2 最強の赤子
母上の懸命な努力のお陰で、この世に生を受けることができた俺は現在、実家のベッドの上でぬくぬくと育っている。
実をいうと、あれからもう数ヶ月がすぎている。
母上のお腹の中で快適にスローライフをしていた俺は、新しい世界の文化に触れて軽くカルチャーショックを受けていた。
いやー、まさか世間がこんなに広いとは思わなかったよ。
気分的には、もっと色んな所を見てまわりたかったけど、生後一日からハイハイをする赤ちゃんは怪しまれると思い、大人しく控えていた。
ふふふ、だが、それはもうおしまいだ。
数ヶ月ベッドの上で過ごした俺は、そろそろ頃合いだなと、昨日父上と母上に渾身のハイハイを披露してやった。
すると、「ルーちゃん、凄い凄い」と母上は大層お喜びになられた。
これで、人目を憚らずハイハイで好きな場所を探索しても怪しまれないですむって戦法さ。
あっ、ちなみにルーちゃんって俺のことね。
ルーク・ベルモント、ベルモント家の可愛い長男だ。
母上はエリーナ・ベルモント、金髪の綺麗系の美人さんでとても優しい。
父上はカイリー・ベルモント、中々にダンディーな渋いイケメンである。
どうやら我が家は貴族のようで、騎士爵といわれる階級らしい。
ただ、貴族としては最底辺らしく、割りと生活はキツイみたいだ。
俺だって無駄に数ヶ月ベッドの上をゴロゴロしていた訳じゃない。
情報収集と、特技の研鑽き勤しんでいたってわけ。
すると、ここで午後の鐘の音がなった。
丁度よく俺が磨き上げた特技を披露するタイミングがやってきたようだ。
すぅ、と息を飲み込んで声に魔力をのせて叫ぶ。
「ばぁっばばぶぶー!!」
魔力の力で家の隅々まで響き渡る一撃必殺の呼び声に、可愛らしいお姉さんがとことこと歩いてくる。
これこそ、俺が鍛えあげた特技、マンマ、ミルクだ。
「はーい、ルーちゃんお腹空いたね? いまミルクあげますよ」
美しい金髪の女性が上着をはだけさせて、おっぱいを与えてくれる。
俺はむしゃべりつくように飛びついた。
「あびゃびゃびゃ」
「ふふ、そんなに慌てなくても誰もとらないわよ?」
「うびゃびゃびゃ!」
ハッキリいって、母上のミルクは最高である。
まず、その顔がいい。
女神のような慈愛に満ちた美しい顔を見ていると、食欲もそそるというものだ。
そして次にこの弾力。
顔を埋めると心地よい温かさ伝わり落ち着いてくる。いつもミルクの時間は左右どちらからいくべきか悩んでしまうほどだ。
「ばばばぶばぶぶばぶ」
「はーい、今日も元気に沢山飲んだね、偉い、偉い」
俺が満足するまでミルクチャージしたのを確認すると、母上はまたどこかにいってしまった。
いつもなら、ここで頭を撫でて、よちよちしてくれるのに、どうやら忙しいらしい。
(これは絶好の機会だっ!)
俺は母上のおかげで体力、気力ともに回復し、監視の目もなくなったので遂に長年(数ヶ月)の計画を実行することにした。
まずは手始めにこの家を探索して、見聞を広げていこう!
なにか新しい発見があるかもしれない。
俺は寝転んでいたベッドから勢いよく立ち上がり、ジャンプして飛び降りた。
スタっ、と華麗に着地してハイハイの姿勢をとる。
頑張れば、いや頑張らなくても普通に歩けるのだが、見られたら色々とまずいので、基本移動はハイハイだ。
さぁ行くかっ、と進もうとしたところで、俺はさっき瞑想していたときに見つけた特殊技能を思い出した。
それはステータスオープンというものだ。
自分の能力値を数字でみることができる。
早速やってみることにしよう。
「ばぶぶぶぶぶーぶ」
目の前に透明な板が現れたので確認する
名前 ルーク・ベルモント
体力 ∞ (制限あり)
魔力 ∞ (制限あり)
力 ∞ (制限あり)
知力 ∞ (制限あり)
素早さ ∞ (制限あり)
防御 ∞ (制限あり)
称号 万物の頂点、最強の赤子
・・・・・・・・・・・・ふう、もう今後確認する必要はないな。
俺は若干自分の強さに引きながら、そっとステータス画面をとじた。
いま見たものは忘れて、早々に家の探索へと気持ちを切り替えて、俺はハイハイを再開するのだった。
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