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新型コロナウィルス禍が超長期間続く場合の経済対策案

 実を言うと、これを書こうかどうしようか僕は悩みました。

 僕の場合、次に何を書くか決めるのは、単純に“書きたいもの”だったり、“社会の役に立つもの”であったりするのですが、この境界線は曖昧で、“社会の役に立つもの”がそのまま“書きたいもの”に繋がるなんてことも多々あります。

 ただ、今回のこの“新型コロナウィルス禍が超長期間続く場合の経済対策案”は、はっきり言って役に立つのかどうか微妙です。

 短期間で考えるのなら、国のトップの方にいる経済政策を立案していている人達にまで伝わらなければあまり意味がありません。一般の読者の方々に読んでもらっても、何らかのアドバイスにはなり難いでしょう。

 マクロ経済の話ですからねー

 そして、その可能性はかなり低そうです。

 ただし、長期間で捉えるのなら、そうとも限りません。

 これは“新型コロナウィルス禍が超長期間続く場合”という限定された状況下での経済対策案ですが、それでも経済を考える題材には使えるので、経済への理解を深める役割は果たしてくれるはずです。ならば一般の読者の方々に読んでもらう価値は充分にあるでしょう。

 ですが、それなら始めっから、その為のエッセイを書いた方が良さそうです。

 自分が提唱している(そういう恥ずかしい奴なんです。僕は)通貨循環モデルを使って、MMT理論について語るエッセイを書こうかと今画策している最中なのですが、それに含ませてしまった方がその効果はあるような気がします。

 どうしたって似たような内容を書く部分はでてきちゃいますからね。

 (まぁ、それを言ったら、今までも何度も似たような事を書いているのですが)

 そう思って、しばらくは書かないつもりだったのですが、どうにも他の文章を書いていて身が入らないんです。

 まだ今の状況で世の中に貢献できる可能性があるのに、「ベストを尽くしていない」という罪悪感っぽい何かが頭のどっかに常にあるんですね。

 それで「こんな気持ちを抱えたままじゃ、気持ちが悪くして仕方ない」と、まぁ、その効果のほどを自分でも疑問視しつつも書いてみることにした訳です。

 なんかの奇跡が起こって、国の上の方の人達に伝わる可能性だって無きにしも非ずですしねー

 

 ■まずは状況の整理から

 

 現在、新型コロナウィルス対策で、ビジネス活動が制限されています。映画、演劇、ライブハウス、飲食店、パチンコ店等々といった人々が集まりウィルスを感染させてしまうリスクが高いビジネスの活動が抑制されてしまっているのですね。

 これらビジネスで働く人達は休業を余儀なくされ、実質的に“失業”とほぼ同じような状態に陥ってしまっています。

 すると、当然ながら、収入が激減してしまいます。

 収入がないのだから、その人達は何かを消費することができません。そうなれば、それは他の企業の収入減になり、その悪影響が更に広がっていきます。

 以後、これが繰り返される事で、経済社会がどんどん委縮していってしまうという現象が起こるのですが、これは“デフレスパイラル”などと呼ばれています。

 このデフレスパイラルを防ぐ為には、セーフティーネットが効果的です。

 国が失業した人達を支援し、給付金等を配る事で生活を保障するのです。そうすれば、消費を行い続けられるので、その悪影響は緩和されて、経済の萎縮が抑制されます。

 ただし、これはいつまでも永遠に続ける事はできません。

 財源には限界があり(MMT理論では“限界はない”とされていますが、読み解いていくと結局“限界がある”のと同じ結論に至ります)、自ずからある程度の期間までしか続ける事ができないのです。

 つまり、新型コロナウィルス禍が、1年、2年、或いは10年以上といった超長期間続くのであれば、セーフティーネットの限界を迎えてしまうのです。そして限界を迎えれば、デフレスパイラルが悪化してしまい、社会は恐慌状態に陥ってしまう危険があります。

 (その前に、ウィルスの蔓延覚悟で、経済活動を再開させてしまう可能性もあるやもですが)

 通常の経済学では、こうならない為の解決策を提示する事は難しいかもしれません。

 しかし、“通貨循環モデル”でならば、恐らくは可能です。そこでここでは“通貨循環モデル”を用いて、その案を提示してみることにします。

 

 ■通貨循環モデルを簡単に説明

 

 前述しましたが、僕は通貨循環モデルという経済理論を提唱しています(ああ、恥ずかしい)。ただ、経済理論と言ってもそこまで難しくはありません。

 簡単に言ってしまえば、「通貨の循環場所である“商品(生産物)”が増えることで経済は成長する」ってなことを言っているだけです。

 ただ、その単純な話からでも色々と分かる事があります。

 例えば、工場などを建設して生産性が上がったとしましょう。それで生産量が上がったなら、素直にその分だけ経済成長です。ですが、その生産物があまり消費されなかったならどうなるでしょう?

 生産量は変わらないのに、より少ない人数しか必要なくなるので、この場合、消費されない分だけ労働資源が余ってしまうことになります(世間で時折言われる“機械に仕事を奪われる”ってやつですが)。

 これはつまりは失業者が生まれるってことを意味しますから、社会的に大いに問題になります。が、悲観するべき話ではありません。何故なら、その失業者達…… 余った労働資源を別の新産業で活用すれば、それだけ経済成長が見込めるからです。

 早い話が、「生産性を上げて“商品(生産物)”を増やせば増やすほど経済は成長する」ってことですね。

 歴史を観れば、これは自明です。

 昔“何もなかった時代”から、経済が成長するにしたがってどんどん商品は増えていっています。自転車、車、携帯電話、パソコン等々…… と。

 ――さて、ここで、この考えを更に一歩進めてみましょうか。

 資源が余っているのなら、新生産物を生産できます。そして、通貨の循環は、生産物に対して生まれるものです。

 ならば、その新生産物が増えた分に関しては、新たに通貨が発行できるという事になるはずです。

 (因みに、恐らくMMT理論での「通貨はいくらでも発行できる」という主張は実質的にはこれに当たるのではないかと思われます。よく読んでみると、「資源の制約を受ける」ことをちゃんと理解しているようなので)

 これを応用すれば、例えば再生可能エネルギーを普及させる事ができます。最初の一回分に関しては、通貨を発行して生活者にそれを配り、それによって新たな通貨の循環場所を発生させられるのですね。それ以降は、「料金を徴収する」等のルールを作れば、その通貨の循環を維持できます。

 「支出が増えてしまうじゃないか!」って、ツッコミが入りそうですが、支出が増えた分、収入も増えるので大きな問題にはなりません(まぁ、“循環”なので当り前ですが)。収入の格差については、何らかの是正処置を設ければ良いだけですし。

 ただし、ここで注意点があります。

 国に料金を支払う企業の選択を任せると、不正の温床になるので、何らかの形で消費者が直接選択できるような仕組みを執る必要があります。

 これ、社会主義や共産主義国家が滅んだ大きな要因の一つですからね。気を付けなくちゃいけません。

 

 これが僕がもう十年くらいずっと訴え続けている経済政策案です。

 

 さて。

 現在(2020年5月)、新型コロナウィルス禍によって、前述した“デフレスパイラル”が起こりそうな状況下ですが、その経済対策として、この案は応用できるように思います。

 

 ■通貨循環モデルを応用

 

 先の僕の「通貨を増刷する事で、“新たな通貨の循環場所”を増やす」という方法では、生産性の向上によって余った労働資源を活用する前提で考えていました。

 だからこそ、物価上昇を気にせず、通貨を発行できるのです。

 通貨需要に合わせて、その分だけ、通貨を発行(供給)するからですね。

 ところが、現在の新型コロナウィルス禍によって労働資源が余っている状況はこれとは状態が違っています。

 生産性の向上ではなく、ビジネス活動の抑制によって労働資源が余ってしまっているのです。つまり、生産物が減ってしまっているのですが。

 「労働資源が余っている」という点は同じなので、同じ理屈で、その余っている労働資源を使って何か他の産業で活かせば、デフレスパイラルを防ぐ事が可能です。

 ニュース番組で、営業ができなくなったタクシー会社が宅配のような業務を行うようになったと報道されていましたが、ちょうどそんな感じですね。

 しかし、通貨の循環場所が増えている訳ではないので、通貨を新たに発行することはできません。

 いえ、正確に言うと、物価上昇覚悟ならば発行できますが、その場合、経済社会を混乱させてしまう恐れがあります。

 新たに通貨を発行できるのなら、「通貨を増やした分、使う分を増やしただけ」という理屈があるので生活者達を説得し易いと思いますが、今回は「通貨を使わなくなった分、他で使ってください」となるので、説得が難しくなるのではないかと思われます。

 現在、お金に余裕のある人にだけ要望を出す事になるので、強制的に料金を徴収する(税金でも良いのですが)ような方法では、理解を得られ難くもなるでしょう。

 また、大量に失業者が生まれるので、その全ての人に労働技能を新たに身に付けてもらうような余裕もないと考えられます。その為、“新たに誕生させる産業”には労働者スキルの制約が通常よりも強くなります。

 (ただし、トヨタやシャープがマスクを短期間で製造できるようになった例を観れば分かるように、人間の労働者にはかなりフレキシブルな対応が可能である点は考慮するべきではないかと思われます)。

 ですので、より繊細な対応が求められる事になります。

 

 まず、どんなスキルを持った人達がコロナ禍によって職を失ったか、それを調査する必要があるでしょう。

 それによって、どんなスキルを持った労働資源がどれだけ余っているのかを知る事ができます。

 それが分かったなら、今度はどんな労働需要があるかの調査ですね。

 簡単に分かるのは、先に少し上げましたが“物流”です。コロナ禍が始まる前から、物流業界は労働力不足状態でしたから、タクシーや観光用バスの運転手などの労働者の活用はむしろ歓迎されるのではないでしょうか?

 (官僚達の規制も、コロナ対策になればかなり緩くなるようなので、ある意味ではチャンスかもしれません)

 後、簡単に想像できるのは医療関係の労働需要でしょう。これも少し触れましたが、マスクをトヨタやシャープが製造し始めましたし、人工心肺装置も増産しています。ここでも労働需要が増えています。

 また演劇や音楽などのオンライン配信への移行で、労働者の需給をバランスさせる事がある程度は可能であると思われます(これは別の産業に労働需要を見出すのとはまた違った話ですけども)。

 飲食店に対する支援(?)案としては、例えば町内会などがデリバリを募って取り纏め、依頼をするような体制を作り出せれば、仕事を作り出す事が可能になります(もちろん、感染予防を徹底した上で、ですが)。

 しかし、当然ながら、これらだけではコロナ禍によって“余ってしまった労働資源”を使い切るにはまったく足りないでしょう。

 これについては、もうアイデアを募集するしかないと思います。

 「何か困った事がないか?」「こんな仕事があってくれたら便利だというのを教えてくれ」などと訴えかけ、“必要な仕事”を募るのですね。

 その中からできそうな仕事を選別し、労働需要を満たす……

 恐らくは、試行錯誤になるのではないかと思われますが、このような手段を執っていけば、コロナ禍によって始まっているデフレスパイラルを防ぐ事ができるのではないかと思われます。

 

 ただし、簡単に書いていますが、このような事を実現するのは普通は至難の業です。

 まず情報を集める事自体が大変ですし、その集まった情報を分析するのにもかなりの時間を要するでしょう。

 が、現在はインターネット及びに、高度な情報処理技術が人間社会に存在します。マイナンバー制度を応用すれば、効率良く“余っている労働資源とそのスキル”と“必要とされる仕事”の情報を集められるウェブアプリケーションを作成する事は比較的容易にできるはずです。

 (ハローワークでは恐らく不充分です)

 そのようにしてデータを集めたなら、データベースに情報を蓄積し、分析をすれば良いのです。

 国にそのようなサイトを立ち上げ、管理する能力があるのかないのかはよく分かりませんが、協力を求めれば応えてくれる大学や企業などの機関は必ずあります。その力を借りれば実現は可能でしょう。

 

 新しい事にチャレンジするのを人間は嫌がる傾向にありますが、少なくとも理屈上は実施可能です。

 それによって、多くの人々が助けられる点を考慮するのなら、リスクとリターンのバランスは取れているでしょう。

 また、これはチャンスでもあるのかもしれません。

 新型コロナウィルス禍に対応し始めてから、大気中に放出されるCO2が著しく減っているそうです。

 もし仮に、その状態を維持したまま、ここで述べた方法で労働需要を満たせたなら、無理難題であるかのように思われていたCO2削減を実現できます。

 それを考慮するのであれば、更にメリットは大きくなります。

 試してみる価値はあるのではないでしょうか?


本文でも書いた通り、役に立つかどうか自信はありませんが、

これからビジネス活動が解禁されて、もしまた感染者が増えてしまうようなら思い出してみてください。

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