51話 ワタシハダレ
――ワタシハダレ……ドウシテワタシハ……ワタシハ…………ワタ………シ…………
思考も、感覚も、何もかもを拒絶した彼女が自分が誰かを覚えている訳がなかった。意味も分からず謎の植物に拘束され、助けてくれると思った男性にはアフィーリアを守ってくれてありがとうと訳の分からない事を言われた。アフィーリアは彼女が眠る前までプレイしていた乙女ゲームのヒロインを執拗なまでに虐め、最後には必ず命を奪おうとする悪役。実の姉でもある。
――ワタシハ……ワタシハ…………
自分が誰か分からない彼女は、今何をされているかももう分からなくなっていた。生気のない黒い瞳が霞む視界を呆然と見上げているだけ。
鮮明に見えれば、終わりも脱出もない永遠の悪夢にまた絶叫を上げるだろう。
――ワタシハ…………ダレ…………
無数の触手に犯される彼女はまた自分が誰か問うた。何百何千問おうと答えの返らない問い。
『お前はあたしよ』
……初めて、明確な声が少女の頭に響いた。何処かで聞いた事のある声。その声が何か初めて思考する気になると、自分が置かれている現状を理解し始め――狂わんばかりの悲鳴を上げた。決して逃げられない永遠の陵辱を思い出してしまった。何時になれば、此処から解放されるのか。解放は即ち“死”を意味する。
死を望む彼女を頭の中の声は言う。
『死ぬ必要はないわ。死ななければならないのは――――』
狂気に取り憑かれた、聞き覚えのある女の声は狂った様に嗤い声を上げたのだった。
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