空から落ちてきた8
変質者と部屋に二人きりとか・・・この状況なんなの・・・マジでヤバいよ、ヤバいよ。
なんだか、出○哲朗になった気分。
「俺を変質者を見るような目で見んな。俺の美貌を目にして、そんな態度取ったのはてめぇぐれぇだぞ?」
ロキは上半身を起こすとはらりと落ちた掛け布団。
逆三角の筋肉質な上半身が現れた。
はぁ? どうして、裸なのよぉ~。
やっぱ変態じゃん。
人のベッドでなにしてんのよ。
しかも目のやり場に困るじゃない。
「へ・・・変質者でしょ?ああ・・・頭のイカれた変態が目の前に居る」
動揺を押さえながら言葉を紡ぐ。
「ホントに酷でぇな。頭のイカれた変態ってなんだよ」
ケケケと笑った男は色っぽく前髪をかきあげた。
無駄に色っぽいってなんなの。
でも無理無理、変態なんて無理。
「変態、変態うるせぇ」
「・・・」
うぉ、動揺のあまり口に出てたみたい。
慌てて口を両手で塞ぐ。
「遅せぇよ・・・やっぱ面白れぇ女」
そう言ったロキは、一瞬で目の前に立ち塞がった。
「はっ?」
驚きすぎてポカンと見上げてしまう。
だって、結構な距離あったのに、いつ動いたかも分からないぐらいだったのに・・・。
言葉にするなら、テレポートって感じ。
? を頭に浮かべたまま、目の前のロキを見上げる。
「これが力。ほら、よく見てろよ」
そう言うと手をベランダのドアに向けた。
ロキが軽く横に手をスライドさせると、不思議な事にドアがひとりでに開いた。
ヤダ・・・これなに?
いやいや、偶然よ、偶然、自分を無理矢理納得させる。
「これだけじゃ信じねぇか?じゃあ、これなら信じるだろ?」
ロキはそう言うと、私を抱き上げる。
所謂、お嬢様抱っこと言うやつで・・・。
「ヤダー離せ、降ろせ」
叫びながらジタバタ暴れてみる。
叫び暴れる私を軽々と抱き抱えたまま、ベランダに出るロキ。
最上階の部屋だけに、ベランダだって無駄に広いんだけど。
洗濯を干す以外では殆ど利用しない。
・・・ベランダの説明なんてしてる場合じゃないわ。
ロキはどんどんと歩いて、ベランダの柵までやってきた。
「降ろして降ろしてこの変態、ヤダヤダヤダー」
叫び続けてやる。
「うるせぇよ」
そう言うとロキが、顔を近付ける。
ヤバい、き・・・キスされる。
そう分かった時には、至近距離にロキの顔。
暖かくて柔らかい唇が、私の唇を塞いでた。
「ん・・・んん、やめ・・・」
抗議しようと開いた唇の隙間から、ヌルッと入り込む異物。
「・・・っんん・・・」
私の舌を絡め取り、深い深いキスになる。
「やぁ・・・っ・・・」
何度も角度を変えて、振り注ぐキスの嵐に、体が痺れたように動かなくなる。
呼吸も出来ずに頭がぼーっとし始めた頃、離れて行った唇。
熱くなる体の芯。
・・・ヤダ・・・何これ?
戸惑いを隠せずに、潤んだ瞳のままロキを見上げた。
「な、何するのよ」
出来る限りの虚勢を張ってロキを睨み付ける。
「俺のキス、良かっただろ? そんなエロい目で文句言っても怖くねぇ」
余裕たっぷりにやりと口角をあげるロキ。
私は乱れた呼吸を整えようと、必死に深呼吸を繰り返す。
・・・なんなの、なんなの? こいつ。
私のファーストキスも、セカンドキスも、こんな変質者なんてやだ。
「もしかして、初めてだったか・・・ククク」
「・・・そうよ、なのに、なんなのよ。あんたみたいな奴に奪われるなんて」
悔しさに下唇を噛む。
キスもその先も、好きな人としたくて大切にしてきたのに。
「泣くなよ。悪かった」
ロキは眉を下げてそう言うと、私の目尻に口づけて流れ出た涙を掬い取る。