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落ちてきたのは神様  作者:
立ち込める暗雲
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立ち込める暗雲6


蒼空様の為に、俺は天界に登った。

そこで知った事実に目を見開いた。

きっと、蒼空様は傷つけられてしまう。

もちろん外傷的なものじゃない。

その点は心配していない。

俺の今の主が目を光らせてる以上、蒼空様に危害が加わる事なんて絶対にありえないのだ。

人間界、いや・・・天界の住人全てが蒼空様の守護を破る事なんて出来ない。

これだけは確信がある。


そして、もし危害が加わるようなことがあれば、それはその人物の死を意味すると言っても過言じゃない。

それほどまでに、蒼空様は偉大な力に加護されてる。

俺が心配してるのは心の傷。

蒼空様をここ数年間、姿を現さずに影となり守り続けてきた。

姿を現す必要もなかったし、そうするべきではないと判断していたから。

ロキ様が、蒼空様に近づきやむなく姿を現したのは不可抗力だ。

蒼空様には気づかれずに、見守り続けるはずだった。

俺の主人もそれを望んでいた。

緊急事態の今回は、これと言ってバツも受けなかったが、俺の主は今回の事態にも御立腹だと言うのは見て取れる。

蒼空様はお心優しく強い方に成長された。

そして、今まで危害を与えようとする輩は蒼空様の周りや蒼空様自身が跳ね除けてきた。

でも、今回はそう上手く事が運びそうにない。

きっと、蒼空様は心に深い傷を負ってしまう。

母親が過労死して孤独の中に身を置く事になった蒼空様。


友達が傍にいる時は明るくそんな素振りも見せなかったが、蒼空様はいつも独りの寂しさを味わってきた。

自室で何度も涙を流していた事を、俺は知ってる。

そんな蒼空様を、孤独から救い出したのは皮肉な事にロキ様。

女ったらしで、貞操なしで、俺様で、自由奔放な悪戯の神ロキ様。

酷い言いようだ?  いやいや、こんなの序の口だ。


ホント、非道で自分勝手で我儘な男なんだよ、あの男は。

と、ま、悪態をつかずにはいられないロキ様の話は置いといて。


あんな貞操なしでも、蒼空様の心を孤独から救い出したのは間違いない。

だって、今の幸せそうな蒼空様の笑顔をみれば分かる。

独りで寂しいと泣いていた蒼空様を、確かに救い出してくれた。


俺の主も相手がロキ様って所が、かなり不本意らしいけどね。

もちろん、初めのうちはロキ様を蒼空様から引き離そうと画策したみたいだけどね。

それでも、あんな蒼空様を見たらロキ様と引き離すなんて事が出来なくなってしまったらしい。

ロキ様と出会って、蒼空様は本当の笑顔を取り戻した。

そしてまた、ロキ様も本当の笑顔を取り戻した。

あ、しつこいけど、あの貞操なしがね?

ホント、あの貞操なしが蒼空様の一途になってるんだから驚きだ。

神と人間、逢いまみえる事が無い存在同士。

それでも、強い絆で惹かれあった2人。

1人身の俺は少し妬けちゃうな。

ロキ様より、ずっとずっと前から蒼空様の傍に居たのにさ。

後からきて掻っ攫われるのはなんだか腑に落ちない。

ま、俺の場合恋愛感情って言うよりは兄弟愛? 家族愛? 的な感じなんだけどね。

それにしても事態が面倒な事になってきた。

アテーナー様とロキ様の父親ファールバウティ様が結託したとなれば、嫌な予感しなしない。

きっと蒼空様の心が傷つけられてしまう。

だって、今の蒼空様からロキ様を引き離すと言う事はそう言う事なんだ。

蒼空様を再び孤独に陥れ、心を闇で覆ってしまう。

なんとしても、阻止しなくては。

俺は再び空へと飛び上がり、天界の主の元へ急いだ。


羽を羽ばたかせて勢いよく飛び続ける。

とにかく、俺の主に報告しなければ。

ロキ様なんかの為じゃない。

大切な蒼空様の為に。

主に召喚されてるからじゃない。

俺自身が俺の判断で、心から蒼空様を守りしたと思うんだ。

俺は大空を天界を目指して突き進んだ。




「・・・と言う事態です。***様。どうしましょう」

俺は跪いて事態の報告をする。

俺の何倍もある大きな体、たわわに蓄えられた白い髭。

そして、誰よりも威厳のある出で立ち。


「・・・」

主の為に設えられた白い椅子に威風堂々と座る俺の主は、難しい顔をしたまま目を瞑った。


「・・・」

怒りを含んだ沈黙に、俺も言葉を発する事が出来ずにただ主の言葉を待った。

この人の怒りは世界の怒り。

俺の小さな体は小さく震える。

怖いとかじゃない、本能が身の危険を察知するんだ。

人払いした部屋には、主と俺だけ。

俺の心臓は激しく脈打つ。

主の静かな怒りが部屋を支配する。

自分に向けた怒りじゃないと分かっていても、肌にピリピリと感じる微かな痛み。


「・・・奴らの動向をしっかりと探れ」

唸るような低い声にピクッと肩が震えた。


「はい、かしこまりました」

胸に片手を当ててウヤウヤしく頭を下げる。


「少しでも、蒼空に危害を及ぼすようであればすぐに連絡しろ。我が直々に罰を下す」

怒り心頭した声は今すぐにでも暴発してしまいそうだと思った。


「それは・・・」

本当に罰を与えるつもりなんだろうか。

だってアテーナー様は・・・。

戸惑った瞳で主を見れば、俺の心を見透かした様な言葉が降ってきた。


「アテーナーは我が娘。しかし、それ以上に蒼空を守らねばならぬ。あの子を幸せにせねば、あやつに会す顔がないでの」

そう言った主の瞳は、切なげに遠くを見つめていた。

そこに居るはずのない人物に思いをはせてる事は容易に感じ取れた。


「分かりました。蒼空様を全力でお守りいたします。ロキ様と共に」

「あぁ、あの貞操なしにも伝えてくれ。『命をかけて蒼空を守れ』と。もちろん、我の名は伏せたままでな。もしもの時は命がないとも言い伝えよ」

冷たい笑みを讃える主。

あ~あ、ロキ様、大変な人に目をつけられてますよ。

俺は苦笑いを浮かべた。





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