表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/112

25話 先代魔王の娘の罠

 



 令嬢集団を伴い、険しい表情でノワール家の元へやって来たコルク様は、先程の会話が耳に届いていたのか、レオンハルト様に食ってかかった。



「ノワール公爵。今のお話、聞き捨てなりません。シャロンは、我が侯爵家の三女。そして、彼女には既に婚約者がいます」

「ほう。どこの家の者かな?」

「北の辺境伯令息フェムト=ボル=ボーラ殿です」



 ねえ、と私はユーリの袖を引っ張った。



「あの令嬢集団に、コルク様が魅了(チャーム)を使ってるみたいなんだけど、魔力の低い人が自分より高い人に魅了って効果あるの?アシェリーは有り得ないって言ってたけど」

「若しくは、魅了に細工をしてるんじゃないか?例えば、強力な付加(エンチャント)をしてるとか」

「付加か」



 だとしたら、強制辺りだろうか。付加は、高度な技術のいる魔術だ。元からある物に、別の効果を付ける付加には、繊細な魔力操作が必要となってくる。……ん?もしかして……。


 ユーリも同じ思いなのか、顔を青くさせて震えているシャロン様とコルク様を見比べていた。



「ふむ。北の辺境伯からは、我輩が説明しておこう。令息の話は聞かんが、ボーラ殿はくそじ……先代と深い交流があるので、話を通せば理解してくれるさ。それにだ、無償でシャロン嬢を寄越せと言っているのではない。シャロン嬢を我がノワール家の養女とする代わりに、貴殿等の見返りを聞こう」



 あの人絶対、先代公爵をくそじじいと呼ぼうとしたねよ?途中で、言い直したけど。シャロン様を養女に貰う見返りにナサニエル侯爵家が何を望むのか。唇を噛み締め、何も言えないコルク様。侯爵本人なら、レオンハルト団長の言う見返りを要求する権利はあるが、彼は只の令息。発言権はない。また、騒ぎを聞き付けたエドヴィージェ様が長女と次女を連れて現れた。



「私の開く茶会で何を騒ぎを起こすとは何事ですかコルク」

「お、お母様……!申し訳ありません。ですが、ノワール公爵がシャロンを……」

「事情を聞かせなさい」



 人の目が集中しているのは、主にコルク様が令嬢集団を付属してるからだと思う。息子から訳を聞いたエドヴィージェ様は、一歩前に出て、後ろで青くなってるシャロン様を睥睨するなりレオンハルト団長に口を開いた。



「話は聞かせて頂きました。シャロンは、我がナサニエル侯爵家の娘です。例え、公爵と言えど、軽々と養子になど出せませんわ。それに、何故シャロンを養子として欲するのでしょうか?」

「シャロン嬢は、魔力濃度(デンシティ)と魔力操作(コントロール)において、素晴らしい才能を秘めている。知っての通り、魔術を扱うには、魔力が多ければいいという話ではない」



 魔力要容量(キャパシティ)が多ければ、魔力消費の多い魔術も扱える。


 魔力濃度が高ければ、例え初歩的な魔術であっても、魔術の威力が上がる。


 更に、多種多様な魔力をより多く扱うには、繊細な魔力操作が必要になってくる。


 植物を魔術で育てるのは、実はとても難しい作業。広面積で咲かせようと思うのなら、それ相応の魔力容量が必要になり。美しく、凛とした花を咲かせるには魔力濃度の高さが重要になる。最後に、その二つを維持するのには、絶妙な加減で魔力を注ぐ操作が必要になる。手間と時間と人を選ぶ作業だが、メリットもある。土から育てる普通の花と違い、魔術で育てられた花弁には魔力が宿る。術者の力量次第で、花弁は回復薬の素材や魔力供給にもなる。



「我がノワール家は、数多くの優秀な魔術師を輩出してきた家柄。無論、中には養子として迎えられた者もいる。此方がシャロン嬢を求める代わりに、其方の要求は呑むつもりだ。どの様な要求にも、お答えしんぜよう。如何かな、侯爵夫人」

「……」



 羽毛扇子で口元を隠したエドヴィージェ様は、探るような瞳でレオンハルト団長を直視した。すると、瞳を細め了承の意を告げた。



「承知致しました。詳しい話は、旦那様を交えて、また後日という事で宜しいでしょうか?」

「構わない」

「ありがとうございます」



 優雅にお辞儀をすると、周囲の人達にお騒がせしましたと謝罪回りに行った。一人、まだ納得していなそうな人がいるが、母親の呼び掛けでこの場を離れて行った。


 ……シャロン様を強く睨み付けて。


 顔を真っ青を通り越して、真っ白にしたシャロン様が心配になって駆け寄ろうとしたら――どさりと、誰かが倒れた。音のした方へ振り返ると、招待客の貴族の女性が倒れていた。夫と思しき人が女性に呼び掛けているが、全く反応がない。


 しかし――。


 一人の女性が倒れたのを皮切りに、次々に倒れる人が続出。異常事態の発生に会場にいる人々が混乱し始めるも、その人達も漏れなく倒れていった。



「な、なに!?」



 父様!と見上げたら、父様が苦しそうに頭を押さえて膝をついた。続いて、私の隣にいたユーリも倒れた。ユーリだけじゃない。ソラも、ハイネも、ネフィも、アシェリーも……。それぞれの夫人方も一緒に倒れていた。辛うじて意識を保っているのは、父様とレオンハルト団長に、アリス宰相。あれ?リエル叔父様の姿がない。何処行ったあの人?


 平然と立っているのは、私とシャロン様。それに、エドヴィージェ様とその他子供達。


 只事ではない状況の中、会場内を見回したエドヴィージェ様は、普通に立ってる私を見て顔を歪めた。



「あらぁ、貴方には効かないのねぇ。天界の姫君の血は、こんな所で邪魔をするのね」

「……皆に、何をしたんですか」

「そう怖い顔をしないの。安心しなさい、眠っているだけよ。時間が経てば起きるわ。まあ――」



 その前に“処理”をするけど。


 さっきまでとは打って変わって、下卑た笑みを浮かべるエドヴィージェ様に吐き気がした。



「……“冥夢の秘薬”か、一体、何処で手に入れたっ」



 苦しげに疑問を紡ぐレオンハルト団長にその表情のまま教えた。



「ふふ。私は元と言えど魔王の娘よ?私に手に入れられない物はないわ。それは、人も同じ。さあ子供達、選別しなさい」



 答えになっていない言葉を発し、シャロン様を除いた子供達が動き始めた。長女のシャノン様と次女のシャラン様が倒れている男性を見ていき、コルク様は何故かこっちに歩いて来る。



「やっぱり、地位があって強い人がいいわぁ!あたしはノワール公爵にする!」

「当然よ。男は地位と力がある人じゃなきゃ、価値がないわ。わたくしは宰相様!とても綺麗なんですもの」



 な、なに?なんなのこれ?


 シャノン様とシャラン様は、辛うじて意識を保っているであろうレオンハルト団長とアリス宰相が良いとか言って抱き付いた。格上の身分の人に対して、あまりにも失礼だ。二人とも、嫌悪感剥き出しの面持ちをしていても、薬のせいで振り払う事が出来ない。すると、父様が私を背に隠した。



「アフィっ、アフィは平気なのかっ?」

「わ、私は何とも!それより、父様が……」

「してやられた……っ、アフィ、“冥夢の秘薬”を使われれば、こっちも回復に時間がかかる……」



 父様の言わんとする事が分かった。


 “早く逃げろ”――と。



「っ……」



 時間が経てば、父様達は回復して反撃が可能。娘達に触れられ、抵抗したくても自由が効かないレオンハルト団長とアリス宰相を――何より、こんな苦しそうな父様を置いて一人逃げられない。逃げたくない。



「お母様、私は王女殿下でよろしいですよね?」

「好きにしなさい。悪魔と天使のハーフなんて汚らしい王女一人消えても、誰も気にも留めないわ」



 父様の背に隠された私の腕をコルク様が掴んだ。



「さあ、此方へアフィーリア王女。陛下達を無力化した今、貴方を守る者は誰もいない」



 地の力は無駄に強いみたいで、踏ん張っても父様の後ろから引き摺りだされた。父様の伸ばした手と私の伸ばした手が触れそうになるも、より早く歩かれたせいで届かなかった。このままじゃ……。……あ、そうだ。



「なんだ!?」

「どうしたのです、コルク」



 あの誘拐事件の際、熾天使(セラフィム)の聖なる光を防ぐためセリカが足下を重力で固定していた。私やソラ、アシェリーもセリカに倣い同じ事をした。今の私の体は重力によって固定され、決してこの場を動かない。動かせない。コルク様がどんなに頑張っても重力を解かない限り不可能。



「このっ、どうして動かない!?」

「重力操作を使ってるからです。以前、私の侍女がこれを使っていたのを思い出したので」

「ホワイト伯爵家の三女ね……。あの女に気付かれたら、『騎士団』に駆け付けられるわ。いいわ、アフィーリア王女殿下の相手はアレにさせるわ」



 いらっしゃい――


 エドヴィージェ様が混沌とする会場に招き入れた相手に強烈な吐き気と恐怖心を抱いた。



「な……なに……あれ……」

「っ、エドヴィージェ様、貴方まさかっ」



 アリス宰相が苦しげにエドヴィージェ様を非難した。

 私達の視線の先にあるモノ、それは――。





読んでいただきありがとうございました!

次回はまたR15要素が強くなるかと思われます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ