表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/26

15 夜空にとける漆黒の刃

 まだ夜は深い。


人目を阻むなら絶好の時間だ。



ここは町から少し離れた草原地帯。


涼しい夏の夜風が、草の穂先を揺らす。



俺とルシアが冒険者になってから幾度となく素振りをさせられていた場所に奴はいた。




 「よぉ、遅かったじゃねえか、坊主。あのクソきたねぇロリコンに、殺されちまったんじゃねーかと思ったぜ?」




と、大きな岩に背を預け、腰にぶら下げている刀に手を置いたままマルティネスは言った。



 (ずいぶんと喋り方が違うじゃないか。それがお前の本性か?)




テレパシーで話しかけてやるが、特に驚いた様子は見せず、逆に楽しそうに、笑っている。



「テレパシーってやつか、ずいぶんと面白いことをするんだな」



(すこし前に倒したレッドドラゴンから教わってね。それ以来必要な時には使っている。こっちの方がしゃべりやすいしな)



「どうやら猫を被っていたのはお互い様のようだ。レッドドラゴンを倒しているなら、ゴブリンやスライムの相手は退屈だったろ?」



(くだらない、素振りよりマシだったな)



あんな無駄な訓練をするくらいなら、雑魚モンスターを狩って少しでも金を稼ぐ方が遥かに有意義だ。



「いってくれるじゃねーか。俺様がわざわざお前の為にやってたのによ」



(余計なお世話だ、俺は生まれながらの最強。訓練は必要ない)




すると、マルティネスは不愉快そうに舌打ちして、俺を睨み付けてくる。



「また最強か。お前は自惚れすぎだ。たしかに才能ならお前より凄い奴はいないかもしれねぇ。だがお前より強い奴はいくらでもいるぜ」



(そう、思うなら勝手にすればいい。だが、俺が強くなることに、お前になんの関係がある?)



簡単に言えばお節介だ。


俺が弱かろうと、強かろうと、結果はすべて自分にかえってくる。



マルティネスには、なんの意味もない。




「ふふ、俺には俺の考えがあるってことさ。お前は俺が王都でなんと呼ばれているか知ってるか?」




(さあな、生まれてこの方、故郷をでたことがないもんで)



興味もないしな。


知るわけがない。





「そうだったな。俺は王都ではこう呼ばれている『s級冒険者狩りのジョーカー』ってな。つまりは殺人鬼、犯罪者さ」



マルティネスは懐から物をとりだして、俺の足元に投げてくる。


それは、冒険者に発行される冒険者カードだった。




「マルティネスって名前も、適当に殺した冒険者から奪ったギルドカードに書いてあった名前だ。気に入ってはいたけどな」





(俺に近づいてきた目的はなんだ? 戦いたいなら最初から襲ってくればいいだろ)



そう、俺にはこいつの目的がわからない。



殺人衝動が抑えられない類いの人間なら、わざわざこんな手の込んだことをする意味あるのか?




「俺は、強い奴と戦いのさ。稀にギリギリの戦いの中で成長して、頭ひとつ飛び抜ける奴がいる。世間じゃ覚醒者って呼ばれている。俺はそのステージに立つために強者を探している」



へえー、そうなんだ。


世間にはそんな奴らがいるのか。


まぁ、俺からすれば、だからどうしたって感じだけど。


生まれながらに最強の力を持つ俺には理解出来ないね。



「お前なら、技術を学べば俺と互角の戦いができると踏んで鍛えようとしたが、とんだ期待はずれだったぜ。だがいいさ、また別の奴を見つける。だから、お前にはここで死んでもらい、俺の刀の錆びにしてくれよう」


マルティネスは腰の鞘から刀──剣とは違い片刃の得物を引き抜いた。



「嬢ちゃんを拐ったのは、少しでもお前を怒らせれば多少なりとも強くなると期待してだ。悪いことした、後で謝っておくぜ」



(その必要はない。お前はここで、静に死んでゆくのだから)



そして俺も木刀を構えてマルティネスに向ける。



コイツを生かして帰すつもりはない。



ルシアに手をだしたツケはしっかり払ってもらう。




「ちっ、相手が木刀じゃ絞まらねぇな。これを使え」





マルティネスが腰にさしていた、もう一本の刀を投げてきたので、俺は片手でキャッチした。




「脇差しだ。普通より短いが、お前には長すぎるくらいだろ」





鞘から抜き、俺は頭上より高く持ち上げて刀身を眺める。


刀は黒く、夜の色をしていた。


波紋をうつ美しい紋様が月の光に煌めいて、夜空にとけこむようだ。



まともな刃物を持つのは、包丁以来だ。悪くない。



「業物だ。丁寧に扱えよ」



(わかった、感謝する)



そして、俺達は仕切りなおして、お互いに刀を向けあうのだった。







気に入ってくれたならブクマ、評価してくれると嬉しいです。



皆様のおかげでめでたくブクマ50を越えました!


ありがとうございます!

これからも是非よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ