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72話 人間界での生活1


大人編開始です(*´∀`)


 魔界の王女が成人を迎えた。

 魔界中の貴族が王女の婚約者にと、自分や自分の息子をと魔王に願った。

 そうフィロメーノ……ウアリウスに聞かされた私は「そっか」としか言えなかった。

 

 

「そうだよねえ……私が去年成人したから、一年経ったらアイリーンだって成人するよね」

「ロゼは全部退けたみたいだけどね」

「それはそうだよ」

 

 

 母様に瓜二つなアイリーンを溺愛する父様がそんじょそこらの相手に嫁がせるわけない。それに、だ。私の知ってる乙女ゲームとはもう違う展開になっているこの世界。アイリーンが誰を選ぶかは分からなくても、幸せを願う私がアフィーリア()としてやれるのは見守ることだけ。

 ……ううん。正確には、見守ることすら無理。

 魔界の王女はアイリーン一人だけ。

 誰も、アイリーンが第二王女だったと覚えている人はいない。

 魔王の瞳と魔力を受け継いだ第一王女がいたと知るのは、本人と一緒に暮らしてるウアリウスだけ。

 

 ――アイリーンの為に、私の為に。

 将来、コーデリア様の亡霊となって大事な妹を傷付けるくらいならと色々行動を起こしたが全部空回りし続けたものの、最後の最後で始祖の魔王ウアリウスの協力もあって魔界から出て行く事に成功したのが十二年前。

 ……但し、魔界を出た代償が魔界中の人々の記憶からの存在抹消。

 これは私自身が願った代償でもある。

 一度家出を決行した際、アイリーンや両親、他にも沢山の人に心配と迷惑をかけた。

 記憶があるまま私がいなくなったら、また同じ悲劇を起こす。なら私を誰も覚えていない方が皆苦しまずに済む。

 

 

「アフィーリア。食事にしよう」

「うん」

 

 

 今は昼。

 人間界でのウアリウスは、驚く事にある国の公爵をしていた。『不老の公爵様』で社交界で大人気で、特に若い御令嬢方や未亡人達からは愛人や正妻にしてほしいと常に求愛されている。

 神秘的な銀の髪と瞳。瞳を覆う睫毛すら銀色。陶器のように白い肌。存在自体が神がかっている彼が魔界で最初に王となった偉大な魔族と知る人間は誰一人いない。私達が魔族だと知られると非常に厄介な事になるので隠して生活している。

 とはいえ、人間界で暮らす悪魔達は大体正体を隠して暮らしている。

 人間でも魔力を持つ人はいるが悪魔と違って全員というわけじゃない。貴族は基本持っているけど、平民だと魔力持ちは珍しく殆ど生まれない。

 最高位の貴族位を賜るだけはあり、屋敷の大きさはとんでもない。

 のんびりとお喋りをしていた私達は一緒に食堂に向かう。

 

 

「今日の昼はなんだろうね」

「さあ。君の好きなコルネットかな」

「今朝食べたばかりよ」

 

 

 食堂に着き、向かい合うように座った。

 すると次々に昼食が運び込まれる。

 クリームパスタとオニオンスープ。どれも大好きな料理。

 並び終えると食事を始めた。

 

 

「食事が終わったら僕とお出かけしようか」

「何処に行くの?」

「買い物をしにね。途中、好きな物を買ってあげるよ」

「好きな物か……何にも浮かばない」

「はは。無理に欲しがらなくてもいい。ゆっくり決めなさい」

「うん」

 

 

 こうして誰かと食事が出来て私は幸福者だ。

 本当なら、一人寂しく生き続けないといけなかったかもしれないのに。

 ウアリウスが公爵なら、私の立ち位置は養女になる筈なんだけど居候という体になってる。一度訊ねると「内緒」と最後尾に効果音が付きそうな上機嫌さで答えられたので以降は聞いてない。

 人間に混ざっての生活は、女子高生の記憶が強い()の影響で緊張もストレスもなかった。大変だったのは、ずっと独り身な彼が突然連れてきた幼女ということで大変注目を浴びた。王族をも上回る魔力量のせいで社交界では、様々な憶測が飛び交った。

 

 

「私って、社交ではどんな風に思われてるのかな」

「急にどうしたの」

「だって、とっても人気じゃない」

「そうだったかな。僕自身がどうでもよく思ってるから」

「この前の夜会で王女様に求愛されたじゃん」

 

 

 ウアリウスに夢中なのは、王女も同じ。王子が二人、王女が三人いるのだけど第一王女が特にウアリウスに好意的で、養女じゃない私は最も彼に近い女ということでかなり敵視されてる。養女じゃないなら、私ってほんとなんだろう。

 

 

「国王にはお断りの旨を伝えてる。僕はアフィーリアのお世話をするのに忙しいから」

「ちっさい子供みたいに言わないでよ」

「はは」

 

 

 でも否定は出来ない。

 人間界に来た当初、何度か泣いて目が覚める夜があった。

 自分で決めて魔界を捨てたのに。

 父様、母様、アイリーンのいない人間界は思っていた以上に私に寂しさを与えた。

 見かねたウアリウスが泣いて眠れない私を抱き上げ、自身の寝室で寝かせてくれた。夜泣きも数年経ったらなくなった。

 ……のだけれど。

 

 

「……ところで、もういい加減一人で寝てもいいよね?」

「どうして」

「私だって年頃の女の子なんだよ?何時までもウアリウスと寝ていられないわ」

 

 

 成人を迎えても一緒に寝たまま。魔界を出たいと意思表示をしてから、ほぼ父様と寝ていたので一応祖父に当たる彼と寝ても恥ずかしさはない。

 むすっと拗ねたように頬を膨らまされた。

 大人の男性がしても全く似合わない――とかない。似合い過ぎている。

  

 

「酷いなあ。僕の毎日の楽しみを奪うなんて」

「一緒に寝るのが?」

「そうだよ。僕に感謝をしているなら、これからも一緒に寝るのは外せない」

「うーん」

 

 

 感謝しているのは本当。衣食住の全部を贅沢に与えられ、更に魔術の修行にも付き合ってくれるウアリウスに敵う日は絶対来ない。断言してもいい。

 

 

「そこまで言うなら……」

「うん。なら、この話は終わり。食事をしよう」

「うん」

 

 

 昼を終えたら買い物。中心街へ繰り出すのだろう。欲しい物は思い浮かばなかったけど、行ったらスイーツが目に入るから一緒に食べられたらいいな。

 

 食事を終えた私達は、簡単に身支度を整え屋敷を出た。瞬間移動(テレポート)で屋敷から中心街の路地に到着。表へ出ると活気の良さに頬が緩んだ。

 街の活気は人々の生活を表す。街が元気なら、住む人々の生活の潤いを意味する。

 多くの店を見ながら、隣に寄り添って歩く。

 

 

「何を買うの?」

「大した物じゃない。頼んでいた本が届いたと連絡が入ったから、取りに行くんだ。店に着いたら、前で待ってて」

「はーい」

 

 

 人間の書く物語に強い興味を抱いているウアリウスの収集した本は、とんでもない広さの公爵邸の中で最大の大きさを誇る部屋に保管されてある。一種の図書館と表現可能。人間に混ざって生活を始めて相当長いらしく、一番古い本で七百年以上前物だった。

 王国で『不老の公爵様』と有名なウアリウス。滞在期間は更に長く、千年以上経過しているとか。また、それだけ長い年月国が存在しているのも驚きだ。

 ウアリウス曰く、この国は天界の頂点に座する神のお気に入りで。度々、祝福を授けているとか。

 私達悪魔には無縁の話だ。天使の力は悪魔にとって猛毒。逆も然り。人間に混じって生活している悪魔が正体がバレないよう生活するのは、天使に見つかるのを防ぐため。人間の生活を気に入ってるのに、みすみす手放したくない。

 

 目的の本屋に到着。先に言われた通り、店内に入ったウアリウスを見届けると私は空を見上げた。

 青空の遥か向こうに存在する魔界。アイリーンはちゃんと幸せになってくれているだろうか。贅沢を言うなら、アイリーンが誰と結ばれ・愛を育んでいく過程を生で見たかった。

 純愛ルートだと尚更良し。愛憎ルートは無理。あれはゲームだから見れるのだって、現実だと悲惨。

 

 

「ウアリウスが戻ったら、アイスクリームでも買ってもらおう」

 

 

 


読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 更新ありがとうございます。(^ー^) アフィーリアは、もう成人なんですね。 ということは、一つ上の、ベルベットはもう成人しているんですね。シルヴァ公爵家の成人した息子だから、もう人間界…
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