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75話 時間潰しの提案

 



 屋敷を出るようにって、具体的にどうするつもりだったのかを問うても発案者がヴィオラ王女殿下であり、他二人は話に乗っただけで詳細は聞いてないと必死に首を振った。リヒター殿下が更に問い詰めようとするが待ったをかけた。これ以上二人に聞いても無駄だろうし、何より可哀想になってきた。



「殿下。私は気にしていませんわ」

「いえ、アフィーリアお嬢様。この二人もヴィオラも最近は特に目に余る行動をしていました。お嬢様に対しても、他家の令嬢に対しても。王族という身分を持つ者として相応しくありません」



 ウアリウスを慕う女性は王女達だけではない。牽制をしていたのは私だけではなかった。鋭い声色で騎士を呼び、王女二人を退室させたリヒター殿下。私はこの後どうしようかとウアリウスを見上げた。



「王太子殿下。主催者がいないお茶会に出席し続けても意味がないから、僕とアフィーリアはお暇するよ」

「申し訳ありませんでした、公爵閣下」

「いや、気にしなくていいよ」



 最後まで妹達の不出来を詫びるリヒター殿下が不憫だ。歩いて王宮を出るとウアリウスの魔術で屋敷に戻った。いつも腰掛けるソファーに二人並んで座った。



「予想以上に早く終わったね」

「王太子殿下がいたのは予想外だったよ。王女殿下に呼び出された時点で覚悟はしてたけど、こんなに早く終わるとは思わなかった」



 時間にしたら、三十分も過ぎていない。本当にあっという間だった。残った時間はどうしようかと悩む。学校に行っていない私が日々の時間を過ごすには、何も無さすぎた。

 買い物は好きだが毎日していると飽きる。高価なドレスや宝石は元から好きじゃないから態々商人を呼んで買わない。勉強も必要な知識は殆ど頭に叩き込んだ。元の頭の出来が良いから、学ぶ事に関しては苦労しない。魔術の練習をしたいが神の加護が強い王国で不用意に魔術を使用するのは危険で、特に私の場合威力が強く魔力が大量消費する魔術を好むから余計使えない。

 結局、何もすることがない。


 ウアリウスお勧めの本を紹介されても時間だけは幾らでもあるので数日で読破してしまう。


 困った。



「ウアリウス」



 ダメ元であるお願いをしてみよう。



「人間界にいる他の悪魔と会ってみたいな」

「駄目」

「……ですよね」



 魔界全土に掛けられた忘却魔術のお陰で誰も私を魔界の王女だと覚えている者はいない。

 人間界に住み着いている悪魔になら、会っても問題はないと思うのだけれど、彼が駄目と言うなら従うしかない。



「あくまで魔界全土にいる悪魔にかけた魔術であって、人間界にいる悪魔にまでは影響が及ばないんだ」

「それってつまり……」

「そう。人間界にいる悪魔の中には、君を知る者はいるかもしれない」



 衝撃の告白だ。術の対象が規格外に大きかった上に、数も尋常じゃない。人間界にいる悪魔まで手が回らなかったとウアリウスは話す。人間界にいる悪魔の殆どは、隠居貴族が多い。中には先代魔王の息子夫婦がいるとかも。たとえ私を知らなくても、魔王や魔王の妻に似た容姿をしている私を見たら疑問を抱く。

 容姿だけじゃない。魔力だってそう。膨大な魔力を持つ事に加えてこの容姿。疑う様子が多すぎる。



「諦めた?」

「うん……」

「良かった」

「困ったな……時間の潰し方が思い付かない」

「だったら、君宛に来てる縁談でも受けてみる?」

「縁談?」



 私に?一体何時から来てるの?


 左手をくるくる回し始めたウアリウスの動きに応えるように外から沢山の紙が部屋に舞い込んだ。全て揃うとソファー前に置かれているテーブルに綺麗に積まれた。

 分厚い辞書三冊分はあるんじゃなかろうか。



「これ全部、君の縁談話」

「全部が!?」

「僕の身内である君を欲する者は多いんだよ?僕という後ろ盾が欲しいのが大半だろうね」



 不老の公爵様として人気で、更に王家からの信頼も篤い。養女でなくても、妻でもない私をウアリウス目当てで求婚してくる人がこんなにも多いだなんて……。



「暇潰しにはなるかもよ?」

「いいよ、私は誰とも結婚しないよ」

「あの五人の中で結婚したい人がいたの?」

「そうじゃなくて」



 揶揄ってる。

 明らか揶揄って楽しんでる。

 結婚、か。

 不意に私の脳裏に過ったのは、ベルベットだ。

 ベルベットは今どうしてるのかな。

 ベルベットだけじゃない、アシェリーやネフィ、ソラも気になる。これを言い出すと全員の生活が気になるのでキリがない。


 ウアリウスの肩に頭を寄せた。



「ちゃんと、幸せになってくれるかな」

「さてね。ただ、君という本来いた筈の者が舞台から降りた。ここから先は彼等次第だ」

「うん」

「まあ、今はアフィーリアの退屈凌ぎをどうにかしよう。揶揄うわけじゃないけど縁談話、一つだけ受けてほしいのがあるんだ」

「どうして?」



 ウアリウスという後ろ盾を欲する人が多くても、ウアリウスがどこかの力を欲するとは思えない。



「ヴィオラ王女の婚約者が一瞬だけ話題に出ただろう?」

「うん」



 王族の分家、宰相家の嫡男。名前はシエロ=エインジェル様。黒髪に青い瞳の冷たい雰囲気が麗しいと評判の令息。まさかと呟くと微笑まれた。



「前々から、ヴィオラ王女の問題行動が多いから婚約を白紙にしたいとエインジェル家は国王に申し立ていたんだ。ただ、溺愛する王女を手元に置いておきたい国王が渋っているらしくてね。そこで僕に協力を求めてきたんだ」

「わ、私との婚約?」

「そう。アフィーリアと彼が恋仲になれば、僕に弱い国王は渋々ヴィオラ王女との婚約を白紙にしてくれるのではないかと」

「私は良いけどシエロ様は……」

「彼も了承済みだ。残るは君だけ」



 知らない内に話が進んでいた事に関して私はとやかく言うつもりはない。私はあくまで居候だし、ウアリウスの役に立てるのなら協力しよう。

 無理はしなくていいと告げるとウアリウスは部屋を出て行った。

 一人になった私はソファーに寝転がった。



「シエロ様、か。挨拶しか交わした事ないけど仲良くなれるかな」と口にして必要ないと思い至った。向こうの目的は王女との穏便な婚約解消。此方は協力するだけ。ウアリウスにしたら、手を貸しても貸さなくてもどちらでもいい案件だったろうが、私がする事がないと嘆いたから提案しただけ。


 夕食になったら、まずは会うのが大事だからとシエロ様に段取りをしてもらおうと決めた。






読んでいただきありがとうございます



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 更新ありがとうございます。 アフィーリアの存在を忘れさせる魔法って、魔界の外は範囲外だったんですね。魔族で、魔界ではなく、人間界にいた者はアフィーリアの存在を覚えているということは・・…
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