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3話 父の愛情に戦慄


妻は勿論のこと、娘達も溺愛している魔王様です。

 


 腹違いの異母兄弟のユーリをコーデリア様の鉄拳から守った私は、その代償に吹っ飛ばされた挙げ句今度は二週間も眠る羽目になった。


 目を覚ますと魔界で一番忙しい筈の父様が私を抱いて眠っていた。普段の魔王の威厳たっぷりの服も魔王の証である角もない。ただ、美しい父様の寝顔が至近距離にあるだけ。イケメン大好きな私としては興奮したい所だが状況が全く読めない。何故に父様は私のベッドで寝てる?あの後どうなったの?ユーリとハイネは無事?アイリーンは怖がって泣いてない?コーデリア様に母様は何もされてない?


 聞きたい事は山程あるが寝ている父様を起こすのは申し訳ない。私を抱く腕をそっと離し、ベッドから静かに降りた。窓を見ると空は漆黒に包まれ、常に女王の如く君臨する満月が神秘的な光を発している。月の向こう側に天界がある。本来、魔界と天界の間には強力な結界が張られているのだが、歴代最強と名高い父様には薄い壁と等しく、蹴飛ばしただけで簡単に破れたとか。…その父様よりも更に強い魔力を持つのが未来のユーリである。本来の“アフィーリア”が一方的に愛した人。



「綺麗ね……」



 満月も。そして、未来のユーリやハイネも。


 アイリーンの為に、私の未来安泰の為にも妹をひたすら可愛がり、攻略対象達とは必要以上に接触しないようにしないと。


 満月を一頻り眺めると部屋を出ようとドアノブに手を伸ばした。喉渇いたし、お腹空いた。厨房に行って何か軽くつまめるものでも頼もう。ドアノブを回し、扉を前へ押した時だった。



「何処に行くのかな?可愛い愛娘」

「!!」



 びくっと震えた体を叱咤して後ろへ振り向けば、寝ていた筈の我が父が魔王に相応しい恐ろしくも美しい笑みで私の背後にいた。


 あ……おわた……。


 主人公とその姉の父であり、魔界を統治する魔王ーロゼ=オールドクロック。金貨を溶かした様な細く綺麗な髪に宝石と同等の価値があると言われても過言ではないエメラルドグリーンの瞳の美青年。魔界の住民は、魔力が強ければ強い程容姿が美しくなる。歴代最強と名高い父様の容姿も魔力量に相応して非常に整っている。その父様の迫力溢れる姿に子供の私が勝てる筈もなく。



「あ、えっと、その、喉が渇いたので飲み物を貰いに行こうかと……」

「なら、呼鈴で侍女を呼びつければいい。態々、お前が足を運ぶ必要はあるか?」

「な、何だか長く寝ていた気がするので体を動かしてみたいなと思いまして…」

「今回は、この間よりも更に強く頭を打っている。それに体も。医者が良いというまでは、絶対安静にしなさい」

「あう……あ、アイリーンや母様の様子を……」

「アイリーンもシェリーも普通…とは中々に言いにくいがお前が心配する程でもない」

「……ユーリとハイネの」

「あの二人も問題ない。今は普段通りの生活を送っている」

「……」



 ダメだ…今の父様には、何を言っても部屋から出してもらえなさそう。


 

「おいで」膝を折り、両手を広げた父様の胸へダイブした。拒否権は一切存在しない。薔薇の香水の香りが鼻腔を擽る。父様は私を抱き上げ、ベッドへ戻り、私を横に寝かせた。

 

 

「父様、お仕事は?」

「リエルに押し付けた。今頃、ひいひい言ってるだろうな」

「……」

 

 

 今頃、執務室で必死になって書類仕事を熟しているであろう叔父様に同情した。父様の双子の弟にして、魔王の補佐を務めるのがリエル=オールドクロック。金髪の父様と違い、リエル叔父様の髪は黒。瞳の色は母様よりも濃いサファイアブルー。彼には一人息子がいるが勿論……攻略対象であり、ゲームのアフィーリアを一番惨く殺すのも彼。(一応)全年齢版は全身の皮膚が爛れ落ちる毒薬を飲まされる。PC版はプレイ済の感想をサイトで見て知ったが流石18禁。惨いの一言に尽きる。

 

 孰れ来る彼との接触も気を付けようと頭に入れつつ、私やアイリーン、母様を誰よりも愛してくれる父様に抱き付き、目を閉じた。

 

 

「お休み、アフィーリア」

「はい父様。……あ、最後に一つ」

「何だ」

「コーデリア様は……どうしていらっしゃいますか?」

 

 

 家庭教師との勉強をすっぽかしてまで私のお見舞いに来てくれたユーリとハイネ。ユーリとハイネは双子だから容姿はほぼ同じなのだが、瞳の色だけは決定的に違う。ユーリはコーデリア様と同じ紫水晶の瞳に対し、ハイネは父様と同じエメラルドグリーンの瞳。父様と同じ色を持つハイネを溺愛している彼女は、ユーリだけ厳しく接した。今回だって、ハイネには優しい声を掛けておきながら、ユーリにだけはきつい言葉を浴びさせ、更には暴力まで。私が庇ったから無傷な筈だがあの後の事を知りたい。

 

 遠慮がちに訊ねた私は父様の顔を見て後悔した。

 

 一切感情の無い瞳の奥には、ゆらゆらと憎悪の炎が揺れていた。ふっと優しく微笑み頭を撫でられるも目は笑っていない。

 

 

「どうしているか……さあ、どうしているんだろうな」

「え」

「魔力が強い。それだけで幼い頃から、あの女と婚約をしていた訳だが……一度もあの女に興味を抱いた事がない」

「……」

「シェリーを妻として迎えた時も、リエルや周りの連中が五月蠅いから愛人として残した。あの女を抱いたのも一度だけ。それで双子が生まれたんだ。近い内にどう処分しようかずっと考えていたが、まさか、こんなにも早く実行出来るとはな。それに、良い口実もあった」

 

 

 魔王の娘を傷付けた。それがコーデリアが犯した罪。

 

 

「目障りな古狸も排除した。ドラメール家はもう消滅寸前。今頃、レオンハルトによって全員が餌食になっている最中だろう。なあ、アフィ」

「は、はい」

「お前は可愛い。勿論、アイリーンも。あの子はシェリーの生き写しと言っても過言ではない。だが、お前は俺とシェリーのそれぞれの遺伝子を受け継いでいる。瞳の色は俺に、目元や髪の質はシェリーに。…可愛い可愛い俺の愛娘を傷付けた女をどうして許してやれる?」

「……」

 

 

 ……そういや、攻略対象の一定以上の好感度を上げないと迎える共通のバッドエンドは父親に監禁されるエンド。

 

 本編では、事故で母様は亡くなっている事になっており、元々過保護で親馬鹿な魔王の愛情は暴走を極め、母親似の主人公を監禁してしまうのだ。

 

 事故の詳しい描写は無い。ただ、ユーリルートの際、彼が「奥方が死んだのはおれのせいだ」と言っていたシーンがあったので何かしらの関係はあるんだろう。

 

 ヤンデレな父親って……笑えない。スイッチを間違えれば永遠に自由を奪われそうで怖い。

 

 

「話は終わりでいいか?」

「は、はい……」

「なら、もう眠りなさい」

「はい……お休みなさい」

 

 

 ポンポンと優しく頭を撫でる手は愛情に満ち溢れ温かい。

 

 ギュッと父様に抱き付き、瞼を閉じた。

 

 次に目を覚ましたら、母様やアイリーンに会いに行こう。ユーリやハイネにも。

 

 

 

 


読んでいただきありがとうございました!



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[気になる点] 飲み物飲めなくて可哀想。
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