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貴族のパーティー

 お城の中にある広い会場には、大勢の貴族の親子がいて、賑わいをみせていた。



 一番最初に王様からの挨拶があったけど、適当に聞き流してたからあまり覚えてない。


魔王がどうとか、貴族として誇りをとか言ってたけど、俺にはあまり興味がない話だった。



なので適当にうんうん頷いて、さも聞いておりますよ、という、雰囲気を無限にかもしだしていたら、いつの間にか終わってた。



堅苦しい儀式が終わると、こんどは会場に沢山の料理が運びこまれて、立食パーティーが始まる。


大人は、大人同士で話し合いをしているので、俺は父上から離れて自由行動をすることにした。



そして、見つけたりは、今日一番のお目当ての、お皿に並んでいる大量のお菓子。


ひとつ、摘まんでみると砂糖の甘さが口いっぱいにひろがる。


ふふふ、貧乏な我が家では甘味は貴重な品。


これらを持ち帰ったら、母上も、フブキちゃんも、あとついでにルシアも喜ぶことだろう。



俺は懐から、白い袋をとりだす。



周囲を確認して、素早くひとつクッキーをとり、袋にしまう。



すぐにまた周囲を見るが、誰も気がついている様子はなかった。



ふっ、完璧だ。



もし、貴族のパーティーで、貧乏臭く、こんなことしてるのが、バレたら大騒ぎになる。



だが、大人達は話に夢中だし、子供ごときでは、俺の高速ムーブに目がおいつけないって戦法さ。



かわいい家族と友人の喜ぶ笑顔のためなら、なんだってやってやる。



この最強たる俺の前に、警備もつけないで無防備にお菓子を並べている奴が悪い。


遠慮なく頂くとしよう。



俺は素早く、クッキー、パンケーキ、マカロンとたて続けに袋に納めていく。



なるべく日持ちしそうなのを選ぶことが重要だ。


もしフブキちゃんが食べて、ぽんぽんを壊したら大変だからな。



その後もステータスゴリ押しでシュッババババっと、袋にお菓子をつめていると、後ろから聞き覚えのある声がかかった。



「なんでそんなにお菓子を集めているんだい、マブダチ?」


「なっ!」



ふりかえると、市場で出会った、俺のマブダチがいた。



「リーシェン!?」




「うふふ、やぁ、ルーク、言っただろ? またすぐ会えるってね」




「リーシェンも貴族だったのかっ!」



うんと頷いてリーシェンはイタズラが成功した幼子のように笑った。




言われてみれば、身なりも整っているし、髪もサラサラで、貴族らしい雰囲気を漂わせている。


てっきり、ませた王都のシティーボーイだとおもっていたが、まさかこんなところで再開するとはな。



感動の再開を果たしたマブダチとシェイクハンドを交わす。




「それにしても、よく俺がお菓子をとっているのが分かったな。かなり高速で動いていたのに」



「見くびってもらっては困るよ。こう見えても僕は有名な戦士の家系だからね。鍛えられえるんだ」




「へー、そうだったのか」




「ルークこそ、素晴らしい動きだったよ」




まぁ、最強だからな。


このくらい朝飯前まえさ。


無限一刀流の使い手に不可能ないのだよ。



「でもなんでお菓子を?」



リーシェンが首をかしげて不思議に聞いてきた。


理由か、簡単に聞いてくれるぜ。


それは我が家のとてもシリアスな事情に核心ついている質問だ。


赤の他人にはとても言えたもんじゃない──が、リーシェンはマブダチ。


構わないか。



俺が説明してあげると、リーシェンは面白い反応をみせた。


俺の手から袋を奪い、自信満々に挑発するように言った。



「なら、僕とルーク、どちらが多く制限時間内に集められるか勝負だ」



「へぇー、いいのかい? 偉大な戦士様の家系が、底辺貴族の俺に負けることになるよ?」



「まぁ、必ず勝ってみせるから問題ないね」





面白い、この俺に本気で勝負を挑む奴なんて、久しぶりだ。


軽く相手をしてやるぜ。




「なら制限時間は五分だ」



「よし、じゃいくよ? よーいスタート!」




合図とともに、俺達は散開する。



大人達の目を掻い潜り、目にうつる、日持ちしそうなお菓子を不自然にならない程度に素早く袋にしまう。


俺達はそれを永遠に繰り返した





──五分後



俺が持つ袋には、お菓子が七割ほど詰められていた。


そして、リーシェンの袋には・・・・・・



「ルーク、僕の勝ちだ、良い勝負をだったよ」



閉じられないくらいに、パンパンに膨れあがったお菓子の袋。




「やるな、リーシェン。まさかここまでやるとは」



「ふふん、僕を甘く見たのが運の尽きさ。まぁルークもそこそこやるみたいだけど──」




勝ち誇るリーシェンの顔を見ながら俺は、敵わないなぁー、さすがだなぁー、とわざとらしく呟いて、ゆっくりと懐に手を伸ばす。




そして、近くのテーブルに、懐からだしたものを置いた。



「なっ、ルークこれはどういうことだいっ!?」



テーブルに置いた物、それはパンパンに詰まったお菓子の袋だ。




「君は一袋詰めたうえに、二袋目までやっていたと言うのか!」



信じられないっと言いたげな目をして、驚いている。


しかし・・・・・・・ちーっちっち、甘いぜ、甘すぎるぜリーシェン。


お前はまるで砂糖をいれすぎたマカロンのようだ。


赤子の頃よりブラックコーヒーを嗜んでいた俺に比べたら、足元にも及ばない。


そのことを教えてやろう。




俺はさらにもうひとつ、袋をテーブルに置いた。




「さ、三袋だって!? あんな短時間でうそだぁ!」





さらに、どーんっ!



「よ、よん」




さらに、どーんっ!



「ごぉ」



そしてさいごに・・・・




どーんっ、どーんっ、どーんっ!





「・・・・くっ、完敗だよルーク。まさか君と僕の間にここまでの差があるなんて」



「ふっ、お前はまだ原石だ。諦めずに努力すれば、まだまだ美しく輝けるさ」




「・・・・・・ルーク」




「・・・・・・リーシェン」





そして俺達は今日三度目となる、熱いシェイクハンドをかました。





お互いに見つめあい、友情を確かめあっていると、俺はリーシェンの口元に生クリームがついているのを発見した。




ははん、さてはこいつ、勝負の途中でつまみ食いしたな。



まだまだ子供だな。

仕方のないやつめ。


俺は指でリーシェンの口元についている生クリームをとってあげて、自分の口に運んだ。




すると──



「なっ、なっ、なにをするんだぁ」



と、何故かリーシェンが顔を真っ赤にして、震えはじめた。


おい、どうした?



「なにって、生クリームついてたからとったんだよ」




妹のフブキちゃんも、よく汚すからこうしてあげてる。


別に普通のことだろ?



まだリーシェンの口には生クリームが残っていたので、もう一度とってあげようとすると、急に抵抗して暴れだした。



「や、やめぇてよぉ、恥ずかしいよぉ」



目にうっすら涙を溜めて、上目遣いで俺を見上げてくる。


男のくせに、可愛らしいとても庇護欲をそそる表情をしている。



「なにを恥ずかしがっているんだ。ほらっ、とれないから、ジッとしてろ」



逃げようとする、リーシェンを抱き寄せて、俺は生クリームをぬぐってやった。



「は、はあぅぅ」



変な声をあげるんじゃないっ。



俺があやしいことしてるみたいに思われるだろ!



「んん? リーシェンお前いい匂いするな」



「えっ」



いままで、こんなに近くで接してこなかったから、気がつかなかったけど、抱き寄せてみると、リーシェンから凄く甘い、いい匂いがした。


嗅いでいると、なんだろ・・・・・感じたことのない感情がむくむくとこみあげてくる。



どうなってるんだ?



正体を見つけだすために、リーシェンの首もとに顔を埋めて、すんすんと、鼻で息を吸い込んだ。



「やぁん、やだやめてぇ」



リーシェンが発する奇声を無視して、嗅ぎ続けていると、突然パチンと頬をぶたれてしまった。



「な、なにするんだリーシェン!」



「それは、こっちのセリフだ馬鹿ルーク!!」



「なんだとぉ!?」



「君のことはマブダチとおもってたのに!」



思ってた?


俺達は今もマブダチじゃないか。


何を言っているんだよ。



「こういうことは、もっと大人になってからじゃないとダメなんだっ!」



「ふぇ?」



「ルークの馬鹿っ、もう知らない!」



と、言って、リーシェンは走り出してどこかに消えてしまった。




「急にどうしたんだよアイツ」




俺にはリーシェンの言っている意味がひとつも理解できないまま、会場にいる唯一の友達に置いてきぼりにされるのであった。


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