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06 チュートリアル2

GW中にあげるといった用語集は序章が終わるタイミングであげようかなっと思います。


「しずく頼む、幸はあんまり攻撃しないように」

「了解」

「はーい」


 最高戦力ではないにしても、普通に強い装備できている藍たちは、やろうと思えば一分とかからずに片付けることもできただろう。

 しかし今回はあくまでも試験的な戦闘、いろいろと調べたいのだ。


「フラッシュターゲット!」


ヘイトより強い効果を持つ「フラッシュターゲット」ですべてのヘイモスはしずくに注意を向ける。

しずくも、どのヘイモスが攻撃してきても対応できるように、盾を二つ前方に構える。


「まずは数を減らそう、さっきのやつで」

「了解」

「そんじゃ、攻撃は幸が」

「はーい」


 作戦が決まったところで幸が前に出る。


 遊撃を行う幸の主な戦闘スタイルは、すばやい動きで戦場を駆け回り、特殊攻撃をしかけ、相手のペースを乱したり、仲間を支援したりするものだ。

 そのため、強い一撃を当てるというより、手数で勝負する形である。

 それでも、いかなる状況にも対応できるようになるためには、重い一撃も必要であり、その手段もいくつか持っていた。

 ただやはり、今回は敵が強すぎず弱すぎずで、練習にはもってこいの条件であった。

 ということで、とにかく多くの技を使って戦闘することにした。


 まずは目標のヘイモスに向かうため、地面を蹴り進む。

 しずくとほぼ並んだところで壁の方に向かってジャンプし、三角飛びの要領でしずくを飛び越え、ヘイモスに向かっていく。

 注意している相手の後ろからいきなり飛び出てきた幸に、ヘイモスは反応が追いつかない。

 そこに、体をひねるように飛んだ幸がいつの間にか一本抜いていた背中の刀で切りつける。


「グガハァァゥゥ!」


スキルの使用されていない一撃はヘイモスに刺さるが、痛がる様子を示しながら後ろを振り向くも、すぐに視線をしずくに戻す。

 先ほどしずくが使用したヘイト系スキルがまだ効いているのだ。


(軽い、確かな手ごたえがあった。でも、岩のように硬い皮膚を持つヘイモスにしては軽すぎる。体も練習していたとき以上に軽く感じる。これがレベル95の身体能力か。)


しずくが敵を引き寄せている間に、初めての戦闘の感触を確かめる。

 幸たちは何日か前に、体を動かす試験を行っている。

 そのときに感じた点として、体が軽く、動きやすいというのがあった。

 地面を蹴って、身長が180cm弱のしずくを軽々と超え、そのまま壁を蹴って180cm強のヘイモスを切りながらその後ろまで移動することは、難しいところではない。

 少し前の幸たちでは想像もできなかっただろう。


「次はスキルを」

「そのまま倒しちゃっていいぞ」

「おっけー!」


 そういうと幸はもう片方の刀も抜き、二刀流スタイルでしずくと交戦をはじめたヘイモスに向かう。

 一歩踏み出すとそれだけで距離を半分近く詰め、そこから体をひねりながら飛び跳ね、ヘイモスの背中に回転切りを食らわせると、ヘイモスの正面に着地した。

 痛みからか、声を上げるヘイモスに向き合い、スキルを使用する。


「グァァァアァァアー」


次の瞬間には、幸はヘイモスの後方に移動しており、藍のバフもかかった攻撃を受けたヘイモスのHPは0になる。


(HPが0になった。どうなる)


 2体のヘイモスを対応しているしずくに魔法でダメージ吸収と防御力増加のバフを掛けながら、藍はHPが0になったヘイモスに注目する。

 そして、幸やしずく、DCDの二人もまた、それに注目していた。


 ゲーム時代では、HPが0になった生物は徐々に透明になってから消えていた。

 それが今ではどうなるのか。

 

「消えない」

「そうですね」


 ヘイモスの体は透明になることは無く、その場にとどまり続けていた。

 するとこれを見たもっとも距離が近い幸は突っついてみることに


(つんつん)

「えい!」


 刀でつんつん突いてみるも、ペチッっと叩いても、ヘイモスの体は動かず、消える気配も無い。

 そして、一分当たり経過したところで、ある異変に藍は気がつく。


「あ、幸、そのヘイモスのステータス見れる?」

「え?ああ。ん?」

「見れない?」

「うん」


 先ほどまで表示されていたヘイモスのステータスUIが消えているのだ。

 どうやっても見ることができない。

 それに対して、藍、そしてDCDの二人もある同じ推測にたどり着く。


 ヘイモスは死んだ。

 HPが0になったヘイモス、強いては、生物は本来の生物ではなくなり、ステータスを持たなくなった。

 だからUIが現れない。

 つまり、ヘイモスという存在ですらなくなっている可能性がある。


「幸、そのヘイモスを横によけてくれない?」

「おっけー避ける」


 体が消えない以上、そのまま置いておくと今後の戦闘の邪魔になる可能性があった。

 そのため、避けさせるように指示したが、もし今後この仕様がすべてにおいて適応されていったら、ゲームだったときよりも戦闘がかなり難しいことになる。

 数で押してくるタイプの敵では、どんどん動き辛くなってしまう。

 その点に対しての対策も講じる必要が出てくる。


 その一方で、体が残っているということは、それを解体したり、成分の分析をしたりすることができる。

 さらに言えば、これまでゲームだったときと違う素材の入手の方法になる。

 得られるものも多いだろう。


「ここら辺でいい?」

「ああ、助かる。さて、では残った二体で一回り遊んでいきますか」


 体は残るということで、なるべく傷をつけないように一体、そして残り一体はいろんなパターンで攻撃し、たまには回復もすることで、初めての戦闘ではかなり多くの収穫を得ることになった。

 その戦闘も終わり、再び静かになった洞窟内で藍たちは残った3体のヘイモスのご遺体をどうするか、話し合っていた。


 結論としては、近くの拠点から台車などを持ってきてもらって、それで運ぶということになった。


「ひとまず台車が到着するまで待機かな?」

「そうだねー」


 今洞窟内には藍としずくが残っていた。

 台車をとりに行くのにDCD二人と随伴として幸が外に向かった。

 洞窟内からでも連絡が取れるよう、無線を持ってはいたのだが、どの道一度戻りたかったということで、二手に分かれたのだ。


「はじめての戦い、どうだった?」

「んー、なんか変な感じ」

「というと?」

「自分の体じゃないような、そんな感じがした」

「確かに、結構勝手が違ったように思う。それもいずれはなれるだろうな。」

「そうだな」


つい1ヶ月前まで高校生をやっていた二人にとって、今日の出来事は非日常そのものだった。

しかし、これからはこの非日常が日常になるかもしれない。

そう考えるといろいろと先が不安になる。

その不安を打ち消すわけではないが、藍としずくは今日の戦闘についていろんなことを振り返った。


 そして特に何事も無く、二十分程度で台車の音が聞こえてきた。



「さて、これで問題ありませんね。ひとまずこれで拠点に持ち帰りますが、探索はどうしますか?」


 ヘイモスの積み込みを終わり、一度戻るかの提案を受け、藍たちは少し考える。

 探索量としてはまだ少し物足りない。

 しかし、疲労度としてはそれなりにたまっている可能性はある。

 大事をとって今日はこのまま切り上げるか、それとももう少し進むか。

 どっちにしようかと悩んでいた藍だったが、幸の放つ言葉によって、選択肢は一つに縛られた。


「ボスがいる」

「なに?」

「中ボス級、銀冠。巡回系のボスだと思う」

「藍、どうする」

「……幸、ちょっと見てきて」

「はいよ」


 そういって幸はボスがいる方向へ向かい走り出す。

 残ったメンバーは結果に合わせて動くことにしたが、第一候補は討伐だった。


 しばらくすると幸は驚いたような顔をして帰ってきた。


「どうだった?」

「見間違いじゃない。キングゴールドガチポンがいた」

「なにー!」


 キングゴールドガチポンとは所謂ボーナスエネミーである、ガチポンのほぼ最上級のモンスターだ。

 倒すなり、特定条件を達成するなりすると、高級素材やゲーム通貨であるゴールドなどを大量にドロップする大当たりエネミー。

 めったに会えない。


「どうする」

「そりゃー、やるっしょ」


藍は新井に向かって、いいよね、と無言で訪ねると、新井はご自由にと返答した。

これにより、初めての探索でいきなり大物と戦うことになったが、藍の目は今日で一番輝いていたように見えた。

もちろんこの場にいるすべての人が期待に胸を膨らませていた。


「さて、はじめましょうか。絶対に逃がすなよ!」


藍のその言葉で、後に大きな影響を及ぼすことになるきっかけとなる戦闘は始まったのだった。


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