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リセットです!勇者様!  作者: 卵粥
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その1 どちら様ですか貴方方は?

 ふと目を覚ますと知らない人たちに囲まれていた。その人たちはザ・異世界と言う様な服装をしており、表情はとても心配そうなものばかりで。

 残念ながら俺はこんなわけのわからない異世界風の服を着ている人たちに心配されるような事をした覚えはない。そもそもどちら様と言った状況なのだ。


 目を覚ました俺に気付いたその人たちは、ホッとしたような顔になった。


「やっと起きた。大丈夫? 私の事、わかる?」


 枕元に居た一人の女性が俺に話しかけてくる。

 わかる? と聞かれても困ってしまう。


「無駄でしょ。どうせまた"リセット"されてるに決まってる」

「そんな事言わないで!!」


 少し離れた場所にいた一人の男性がため息交じりにそんな事を言えば、女性はカッとイラついた様に言い返した。


「まぁまぁ、喧嘩してっと愛弟子ちゃんが怖がっちゃうからサ。

オッス愛弟子ちゃんおはよう。突然だけど俺のこと覚えてっか?」


 そんな二人を宥める様に一人の男性が割って入って来る。

 その男性は膝から下が透けており、思わず二度見してしまった。しかもいきなり近くに現れたのでひえっと声が出る。


「え…っと…、どちら様でしょうか…」


 やっとの事で返した言葉を聞いて、その場にいた先程の女性と男性、そして幽霊さんと他三名は「あー、やっぱりかー」と言う様に肩を落とした。


 …えっと、これって俺が悪い感じ?


◇◇◇


 混乱する俺相手に、その場の人達は慣れたように対応してくれた。まるで、こんな事が何回もあったかのようなスムーズな対応に最初はびびったが、話を聞くにつれて納得してしまった。


 まず、俺はこの世界に召喚された勇者らしい。この時点で悪い夢なのかなと二度寝をしようと思った。


 次に、俺は死ぬと記憶がリセットされてしまう呪いにかかっているらしい。ちょっとなにいってるのかよくわかんないですとやはり二度寝をしたくなった。

死んだのに生き返るってどういう仕組み? と困惑してしまう。そこのメカニズムは後々整理するとして、ここからがぶっ飛んだ話になった。


 最初に俺に話しかけてきた女性はどうやら俺の嫁らしい。残念ながら俺の記憶には結婚するような間柄の女性はここ数年いないと記録されている。

その女性はめちゃくちゃ美人。綺麗な白い髪に薄紫のメッシュが入っていてとてもとても美人でスタイルもいい。タレ目気味の目には青紫の宝石が輝いているのかなと言う程に美しい瞳を持っている。服装はファンタジー世界にある洒落た服。しかしそんなに目立つデザインではなくカジュアルなものだった。こんな女性が何故俺を旦那に選んだのかがマジで謎。刺されそうで怖い。名前はネイと言うらしい。


 そして、少し離れた所に居た男性は何と言うか不思議な存在だった。体の4分の1が消滅していて、4分の1が死んでいて、4分の1が生きていて、4分の1は別の個体として生きているとかアホみたいにわけのわからない説明をされた。

この男性もめちゃくちゃ顔がいい。じとっとした目は反転目で、黒の中に輝く金色の月~と言う言葉がぴったりの瞳を持っている。

髪の毛は海の様に綺麗な青で、服装は地味めだが顔が良くてスタイルも良い奴が着るとなんでもかっこよくなる法則が働いているらしくとても似合っていた。名前はジュエと言うらしい。


 幽霊さんはなんと俺の師匠らしい。と、言っても故人らしいが。故人が何故に師匠!? と困惑したが、ジュエさんに「お前を庇って死んだんだよ」と説明されて何とも言えなくなってしまった。知らないとはいえそれが本当なら罪悪感が半端ない。しかし当の本人は「死んでからめっちゃ楽」とダブルピースをしていた。どうやらこの幽霊さんはこの国の元国王らしく、色々苦労していたらしい。髪の色は燃えるような赤で若干つり上がった瞳は金色。軍服っぽい服を着ており、いかにも強そうな顔立ちをしていた。名前はユスと言うらしい。


 次にめちゃくちゃ可愛い女の子。オレンジっぽい茶髪のポニーテールは可愛らしい緑のリボンでまとめられていて、まん丸な瞳は綺麗な青。だぼだぼの緑パーカーに真っ赤な厚底ブーツを履いていると言う派手な容姿をしていた。八重歯がちらつくその口は常に弧を描いていた。どうやら、この子がジュエさんの4分の1から作られた別個体らしいが、何をどうしたらジュエさんからこんな無邪気で可愛い子が生まれるのかが謎すぎた。名前はスペラと言うらしい。


 次に紹介されたのは青年。どこかネイちゃんに似た面影を持っているなと思っていたが、何とびっくり俺とネイちゃんの子供らしい…。全く持って意味が分からない。

「ぱぱまた記憶無くしたの!? だっさ!!!」と言われたときには来るものがあった。当たりが強くないですかね、とネイちゃんを見れば、「反抗期だから」と笑われた。

 俺とネイちゃんの息子故か髪の色はネイちゃんと同じ綺麗な白。そして俺の黒髪のメッシュが入っていた。瞳はつり目気味で綺麗な赤紫をしていた。服装は簡単なもので、パーカーにジーパンと言うものだった。首からは綺麗なペンダントが垂れ下がっていた。名前はリーベと言うらしい。


 最後は俺と年が近そうな男性だ。びっくりは続くもので、この男性は俺の使い魔兼弟子らしい。俺は師匠もいて弟子もいるのか、と遠くを見つめてしまったのは仕方ない。

何があったかと言うと、どうやら悪霊?の様に悪い方に堕ちかけていたところを俺が倒して救い上げたらしい。そこからの縁と聞いた。使い魔ゆえに少々雰囲気が暗そうだが、褐色の肌に綺麗な銀髪に緑の瞳、タートルネックの上から着物を羽織っていると言う少々印象に残る外見をしていた。名前はムギと言うらしい。


 一通り紹介されたが覚えられる気がしない。しかもネイちゃんの話によればまだいるらしい。記憶をなくす前の俺の人脈凄くない? 俺どっちかって言うとそんな人と関われないタイプだった気がするんだけど…。要は陰キャと言うか。人見知りはしないがわいわいと群れるのもできない面倒なタイプの陰キャ…。それがこんな人達に囲まれてるって何事?


 そもそも、俺の記憶は大学を卒業して社会人になった所で止まっている。

 会社はどうなっているのだろう、と言う心配と、この世界に来た原因ってなんだっけと必死に記憶を漁るが残念ながらこちらに来そうなありきたりなきっかけの記憶が無い。

 酒飲んで寝たのが最後の記憶。もしかしてあの酒が良くなかったのか? アサヒだったけど。


 聞けば、俺はこれで記憶をなくすのが10数回目らしい。

 どうりでスムーズに色々教えてくれるわけだ。しかも10数回も死んでる俺ってどうなの。と肩を落とす。


 この世界で、俺には死ぬと記憶だけがリセットされ、スタート地点に戻されるメカニズムと言う呪いが俺にはかけられているらしい。

 簡単に言うと、敵の攻撃で死ぬ⇒レベルや能力はそのまま記憶だけを失って初期地点(つまり最初に旅立った場所)に戻されるらしい。

 死んでなんで生き還るの!?と困惑すると、「お前、不死身だからな」とユスのお師匠さんが教えてくれた。


 ほわい? 不死身? のーあいむひゅーまん。と思わず返せば、


「お前は確かに元々は人間だったらしいけど、この世界に来てからはこの世界で唯一の"不死身"の生命体になったんだヨ」


 とお師匠さんは教えてくれた。

 不死身? じゃあ死ぬことは無くない? なんで記憶だけ奪われるの? そもそも俺ってなんでこの世界に来たワケ? とさらに混乱すれば、面倒になったらしいジュエさんが、


「不死身と言ってもお前の考えている死なない不死身じゃないんだよ。

一度死んで、記憶と言う経験を代償に蘇る事の出来る不死身。代償が無い場合は蘇る事ができない系。でもね、蘇って目を覚ませば少なくとも記憶は生み出される。死んで蘇り、目が覚めるまでに殺されることがなければお前は永遠と記憶を失いながら生き続けられるわけ。わかった?

不死身のせいか歳も取らないみたいだけどね。

 お前がここの世界に来た理由なんて誰も知らないよ。お前しか知らないんだよ。だけど、最初からお前はその大切な記憶を失っていた。その大切な記憶を失ったせいで不死身になった説をボクは推すけどね」


 一気にまくしたてる様にそう教えてくれた。

 ひええ、と悲鳴を上げれば、俺の息子であるらしいリーベに、


「ぱぱってほんっっっっとだっさい!!!!」


 と怒られてしまった。


「ま~ま~、落ち着きんしゃいな兄さん~」

「じゃかあしい!!」

「ほなほな、あんさんは自分のお名前覚えとるん?」


 そんなリーベを揶揄う様に笑うスペラちゃんがいきなり問うてきた。

 ぽかんとして、何故そんな事を聞くのだろうと困惑する。


「えっと…? 自分の名前?」

「そう。言ってみ?」

「やだなぁスペラちゃん。いくら俺でも自分の名前を忘れるわけ…」


 思わず笑ってしまうが、はたと気づく。


「…あれ、俺の名前なんだっけ?」


 今まで歩んできた人生や友達の顔、両親の顔は覚えているのに、自分の名前がわからないことに。

ふと思いついてふと書き出したのでのんびりまったりゆっくり更新予定です。

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