
「悪かったよ、コーザ」
二人がジークに謝罪をする。
・・・・・俺は一体なにを見せられているのだ?
料理を食べようとしていたら、ずっこけ三人組に絡まれてしまったぞ。
お腹へっているんだ。早くしないと美味しい料理からなくなるかもしれないだろっ。
イライラしていると、コーザがまた話しかけてきた。
「下級貴族の癖にずいぶん態度がデガイじゃないかルーク。お前のことは知っているぞ、史上最年少でBランク冒険者になったらしいな」
「へぇー、よく知ってるね」
「今回の無礼は見逃してやる。そもそも、挨拶がてら、どんな奴か見るつもりだったが、お前が余りにもふざけたことをいうので熱くなってしまった」
よく言うよ。
最初から君たちは悪い顔してましたよ?
バレバレだから。
「いいか、ルーク・ベルモント、Bランク冒険者なのはお前だけじゃない。俺達三人も同じランクだ。そして貴族としての格は遥かに上だ。三年後の学園入学主席代表は俺がもらう。それまでせいぜい俺のライバルとして努力することだな」
それだけ言い残し、やっと彼等は立ち去ちろうとした・・・・・・
──その時、俺は悩んだ
真実を彼等に言うべきか、言わずべきか。
だが、あの態度。
勝手にライバル認定までしてきたし
やはり、ここは言うべきなのだろう。
俺は三人の背中に向かって大きな声で言った。
「あの、うち貧乏だから学園に通う予定ないんだけど」
彼等は信じられないようなものを見る目で、俺を見返すのだった。
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