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9話 嘘も程々に


魔王を更に怒らせてしまったアフィーリアです

 

 父様の逆鱗に触れた代償として完全監視生活を強制された私は、三か月目にしてやっと父様の機嫌が直ったので監視生活から解放された。ずっと父様の部屋で寝泊まりしていたから、自分の部屋が新鮮に感じられた。お気に入りのベッドにダイブした。毎日欠かさず掃除洗濯をされたお陰で柔軟剤の良い香りが鼻孔を擽る。今日のはダマスクローズの香りね。庭園に咲き誇る薔薇は父様が好きな花だから色んな種類の薔薇が魔界には咲いている。特に、父様が好きなのがダマスクローズ。女王様の薔薇と名高いだけあって、貴族の婦人方には大人気だとか。

 

 一緒に部屋に戻ったセリカにお嬢様と呼ばれた。

 

 

「本日のご予定は?」

「うーんとね、今日は錬金術の練習をしようと思うの」

「……理由をお聞かせください」

「この間の自給自足作戦は失敗したからね。また地面を掘ってるのを見られたら、父様の逆鱗に触れて今度は一年コースかもしれない。だから今回は錬金術にする。例え自給自足が出来なくても……」

「――出来なくても、何だ?」

 

 

 ……あ、あれ?き、聞こえちゃいけない人の声が……

 

 セリカも同じ思いなのか、ぎぎぎと効果音が付きそうな固さで振り返ると。

 

 

「ま、魔王陛下……!」

「と、とと、父様……!?」

 

 

 何でえええええ!?

 

 何時ぞやの時と同じく冷や汗をダラダラと流す私に構わず、セリカを押し退け部屋に入った父様はベッドに腰掛けて私を膝に乗せた。

 

 

「アフィーリア。お前は本当に可愛いよ。丸で、魔界に連れて来た時のシェリーを見てるようだよ。……逃げれば逃げるだけ捕まえたくなる」

「……」

 

 

 …攻略対象の対策を考える前に父様の対策を考えないといけなくない?これって、共通バッドエンドフラグ?私の末路は死亡じゃなく監禁?母様生きてるのに?父様監禁ルートはアイリーンじゃなかった?

 

 私と同じエメラルドグリーンの瞳に一切の感情が無いのが怖い。頭を撫でる手は優しいのに……。

 

 

「父様は……私に何か御用があって……ですか?」

「あぁ。けど、止めだ。どうも、俺の娘は全然反省していないようだからな。ユーリとハイネに任せるとする」

「……」

 

 

 ……本格的に頭にキてるねこれ。やばい、どうしよう、父様の機嫌を直す良策を誰か知りませんか!?

 

 

「父様は……私がお城から出るのは嫌ですか?」

「お前だけじゃない。アイリーンもシェリーも。誰一人として城から出すつもりはない」

「でも、私は色んな場所へ行きたいです!お城の中だけじゃなく、外も!」

「外の世界が気になるのは分かった。ただ、それがどうして人間界になる?魔界すら知らないお前が何故人間界に拘る?」

「あ、う……」

 

 

 尤もな疑問にぐうの音も出ない。だって、人間界に魔界の住民は殆ど住んでない。いたとしても、彼等は人間社会に溶け込んでいるので余程の事態が起きない限り魔法は使わない。人間界永住計画は保険。私がアイリーンを大事にしても、彼等と一定の距離を保っても何が起こるか分からない。断罪イベントって言ったっけあれ。全てのルートに於いて死亡エンドしかない私には、これしかないの。


 本当の話が出来ないなら、今の状況を打破する嘘を言わなければ。父様の服に顔を押し付けて抱きついても、可愛い娘アピールしても喜んではくれるが態度は懐柔されない。


 なので、最終手段として人間界に拘る嘘の理由を父様に告げた。



「父様、私ももう6歳になったのです」

「たかが6歳だろ」

「うぐ……」



 負けるな私!



「そ、その、確かにそうかもしれませんが私だって、もう立派…とは言い難いですが父様の娘として成長しております」

「木から落ちて頭を打って数日眠っていたのにか?」

「うぅっ……それでも、人間界に行きたいのです!私は人間界に住みたいのです!――将来を共にする伴侶は人間が良いのです!」

「「!!?」」



 私が考えた嘘を言い放った瞬間、父様の顔は衝撃に固まった。ちらっと見えるセリカも固まった。段々青くなっていくのは何故か。人間界に拘る理由が死亡エンドルート回避の為、なんて口が裂けても言えない。言っても頭の可笑しな子扱いか、娘溺愛な父様が聞いたら凡百人達を皆殺しにしそうで怖い。


 父様?と私が声を掛けても戻ってこない。つんと指で突いたら後ろに倒れてしまった。……ベッドの上で良かった。……取り敢えず、状況を打破したのでセリカに小さく親指を立てるとぶんぶん首を振られた。



「とんでもない…お嬢はとんでもない事を言ってしまわれましてよ!?」

「父様を説得するにはもうこれしか」

「例え嘘でも、一番言ってはならない嘘です。……暫く、魔界が荒れますね」

「?」



魔界が荒れる?


 どういう意味?と口を開こうとしたら、ひょっこりとリエル叔父様が顔を出した。で、ベッドで倒れている父様に吃驚して駆け寄った。



「ちょ、どうしたのロゼ?フィーちゃんとんでもない事言っちゃった?」

「リエル叔父様もセリカと同じ事言うのね」

「……言っちゃったんだね。何を言ったの?」



 セリカから、さっき私が父様に言った台詞を聞くと若干顔を青ざめたリエル叔父様が私の頬をむにっと掴んだ。



「君はもう……困ったさんにも限度があるよ。やれやれ、君は僕達が思う以上にシェリーちゃんに似ちゃったんだね」

「父様もさっき言ってました」

「だろうねえ。それがロゼにしたら嬉しいのだろうけど……容量オーバーしたら変な方向に走って何をやらかすか知れない。フィーちゃんが外に興味を持つのは、君が好奇心に溢れる子供だからだ。部屋に閉じ籠もってばかりかは良いよ?元気な証拠だ。でもね、外は君が思っている以上に魅力的で危険なの。ロゼがこうなった以上、もう暫く大人しくしてなさい」

「ええ!?」

「ええ、じゃないの。困ったちゃん」



 鼻頭を強く押され父様の上に倒された。三ヶ月のあの生活は何だったの!?


 起き上がろうとしたら、腰に誰かの腕が回り身動きが取れなくなた。誰かとは、勿論――父様である。


 意識が戻った父様は私を拘束したまま上半身を起こし、顔を見られたくないのか胸に押し付けられた。



「リエル……レオンハルトを呼べ。セリカ、アリスに伝えろ。牢にいる奴等全員を二日後公開処刑にすると。それを処刑を待ち侘びている貴族連中に通達しろと」

「は、はい。畏まりました」

「あー、でもレオンハルトは今日家族孝行するとかで城にはいないよ。多分、ノワール公爵邸にいるんじゃないのかな」

「我輩いるよお」



 状況がよく読めない私には今一事態が飲み込めないがリエル叔父様やセリカの緊張した声色、父様の一切感情のない声色だけで、父様が怒り狂っているのが伝わる。そこへ、普段通りの空気を読まない間延びした声が室内に発生された。



「今日は城には来ないって言ってなかった?」

「セフィリアの相手もアシェリーの相手も充分した。特にセフィリアは、最近我輩がアシェリーの相手しかしないから拗ねておったようでな。放置してた我輩も悪いが子供に嫉妬する母親が何処にいるとお説教をしてきた。当分はまた放置しても大丈夫だから城へ戻った」

「君みたいなのをお気に入り認定した彼女の自業自得だけど、君ももう少し優しくしてあげなよ?淫魔の一族のお姫様でしょ、彼女」

「なあに。心配には及ばん。セフィリアも我輩の性分を理解した上で嫁に来たんだ。一応、最初はお断りしたよ?それでも淫魔から見て、我輩は極上のご馳走に見えたのだとか。本人が言ってた。それにだリエル。我輩はちゃんと大事にしている。セフィリアもアシェリーも。でなければ、家族孝行等しないよお」

「はーいはい。僕もティナとソラを大事にしてますよー」

「で、我輩を呼んだのは?魔王陛下」



 妻と息子が大事で可愛い話に花を咲かせていたレオンハルト団長が漸く父様に話を振った。だが、彼が私と父様の様子を見て状況を読んだのが一瞬で分かった。成る程と漏らしたレオンハルト団長は「すぐに手配しよう」と告げた。



「さあて、誰を使おうかな」

「誰でもいい。……セリカ」

「はい」

「アフィーリアを俺の部屋へ連れて行け。一切出させるな」

「は、はい」



 またあの監禁生活に逆戻り!?


 こうなったら逃げるしかないと決意する。も、ジタバタ暴れても父様の力に敵う筈もなく挙げ句アフィーリアと強い口調で呼ばれてしまい、ビクッと体が震えた。


 こ、怖い……


 瞳に涙が溜まるのが分かる。下を向いたら雫が落ちそうだから、涙目で見上げた。



「良い子にしていろ」

「あ……」



 前髪を掻き分け、額にキスを落とした。キス一つで父様に抱いた恐怖が霧散していく。その代わり、溢れんばかりの愛情がキスを通して伝わる。強く抱き締めるとベッドから立ち上がり、セリカに私を渡した。



「では、お嬢様。行きましょう」

「うん……」

「後で遊び相手を送っておこう。ロゼもそれで我慢しろよ」

「……分かった」



 一人でいるのは退屈だろうと気を回してくれたレオンハルト団長に小さく手を振って、セリカに抱かれたまま部屋を出た。


 なので、この後父様達がどんな会話をしていたかは知らない。




 ――セリカに抱かれたまま、魔王の私室へと来た。魔王の部屋の扉って無駄に豪華だ。私の部屋の扉の五倍は豪華だ。重そうな扉を片手でセリカが開くと中には既に先客がいた。



「あ、やっぱりアフィーリアだあ。ビックリしたよお、薔薇園にいたらいきなり魔法で此処に飛ばされたもん」

「でも、ここ父上の部屋だよ?なんで僕とアシェリーを」

「ハイネがぼくと遊んでたからじゃないかなあ。ねえ、また魔王を怒らせて逆戻りになったんでしょ?」

「うぐ、分かる?」

「分かるよお。侍女さんに抱っこされてる時点で」

「今度は何したの?相談位は乗るよ?」



 優しいハイネにニコニコと無邪気に笑うアシェリー。ハイネはどうも、アシェリーといたから巻き込まれたみたい。セリカに降ろしてもらった私は父様を怒らせた理由を二人に話した。


 そして、呆れられた。



「う~ん、いくらなんでもお馬鹿過ぎない?」

「アフィーリア。気持ちは分かるけどもっと上手く立ち回ろうよ。父様もそれじゃあ怒るよ。今回はこの前よりもっと長くなるって覚悟した方がいいね」

「……ですよねえ」





読んでいただきありがとうございました!

攻略対象をどうにかする前に、父親をどうにかしないといけないアフィーリアでした。

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