28話 ???の夢
今回からアフィーリアの家出編が始まります。
「どうして……どうして私じゃないの!!私が……私が先に好きになったのに……!」
……何だろ、この夢。
薄暗い部屋の中で、誰かの悲痛な叫び声が木霊した。常に夜空に君臨する満月も、今は雲に隠れて月明かりも届かない。現実味を帯びないのは、私の脳が夢だと認識しているから。ふわふわとした感覚に陥る中、どうして、どうして、と繰り返し叫ぶその人の足下に違う人がいるのかが見えた。蹲って、薄暗くてよく見えないのに、その人が発した言葉で泣き叫んで怒り狂うのが誰か知ってしまった――。
「ご……なさ……ごめん……なさい……ごめんなさい……姉さま……」
「あんたなんか……あんたさえいなければ、皆私を見てくれたっ!!父様だって……私を……見てくれた……!私から、父様だけじゃなく、ユーリも奪おうとするあんたが悪いのよ!!」
…………。
……。
そっか……分かっちゃった。足下で蹲っているのは、暴力を振るわれて動けなくなったアイリーン。そして……嫉妬に狂い、アイリーンに暴力を振るったのは私……アフィーリア。
私が見ているのは、ゲームの内容なのだろうか。それにしては、やけに鮮明だ。アフィーリアの苦しみが、怒りが、悲しみが私の中に入ってくる。
「あんたなんか……あんたなんか……っ!!」
アフィーリアが魔術で形成された氷の刃をアイリーンに振り翳した。
だめ!
「――……ごめんね……アイリーン……」
「ねえ……さま……!?」
アイリーンに振り翳した刃をアフィーリアは自分の心臓に刺した。こんなのゲームの本編でもなかった。アフィーリアは最後の最後まで自分の罪を認めず、嫉妬と憎しみに囚われ妹を殺す事しか頭になかった。そのせいで、最後は悲惨な死を迎える結末ばかりだった。
「姉さまっ、やだっ、やだ……!血が、止まらない!!」
「…………んと……ごめん…………あい……り……。わが、ままな……おねえちゃ……で……」
……これは、誰のルートなんだろう。それとも、誰のルートでもない。……私の未来のルートなのだろうか。
負の感情に狂って妹を害そうとしたアフィーリアは、自分の手で自分の命を奪った。心の奥底に残っていた妹を大切に想う気持ちが最後の最後で――……アフィーリアを、ただの姉として終わらせたのかもしれない。
姉さま!姉さま!と息絶えたアフィーリアに必死に治癒魔術を施すアイリーンに言ってあげたい。
もう……眠らせてあげて……あなたの姉として……終わらせてあげて……――
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