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2話 銀髪の双生児


攻略対象の内の双子の兄弟の登場です。


彼等の母親と魔王のお話をちらっとだけ。




 


 ゲームの攻略対象の内の二人。


 ユーリ=アルル=オールドクロック

 ハイネ=リース=オールドクロック


 魔界の魔王ーロゼの婚約者だった女性ーコーデリア=ドラメール公爵令嬢の子。天界で一目惚れしたシェリーを連れ帰り正妻にした事によって婚約者との婚約は解消。だが、彼女は幼い頃からロゼだけを愛し続けた。後半月で婚約者から妻になる筈だったのが、急に別の女性を連れ帰った挙げ句正妻にすると宣言。コーデリアは泣いてすがるも、元々ロゼはコーデリアに1ミリの興味も持っていなかった。ただ、魔力が高い。それだけで婚約者にされたに過ぎない。真に愛する人を見つけたロゼのエメラルドグリーンの瞳がコーデリアを映す事はなかった。


 それでも諦めきれなかったコーデリアは、父であるドラメール公爵の力を借り、魔王は正妻を手に入れても世継ぎの問題で愛人を囲う義務があると強制。シェリー以外もう興味がないロゼがそれに納得したのは、古くからの友人や双子の弟の説得もあったから。


 暫くして、愛人であるコーデリアが妊娠。それも双子の男児。男児を妊娠した事に歓喜するも、愛する男性は、先に生まれた初めての娘に夢中だった。髪の毛は夫婦揃って金髪な為どちらに似たとか無いが瞳の色は父親と同じエメラルドグリーン。目元は母親似。互いの愛する相手の要素を確りと受け継いだ娘が愛しくて仕方なかった。


 また暫くしてコーデリアも無事出産を終えた。先に生まれた男の子は、青みがかった銀髪にコーデリアと同じ紫水晶の瞳。後に生まれた弟は、コーデリアと同じ一切混じり気のない銀髪にロゼと同じエメラルドグリーンの瞳。彼と同じ瞳の色をした息子。コーデリアは兄よりも、弟の誕生を喜んだ。


 出産から一週間後。報せを聞いたロゼが一応姿を見せた。



『ああ……!魔王様……!』

『生まれたそうだな。……ほう、これはまた』



 魔王はそのエメラルドグリーンの瞳を細くした。生まれながらに強大な魔力を持って生まれた双子。しかも、コーデリアと同じ瞳の子の魔力は桁違いだ。


 魔王は世襲制ではない。魔王になる絶対的条件はたった一つ。


 強い魔力の持ち主。この一点のみ。


 一年前生まれたロゼの愛娘も父親譲りの強大な魔力を持って生まれた。が、この子はそれ以上の魔力を身に宿している。……歴代最強と呼ばれるロゼでさえ、軽く凌駕する程の。


 ベビーベッドに寝かされている赤子に近付いた。紫水晶の瞳が知らない人間の姿を映した。きょとんという表情から、笑顔に変わった。嬉しそうに手を伸ばしてきた赤子のとても小さな手をそっと掴んだ。



『……』



 声にもならない言葉を一頻り呟くと赤子の手を離した。もう用はないとばかりに踵を返したロゼにコーデリアはもう一人の赤子を見せた。



『魔王様……!この子を見て!貴方と同じ瞳の色をしているの!』



 言われた通り、確かにコーデリアが抱いている赤子は父親と同じ瞳の色をしている。


 しかし――



『それがどうした』

『どう……した……とは……』

『何故その子を抱いて、もう一人の子は抱いてやらない?それに…随分と居心地が悪そうだな』



 泣きはしないが顔が今にも泣き出す寸前。呆然とするコーデリアからその子を奪うと兄弟がいるベビーベッドに寝かせた。すると、母親に抱かれて嫌そうな顔をしていた子は、隣に兄弟がいるのを確認出来るととても嬉しそうに声を出した。固まったままのコーデリアには目もくれず、控えていた侍女に命じた。



『直ぐに乳母を用意しろ』

『はい。畏まりました』

『この子等の名前は?』

『それが……』



 侍女は言いにくそうに口ごもった。無理もない。生まれて一週間経つと言うのに、母親であるコーデリアはまだ彼等に名前を付けていなかった。呆れの溜め息を吐き、明日双子の名前を決めると言い残し部屋を出て行った。残されたコーデリアは、ロゼと似た子を生んでも彼の愛情が1ミリでも自分に向かない事を今になって直面させられたのだった。


 ――翌日、双子の名前が決まった。


 兄がユーリ=アルル=オールドクロック。弟がハイネ=リース=オールドクロック。ミドルネームにはそれぞれ、深慮の女神、叡知の天使から取って名付けられた。更に正妻との間に第二子が誕生した。姉よりも魔力は低いが愛しい妻と同じサフィアブルーの瞳の可愛らしい女の子。





 ――それが未来のヒロインにして、極悪非道の姉ーアフィーリアの妹ーアイリーンである。






 ○●○●○●○●○●



 私は最早、乾いた笑みしか浮かべられない。


 だってだよ……?



「はい、姉さまあーん」

「あ、あーん……」



 可愛い妹の可愛いあーんをしてもらい、お姉ちゃん大変幸せであります。……そして、ユーリの視線が痛い。無茶苦茶痛い。そうだよね、好きな女の子のあーんってすごく憧れるよね。ハイネが肘でユーリを小突くと何やら耳打ち。ふんふんと頷くユーリが母様特製のシフォンケーキをフォークに刺した。



「アフィーリア、はい」

「え……?」



 私?え?アイリーンじゃなくて?



「食べないの?」

「う、ううん!食べるよ!」



 何で私にあーんしてるの?そこはアイリーンじゃないの?え?なんで?


 頭に大量の疑問符を飛ばしながらもユーリにあーんしてもらったシフォンケーキを食べた。うん、同じ物だから味も一緒だし美味しさも一緒だ。母様の作るデザートはどれも美味しい。果汁100%のリンゴジュースを飲んだ。シフォンケーキとリンゴジュースの相性が良いったらない。母様は優雅に紅茶を飲んで子供達のお茶会を美しい笑みで見守られている。



「もー!私が姉さまにあーんしてたのに!真似しないでよユーリ!」

「何をしようと僕の勝手だろ。ほらアフィーリア」



 またシフォンケーキをフォークに刺して私に差し出したユーリ。すると、負けじとアイリーンもユーリと同じ様に私にシフォンケーキを差し出した。お姉ちゃんホントどうしたらいいのこれ。二人からあーんしてもらうとまるで競い合うかのように二人のあーんは続く。……私の口、リスみたいに一杯になってます。ハイネも笑ってるだけじゃなく助けてよ!母様も「仲良しね~」って呑気にしてる場合じゃないですっ!


 ユーリとアイリーンのあーん攻撃も二人のシフォンケーキがなくなった事によってやっと終わった。小さな子供の体なので満腹過ぎてお腹が若干苦しい。私の分のシフォンケーキはいつの間にかハイネに食べられていた。助かった。母様がお片付けをしている間、私達は庭園にあるベンチに座っていた。



「美味しかったねー姉さま!今度チョコレートケーキが食べたいと言ってもいいかな」

「母様ならきっと作ってくれるわ。にしても、二人はどうしてここに?」

「メイドがアフィーリアが目を覚ましたと言っていたから、様子を見に来たんだ」

「で、部屋に行ったらいなかったからしらみ潰しに探してたの」



 愛人の子と言われる二人だが母親が魔王を支える国の重鎮たるドラメール公爵の娘の為表立っての陰口はない。


 子供らしく仲良く会話を続けてふと疑問に思う。私はこのまま彼等と仲良しなのが良いのでは?


 だって、ゲームのアフィーリアが破滅するのは片想いしていたユーリの好きな人が実の妹だったから。他のルートでも、ユーリはアイリーンの事が好きなのに当の本人が他の男を好きになってユーリの心を踏みにじったとかそんなん。ってことはだよ、アイリーンと仲良し姉妹、攻略対象達とも程よい距離を保って仲良くしていたら……私の老後は安泰ではないだろうか。


 うん。細かいは部分は部屋に戻ってから。取り敢えず、この作戦で行こう。一人納得した私の耳に甲高い女性の声が入った。



「ユーリ!!ハイネ!!何をしているの!!!」



 声のした方に振り向くとそこには、純銀の髪に紫水晶のつり目がちなきつめの顔の女性が思いきり表情を歪ませていた。ユーリにそっくりな女性は双子の母親。国の重鎮ドラメール公爵の娘コーデリアだった。ゲーム本編では既に故人だった彼女が今目の前にいるのが不思議でならない。因みに、ユーリとハイネはこの母親に決して消えない心の傷を負わされている。突然の母親の登場にハイネは顔を真っ青に染め、ユーリはそんな弟を庇う様にベンチから降りた。



「申し訳ありません。母上。アフィーリアのお見舞いをしておりました。すぐに戻ります」

「言い訳はいらないわ!今日この時間は家庭教師の先生と八時間みっちりお勉強と言ったでしょう!どうしてそれを守らないの!?」

「……ご、ごめんさない母上。僕がアフィーリアのお見舞いに行こうって兄上に言って、」

「貴方は良いのよハイネ。悪いのは弟に悪影響を齎してばかりのこの出来損ないよ……!!!」

「っ……」



 振り上がった手にハイネが小さく悲鳴を上げ、ユーリがぎゅっと唇を噛んだ。私の体は震えるアイリーンを離し、理不尽に暴力を奮われようとしているユーリを助ける為動き出した。コーデリア様の振り下ろされた手が私の頬に直撃した。勢いよく響き渡る乾いた音と長い爪が災いしてか赤い滴が飛んだ。悲鳴を上げるアイリーンの声、ハイネとユーリの絶叫、吹っ飛ばされ頭に衝撃を食らった私。



「姉さまあ!姉さまあ……!!」

「あ、ああ……っ……あ…ふぃ……!!」

「あ……アフィーリア……!!!」



 三者の声を聞いて私の意識は途切れた。


 だから、この後の出来事を今度は二週間眠る羽目になった私は知らない。



 





今回も読んでいただきありがとうございます!

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