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37話 本当の意味を知りに行こう

 


『ユーリー!!』



 人の都合も考えず、いつも自分の都合を押し付け、振り回すアフィーリアが大嫌いだった。


 大嫌いで、大嫌いで、……でも大好きだった。


 きっと、ハイネは気付いてない。他が気付いているか知らない。僕は知ってる。


 アフィーリアが迷惑なくらい僕に引っ付いていたのは全部僕を守るためだって。



「アフィーリア……」



 ハイネは父上と同じ瞳の色を持った。それだけで母上に愛されていた。僕は母上に似て生まれた。父上に似ているのは何処にもない。あるとしたら、強すぎる魔力だけ。それも、まだ僕ではコントロール出来ないからと父上が制御したと聞いてる。父上の次の魔王になる為にと、毎日毎日勉強漬けの日々。ハイネはしなくてもいいのに僕だけ。頑張ったら、頑張ったら母上に認めて貰えると思って必死で頑張った。勉強も、魔術も。


 ……それでも、あの人が僕を認める事はなかった。


 たった一つの小さなミスにもヒステリーをあげ、一つ気に食わない行動を取るだけで罵倒と暴力の嵐。頭を庇って踞るだけの自分が酷く惨めだった。



『やめて!ユーリを叩かないで!!』



 一度だけ、テストの点数が99点を取った。満点でも嫌味しか言わない母上は、その日は何かに取り憑かれた様にいつも以上に暴力を振るってきた。僕はいつかこの女に殺されるんじゃないかとさえ思えた。体を縮こまらせて痛みに耐えるしかない僕に飽きたらず暴力を振るう母上の間にアフィーリアが割って入った。



『ユーリは頑張った!毎日毎日頑張ってるの!一度くらい褒めてあげてもいいじゃない!何よ、公爵家の令嬢のくせにけちねっ!!』



 僕がこんな口を利いたら僕はその瞬間殺されるだろう。アフィーリアだから母上も逆上したくても出来なかった。更にそこに父上も来た。アフィーリアは父上と庭園で散歩をしていて、母上の大声が気になってこっちに来て叩かれているだけの僕を庇ったんだ。恐る恐る顔を上げた先には、顔を真っ青にしている母上と無表情の父上がいて。『ユーリ』と僕の顔に手を添えるアフィーリア。温かい……手。治癒魔術を掛けているつもりなのか、アフィーリアの魔力が流れ込んできた。傷が治らないから、あれ?あれ?と焦るアフィーリアの頭に父上の手が乗った。



『アフィ、治癒魔術は習ってないだろう』

『見よう見まねで……』

『退きなさい』

『はい……』



 誰の真似をしようとしてたの……?


 父上に言われた通り、僕から退いたアフィーリアの代わりに父上の手が頬に添えられた。僕をさっきまで叩いてばかりいた母上の手より大きいのに、恐怖を感じない。優しくて、温かいだけ。父上は治癒魔術を扱えるから、今度はちゃんと傷が治っていくのを感じられる。



『コーデリア』

『っ!?』



 不意に名前を呼ばれた母上は酷く怯えた。ああ、そうだ。僕が暴力を振るわれるのはいつもこんな隠れた場所だ。人通りの多い場所で罵倒はされても暴力は一度も振るわれていない。



『ほとほと愛想が尽きるな。お前に母親としての自覚はあるのか?』

『も、勿論よ、だから、成績の悪いユーリを叱ったのよっ、これは躾よ』

『度が過ぎていると言っている。それに、ハイネとユーリの扱いの差に雲泥の差があるとクリスタに何度か苦言を呈されていただろう。いい加減ユーリに対する扱い方を改めろ』



 クリスタ?……ああ、母上と顔はそっくりなのに髪の色や性格が全然違うあの侍女か。魔王を支える五大公爵家の一角、ドラメール公爵家の令嬢の母上に真っ向から意見をぶつけられる滅多にいない侍女、っていうのが僕の印象だ。そういえば、あの人はよく僕の部屋に来ては、母上に叩かれてないか、酷い言葉を浴びせられてないかと聞いてくる。



『あんな出来損ないの妹の言葉を信じると言うの?ロゼは私の婚約者でしょ!?』

『一体何時の話をしている。元々、俺とお前の婚約はお前と父親のドラメール公爵の強行だろう。あの男(・・・)も俺も承諾したと、一度でも言った事があるか?』

『っ、でも、こうして私にユーリとハイネを生ませたじゃないっ』

『シェリーを正妻に迎えても、子を作る問題でお前を愛人として残せと周囲から煩く言われたからだ。……まあ、たった一度抱いたくらいで孕むとは思いもしなかったが』



 そう言うと父上は僕を見下ろした。母上に向けていた、冷たくて無感情の色じゃない、優しくて温かくて愛情に溢れた……ハイネと同じ色の瞳で。


 薄々感じてはいた。父上は、母上に一切興味がないと。僕やハイネに優しくするのは父親だから。常に暴力と罵言を浴びせられる僕と優しくても本物の愛情を向けられていないハイネ。誰からも本当に愛されていない僕達を哀れみを抱いて、優しくしているだけ。……でも、今僕を見下ろすエメラルドグリーンには、哀れみはない。上手に言葉に表現出来ないけど。父上の瞳の感情の名前は…――。



『ユーリもおいでよ』

『え』



 不意にアフィーリアが僕を誘う。何処へ誘われたか分からないから、間抜けな返事しか出来なかった。今度はちゃんと何処へ誘ったか教えてくれた。



『青薔薇園。ユーリも行こうよ!とっても綺麗だよ!』

『でも……僕は……』

『いいじゃない少しくらい!花は何度見ても減らないし、枯れる前に見なきゃ花が可哀想よ』

『可哀想?花が?』

『うん。折角、綺麗に咲いているのを見ないで枯らすのは、花が可哀想。花だって生きているのよ。ほら、行きましょう!』

『うわ!』



 人の了承も聞かず僕の腕を引っ張って庭園への道を走り出したアフィーリア。転びそうになりながらも必死に付いて行った。母上と父上の横を通り過ぎた時、母上の声を聞こえた気がしたけど『早く行こう!ユーリ』アフィーリアの声で消えた。


 この後、母上と父上がどんな会話をしたか知らない。一年経った現在(いま)も――。



「アフィーリア……」



 ――アフィーリアが城から姿を消して二週間が経った。


 城の中は、あの日から殺気と緊張に包まれていた。殺気は魔王である父上。緊張は城に務める騎士や侍女全て。皆、使える術は全部使ってアフィーリアを探してる。探しても、見つからない。魔王の娘と言えど、アフィーリア一人が痕跡もなく姿を消すのは無理だと父上は言っていた。誰かがアフィーリアを誘拐した、それかアフィーリアの脱走に手を貸した。どちらかの線で探っても有力な手掛かりは何一つない。一週間以上前、天使による『悪魔狩り』対策として魔界全土に貼られた結界に炎の波が走った。以前、シェリー様を助けに行った時アフィーリアが高威力の炎の魔術を使用したと聞いたから、最初はアフィーリアの仕業かと疑われたけどすぐに別人だと判定された。ただ、炎の魔術式には術者判明を妨害する術式が組み込まれていた。複雑怪奇なそれを扱えるのは、魔界ではレオンハルト様だけ。レオンハルト様は無実だけど、それが出てしまった以上黙っている訳にもいかず、結界の維持をリエル様に任せ単独調査を開始された。


 ……って、言うのを今朝部屋に来たハイネに教えられた。アフィーリアがいなくなった日から部屋に引き籠ってばかりの僕に気遣って数日に何回か様子を見に来てくれている。毎日じゃないのは申し訳ないから。


 アフィーリアがいなくなる前日。アフィーリアは僕にこう言った。



『あんたなんか嫌いよ』



 息が止まるかと思った。


 世界が止まったかと思った。


 どうして?僕、アフィーリアに嫌われることした?



『コーデリア様そっくり』



 ……そうだよ、誰より母上に似ているのは僕だ。髪の色も瞳の色も魔力の強さも。父上もハイネもアイリーンも綺麗だって誉めてくれたこの色は母上と同じ色。嫌いになりたくても、綺麗だよって誉めてくれるから好きになろうとした。何よりっ……!



『ああ!やっぱり、ユーリ青薔薇が似合うね!』

『や、やめてよ髪に薔薇なんか!女の子じゃないんだからっ』

『どうして?とっても似合うよ?いいなあ、私の髪の色じゃ青薔薇は似合わないもん』

『アフィーリアは父上と同じ髪色なんだよ?似合うに決まってる』

『似合わない!だって、父様が全然似合ってなかった!』

『そりゃあ……父上は男だからだよ。アフィーリアは女の子だから、きっと似合う』

『性別は関係ない。男でも似合う人はいる。ユーリみたいに。ユーリは絶対青薔薇!とっても綺麗だよ!』



 アフィーリアが僕の見た目を一番誉めてくれたから、僕は大嫌いな自分の見た目を好きになろうとした。アフィーリアにもっと好きになってほしくて、誉めてほしくて。僕が母上に暴力を振るわれていると知ってから、毎日の様に引っ付き虫をしたのも全部母上から守る為。周りには、僕を好きなアフィーリアと魔王の娘らしい我儘で傲慢なお姫様に見えただろう。アフィーリアの行動が全部、母上から僕を守る為だと気付くのに時間は掛からなかった。母上に遭遇しても、怒鳴りに来られても、短く嫌味を言うだけでヒステリーも暴力も起きなかったんだ。ただ、アフィーリアがいなくなると溜まったモノ全部を吐き出す様に普段の倍は怒鳴られ、叩かれた。父上が最も愛しているのは、正妻のシェリー様。シェリー様との間に出来た愛娘のアフィーリアに手出しすれば、当然父上の怒りは母上に向く。どんなに僕を怒鳴り付けたくても、暴力を振るいたくてもアフィーリアが僕の側にいる限り出来なかった。



「アフィーリア……」



 あと、アフィーリアは必ず僕に引っ付いてた訳でもなかった。母上の気配を感じると鬱陶しいくらい引っ付いて来るけど、気配を感じない時は側にいるだけで僕が自分の時間を取れる様にと気を配っていた。アイリーンは姉であるアフィーリアが大好きだから、自然とアイリーンが加わるようになった。そういう時、ふと気付いたらアフィーリアの姿がいなくなるのが多々あった。楽しそうに話すアイリーンが心配しないように僕はアフィーリアがいなくなったのを言わなかった。


 半年前、アイリーンに木登りを教えるだとかで木に登ったアフィーリアが誤って足を滑らせて落ちて暫く寝込んでいた。幸い、目覚めても後遺症はないと聞いてほっとした。アフィーリアが眠っている間は、悪魔がこんな事を言うのは可笑しいけど何かの悪魔に憑依されたみたいに更に苛烈さを増した母上の支配下に置かれた。普段は優しいハイネにまでその苛烈さは向いた。ハイネは僕の弟。弟を守らないと、と母上の言い付けは全部守って理不尽な二つの暴力に耐えた。


 段々と自分が何をしているか分からなくなった頃、眠っていたアフィーリアが目覚めたとハイネに聞いた。良かったと思う反面、一目見たい等と言えばあの人がどれだけ怒り狂うかと想像しただけで寒気がした。でも、気分転換は必要だとハイネに連れ出され、アフィーリアの様子を見に行った。


 そこからはあまり思い出したくない。勉強を放ってアフィーリアとアイリーンといた僕とハイネを見つけ、僕にだけ怒る母上の手が振り上がった瞬間体が固まった。そのまま、襲ってくる痛みに耐えようときつく目を閉じたら――勢いのある乾いた音が大きく鳴った。驚いて目を開けたら、僕が受ける筈だった母上の鉄拳を間に割って入ったアフィーリアが受け、吹き飛んで頭を石にぶつけた。



『あ……アフィ……!!』



 どうしよう……!?アフィーリアが……アフィーリアが血を流して……!!


 駆け寄りたかった。駆け寄って、すぐに治癒魔術を掛けたかった。硬直する体は母上に捕まり、理不尽極まりない暴力の嵐。ハイネが泣いて止めても母上の手が止まる事はなかった。このまま、此処で死ぬんじゃないかと思えば、さっきまで僕達とお茶をしていたシェリー様が片付けから戻った。暴力を振るう母上の腕を掴んで止めようとしたシェリー様を払った母上は僕を放った。痛みが強すぎて踞るしかない僕と泣きながら僕の名前を呼ぶハイネ。憎悪に染まった母上の怒声と周囲に集中した魔力。シェリー様が攻撃される。駄目だ、と止めたくても恐怖に染まって動けない。このままではシェリー様が殺される……!――そう恐怖したら、魔界で唯一母上を止められる人が来てくれた。


 父上だ。


 父上は、呼んだレオンハルト様に母上を捕縛させ、怪我をして動けない僕とアフィーリアを治癒術師(ヒーラー)に渡した。高度な治癒魔術を扱える治癒術師によって、力加減を知らない母上から受けた鉄拳の傷は跡形もなく消えた。アフィーリアの治療も終わったけど目を覚まさない。外傷は大したことないけど頭を強打したのが原因だって教えてくれた。暫く様子見となった。



「アフィーリア……っ」



 アフィーリアに会いたい。あの時も、今もそう思う。


 アフィーリアが僕を突然嫌ったのも、母上にそっくりだと言ったのもきっと理由がある筈なんだ。


 つい防衛本能って言うのかな、スラスラとアフィーリアに僕もアフィーリアが嫌いだと言ってしまった。部屋に戻って後悔なんて言葉じゃ足りない位に自分が嫌になった。聞けば良かったのに。どうして、そんな事を言うの?って。


 コンコン


 部屋の扉がノックされる。今は誰とも会いたくないからスルーしよう。クッションに顔を埋めて過ぎ去るのを待っていると。ガタンッ!と無理矢理扉が開かれ、驚いてクッションから顔を上げた。



「いるなら返事くらいしなさいよ!」

「お、叔母様!?」

「誰が叔母さんよ。クリスタお姉様とお呼び」



 叔母さん呼びは間違ってない。母上の妹だから。じゃない!



「どうして……叔母様が生きてるの?」



 ドラメール公爵家は、魔王の娘を傷付けた母上が犯した罪の処罰として一族全員が処刑された。母上にもう会わなくてもいいという安堵と、僕とハイネをぶっきらぼうだけど誰よりも気に掛けてくれた叔母様にもう会えないんだと落ち込んだのに。



「あたし?あたし、丁度その頃長期休暇を取って人間界へバカンスに行ってたの。急に魔界から使者が送られて来て、魔王から話を聞かされた時は驚いたわ。まあ、子供の頃から城で侍女として働いているし、ドラメール公爵家とは縁を切ってたから、あたしだけ処刑は免れたけど。でも、まだ休暇が終わってないのに後始末させられたのよ?人使いが荒いったらない」

「あの」

「まあ、特別ボーナスも貰ったから、あまり文句は言えないけど。で?」

「え」

「あんた、何時までそうやって部屋に籠ってるの?」

「……」

「アフィーリアお嬢様がいなくなって、妹のアイリーンお嬢様は泣いてばっかり。弟のあんたも部屋に籠ってばかり。自分でどうにかしたいと思わないの?」

「思ったってアフィーリアが何処へ行ったかなんてっ」

「知ろうと努力しないくせに我儘言わないの!」

「……」



 叔母様の言う台詞は正しい。仮に居場所を突き止めてもどんな会話をしたら良いのか分からない。


 アフィーリアの本音を知りたい。けど怖い。


 またクッションに顔を埋めた。


 上から溜め息を吐く音が聞こえた。



「アフィーリアお嬢様に会いたい?」



 会いたいよ。会って、話をしたい。


 クッションに顔を埋めたまま頷いた。ら、頭をガシッと掴まれて無理矢理上を向けられた。ごきっと嫌な音が鳴った気がする。



「なら、部屋に籠ってないで外に出なさい」

「で、でもっ」

「ああ、その前にあんた酷い顔ね。洗ってあげる」

「!?」



 そう言うと叔母様は軽々と僕を抱き上げて浴室へ連れて行った。叔母様に洗われるの!?自分で洗えると暴れても「大人しくしてなさい!」と一喝されれば静かにするしかない。叔母様に怒られても恐怖心が芽生えない。この人が怒るのは、悪い事をした時くらいだから。母上みたいに理不尽に怒ったりしない。


 大人しく叔母様に洗われてから一時間後――



「うん。ピカピカの新品になったわねえ」

「嬉しくない……」



 言い方が……。


 だけど、何だろうこの服。


 普段は、魔王の息子に相応しい様にと最高級の生地を使った服を着せられていたのに、今叔母様に着せられたのは庶民が着るような安物の服。何で?と叔母様を見上げた。



「アフィーリアお嬢様と喧嘩したんだって?ハイネに聞いたわ」

「……アフィーリアが」

「言わなくていいわ。理由も聞いた。あたしはあの姉妹とは、殆ど接触しないからよく分からないけど、ちゃんと理由を知りたいと思わない?」

「……」

「第三者のあたしは気になった。だから、こうして危険を冒してまであんたを平民と同じ格好をさせた」

「どういう事?」



 叔母様の言っている言葉が分からず、聞き返すとあっけらかんと答えられた。



「今からアフィーリアに会いに行くわよ」

「!!?」



 え?今、何て……?


 まさか、まさか……!?



「ね、ねえ!アフィーリアがいなくなったのは叔母様が原因?」



 そんな事はないと言って!



「そうよ。東の果てに行きたいって言うから連れて行ったわ」



 …………。


 今、血眼になってアフィーリアを探している父上やセリカ、城の人全員に言ってあげたい。


 誘拐犯、というより、協力者が此処にいます、と。



「……僕に教えたのは何で?」

「あんたがあまりにも酷い顔するからよ。見ていられないわ」

「僕より、アイリーンがっ」

「知ってるわ。でも、あのアイリーンお嬢様までいなくなったら、それこそ魔王が何をしでかすか分かったものじゃないわ。あんたを連れて行くのにもリスクはあるのよ?」

「……」

「アフィーリアお嬢様本人とちゃんと話しなさい。それでも嫌いになるのなら、仕方のない話よ。でも、ちゃんと話さずに嫌ったままなのは駄目。あんた達はまだ後戻り出来るの。あたしと姉と違って」

「え?」

「……何でもない」



 それ以上聞いても教えてくれないだろうとは、叔母様の雰囲気から感じた。アフィーリアと会う……。


 手を差し出した叔母様の手を強く握った。僕と同じ色の瞳を丸くした叔母様は、にっこりと笑むと空間を裂いた。先には、城の外を知らない僕には未知の世界が広がる。一歩、足を踏み入れただけで異世界に飛んだ気分になった。僕の部屋と繋がった空間を閉じ、見るからに人が住んでいそうな場所を見回す。空は雲一つない快晴。初めてだらけの光景に目を奪われていると「え!?」と聞き慣れた相手の驚愕の声。


 もしかして……と見たら。



「な、なな、なんでえ!?」

「どうしたの?フィー。おや……」



 今魔界で探されてるアフィーリアと……誰?見た目がアシェリー……いや、レオンハルト様に似てる。



「……やっぱり。どう見ても末っ子じゃない」

「?」



 叔母様はレオンハルト様に似てる子を知ってるのか、自分の予想が当たって呆れている。固まって動かないアフィーリアの頬をツンツン突くレオンハルト様似の子。


 ……無性に苛つく。


 道のど真ん中で突っ立っているより、別の場所に移動しようとレオンハルト様似の子の提案で高い丘のある場所まで移動した。大きな木の下で落ち着くと気まずそうにアフィーリアが僕を見ていた。隣のレオンハルト様似の子にしがみついているのがすごく苛つく。その子もその子で「大丈夫だよ、フィー」って頭撫でてるのも。大体、フィーってリエル様が呼んでるアフィーリアの愛称じゃないか。


 と、ここでアフィーリアが本名を言う筈がないと思い至る。どこか知らないけど、魔界の姫が家出先で本名を名乗る筈ないか。


「さて」と叔母様がこほんと咳払いをした。







読んでいただきありがとうございました!


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