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子供は大人に勝てませんっ!

俺は吉岡雪斗(ヨシオカユキト)。なんの変哲もない29歳。独身。実家暮らし。いや、実家に寄生しているというのが正しいか。


いつから歯車が狂ったのだろう。朧気な記憶では、小学校までは所謂リア充ライフを謳歌していた筈だった。しかし、気付けばイジメの標的となっていた。


最初はなにかの間違いだと思った。偶然あいつの話を聞くまでは…。


やめよう、気分が悪くなる。ここ最近出かけてなかったし、たまには外の空気でも吸おう。そう心で呟いて重たい腰を上げる。


久々に見た空は、清々しい程に晴れ上がっていた。目に見える全てが綺麗に見えた。引きこもって十数年。最初は晴れの日も、雨の日も、全てが憎かった。全てを恨んだ。いや、嫉妬していた。


今でもその気持ちがないかといえば、それは嘘になる。「何故」。繰り返し頭に浮かぶ言葉。どうしてこうなってしまったのか。結局分からないまま、今に至っている。


外に出たものの、目的はない。軽く散歩して家主のいない家に戻るしかない。伸び切った髪をかきあげ、軽やかな足取りで歩を進める。


雪斗が住むこの町、郡館(こおりだて)は人口15万人程度の地方の中心都市だった。程よく都会で程よく田舎。必要十分な都市機能、商業施設、交通網。

いい街だと思った。苦い思い出しかないこの街だが、嫌いになれなかった。ときに知り合いと出くわすこともある。でも、誰もこちらには気付かない。風貌が、変わってしまったのだ。ブランクもあるし当然といえば当然か。だから、外にも出られた。


気付かれないことは辛いことでもある。当事者も傍観者も、雪斗にとってはイジメの加害者であった。だというのに彼らは気付かない。普通の生活を送っている。罪悪感のない彼らを最初は許せなかった。


でも、慣れてしまった。大人になるってことは、諦めを知るということなのか。そう思った。


そんなことをいつも考えていた。この手の思考は繰り返す。解決も、前進もないけど繰り返す。何故か繰り返す。思考の渦に潜り込んでしまう、その感覚が好きだった。


だから、気付かなかった。背後から迫る脅威に。





そして気が付くと、そこは見たことのない世界だった。

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