手は全力で抜いた
「「「おうヒロシ!お前一体何をしやがった!?」」」
勇者でした。
本当のことを言っても理解できないだろうし、どうしたもんか。
「え?一体、何のことなんだ…?」
「てめぇ!お前が何やったか一番分かんだろうが!」
「白を切るつもりしてんじゃねぇだろうなぁ!」
「おかげで殺せなかったじゃねぇか!」
しらばっくれてみたらこの反応である。
おいおいこの勇者ども、異世界に来て頭沸いたのか?一応そこそこの偏差値あるはずなんだけどな。
どうしたもんかと内心悩んでいたところで、騎士さんが来た。
「勇者様方、国王陛下より至急闘技場に来るように仰せつかっております。」
騎士さんはそれだけ言って去っていった。
「けっ、命拾いしたな!」
「あの騎士さんに感謝することだな!」
「あのやろう!おかげで殺せなかったじゃねぇか!」
おい最後の奴。ただ俺のこと殺したいだけだろ。
本当に異世界に来てから頭沸いたんじゃねぇかな。だとしたら可哀そうになってきたぞ。
まぁ、どうせ国王の気まぐれだろうなとは思いながらも、闘技場に足を運んだ。
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夏休み明けの校長の話のような隊形でならばされた俺達は、長ったらしい国王の話を闘技場でされた。
どうやら、長ったらしいので要略すると、勇者のお披露目式をするために、勇者たちでトーナメント戦をするとのことだった。もちろん一般人はいる。
そろそろいじめられるのも飽きてきたし、もうこの辺で適当に図に乗っている勇者どもを叩きのめしておこう。
そんでもって、第一試合。
俺と、下から二番目に弱い奴との戦いが始まった。こいつも、俺と同じくいじめられている。
二番目に弱い奴と言っても平均で3万程度はある。
性別は男、身長は170センチ、剣よりも魔法のほうが使いやすいらしく、ローブを来て木の杖を持っている。
そして、その男の顔はニヤついていた。
「おぉ、最弱のヒロシ君。どちらが弱いかはっきりさせないか?」
「俺の事を最弱と言っておいてそれは無いだろ。」
「っはは。それもそうだね。…僕の事を恨まないでくれよ?ほとんど自動的に国王陛下に選ばれた組み合わせなんだから。」
「あぁ、そうだな。…そろそろ始めてくれ!」
適当に目の前の男に返して、実況席にいる奴に叫んだ。
「どうやら準備が整ったみたいですね!それでは第一試合始めぇ!」
その宣言がされると共に、闘技場内は歓声に包まれる。
さて、どうやって目の前の男を倒そうか。とか悩んでいると、声を掛けてきた。
「僕は魔法を使うから、できれば君も魔法を使ってくれないか?」
その眼は、「魔法が使えたらの話だけどね?」という意味が感じ取れた。
…その余裕を叩き潰してやんよ。
「分かった。『ファイヤーボール』」
そう言って、魔法を発動させる。
俺の目の前に、直径30センチ程度の大きさの赤い火の玉が出てくる。
…まだ終わりじゃない。
その火の玉に魔力を注いでいき、気付けば火の色は青く、大きさは直径は3メートルにもなっていた。
俺の事を知らない観客は、「流石勇者だ!」「あんなの初めて見た!」と息巻いていたが、俺を知っている勇者やら国王共は、皆唖然としていた。
もちろん目の前にいる男も同様だ。
「なぁなぁ、降参してくれないか?どっちが弱いかはっきりしただろ?」
俺は、目の前の男に笑いかける。
だが男は、俺の火の玉を信じようとはしない。
「嘘だ!そんなのでたらめだ!お、おい!僕だってそれくらいできるんだぞ!」
とかのたまったので、同じ「ファイヤボール」を20個追加した。
すると、目の前の男は気絶した。
俺はファイヤーボールを消す。
「しょ、勝者は!今立っている、ヒロシ様です!」
実況、ナイス判断。
観客の大歓声を背にしながら、闘技場の舞台を降りた。
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控室では勇者どもになんか「不正だ!」とか証拠も無いのにぐちぐち言ってきたので、「文句あるなら戦って俺に勝ってからな?」とか言って黙らせた。
その時の勇者どもの顔ときたら悔しそうで悔しそうで、面白かった。
あとの試合は適当に力押しで勝った。
そしたら気付けば決勝戦じゃないか。
その相手は、俺の事を殺しにきた良治だった。
そんな良治との一騎打ちが、今始まる!とか、思ってたんだ。
「…おいおい、なんでお前ら全員いんの?」
舞台に上がったら、俺対他の転生者という構図が出来上がっていた。
「当たり前だ!最弱のお前が、ここまで勝ち残れる筈が無い!きっとお前は不正したんだ!」
良治は、皆の先頭になってそう叫ぶ。
「あのなぁ良治、だからってみんなでやればいいってもんじゃ無いだろ。」
「黙れ卑怯者!」
「人数多いそっちの方が卑怯だと思うんだが?」
「うるさいうるさいうるさいうるさい!卑怯なのは不正したお前のほうだ!」
「「「「「「「「「そうだそうだ!」」」」」」」」」」
…あぁ面倒くせぇ。