新たなはじまり
「起きなさい。私の可愛いぼうや。今日はお前が始めてお城へ行く日だったでしょう」
体を揺さぶられて目を覚ますと、母上が俺をのぞいて呆れた顔をしてた。
「まだ眠いよ母上、もう少しだけ寝かせて」
「まったく、あなたは本当に眠る子ね。でも今日はだめよ、ルシアちゃんもパパも待っていから」
「分かったよ、いまおきます」
ベッドから起きて、うーんと体を伸ばす。
眠い・・・・・・・
それもそのはずだ。窓の外はまだ暗かった。
「母上、本当に王様のお城までいかなくちゃダメですか?」
「そうですよ。貴族の子供は十歳になれば王様に挨拶にいくのが、この国の決まりなの、だから早くおきなさい」
「はーい」
仕方なくベッドから飛び起きて、俺は顔を洗いに洗面所に向かった。
いつものように、桶の水で顔を洗い、寝癖をなおす。
そして、洗面所の鏡にうつる自分の顔を見た。
時が経つのははやいものだな、と思う。
ジョーカーを倒してから既に七年の年月が過ぎていた。
変わったことは色々とある。
まず、父上が軽めにハゲた。
あんなにふさふさで、渋くて威厳たっぷりだったのに、歳をとるにつれて、髪の密度が減少し、それとともに髪型が変化していった。
現在のヘアースタイルは頭皮が目だたないように、髪の毛を横に流している。
次に、ルシアのことだが、毎日訓練を重ねてだいぶ強くなったと思う。センスはもともとあったので、順調な成長かな?
ちなみに、俺とルシアは冒険者活動は、五歳の時にやめている。
いや、正確にはやめさせられた。
父上と、母上にバレてしまったのだ。
あんなに、ルシアには秘密にしようと約束したのに、あいつ、剣術の訓練で父上をボコボコにしやがった。
それで、どうしてそんなに強いだ? となり、最終的に調べられてバレた。
その時の俺と父上の空気は最高に気まずかったぜ。
五歳から父上と剣術の稽古をはじめていたが、いつも絶妙な感じで「ふぇぇ、父上強すぎるよぉ、降参だ」と言っていたのに、ルシアがボコボコにしたせいで、俺が強いことまでバレてしまった。
その日から数週間は父上に話しかけてもスルーされるし、反対に稽古がガンガンに厳しくなるで、はじめてグレそうになっちまった。
そんなことがあり、俺とルシアの最終的な冒険者ランクは五歳でB級だった。
それでも、飛び抜けて凄いらしいけど、本当はもっとランクをあげて稼ぎを増やしたかった。
一応、溜め込んでいたお金は母上に全て渡したので、おかげで我が家の夕飯は柔らかいパンに、時々チーズと、お肉がでるようになった。
嬉しいことだ。
そして、最後に、俺の人生で一番嬉しかったことがある。
俺は身支度を終えて、ルンルンと扉のドアを開けた。
音をたてないように、こっそり侵入し、小さなベッドでスヤスヤ眠る、可愛い女の子を見る。
彼女の名前はフブキ、俺の可愛い妹だ。
母上似の美人さんだ。
俺は起こさないように、おでこにキスをする。
「フブキちゃん、お兄ちゃんいってくるね」
「おに・・・・ちゃ・・・・ん」
ふふふ、なんと可愛らしい寝言だ。
数日会えなくなると思うと、お兄ちゃんは寂しいぜ?
王都でお土産かってくるから安心しておくれ。
おっと、そろそろ出発しないと、ルシアと父上に怒られてしまうな。
俺がリビングにいくと、ルシアが気がついて手をあげた。
「おはよう、ルーク」
「おはようルシア、父上。用意ができたよ」
「よし、出発するか」
父上が荷物を抱えて俺の頭に手をおいた。
「ずいぶん背が伸びたな、俺はお前の成長が嬉しいぞ」
「はい、これも母上と父上のおかげでございます。ところで父上これからいく貴族の子供が集まるパーティーとは、どんな感じでしょうか?」
俺はつい気になったので、素朴な疑問を口にする。
楽しく、お菓子でも食べて王様に挨拶をするのだろうか?
けど、予想外なことに、父上は顔を歪めて
「うむ・・・・俺の口からはちょっと言いづらいが・・・しいていうなら忍耐力が必要だ」
と、言って、少し間を開けたあとに不吉な言葉を残した。
「いいか、ルークこれだけは覚えておけ。我がベルモント家、底辺貴族、辛いことを言われるかもしれんが、耐えるのだぞ?」
そして、父上は、家の前にとめている馬車に向かって歩いていった・・・・・・
──お城行くのやめてもいいですか?




