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落ちてきたのは神様  作者:
パンドラの箱
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パンドラの箱19


「何すんのよ、痛いじゃない」

俺の殺気に臆する事なく睨みつけてくるのは、蒼空。


「・・・・なに肩抱かれてんの?」

自分でびっくりするぐらい低い声が出た。

蒼空が体をビクッと揺らしたけど、離す気はねぇ。


「はっ? おまえに関係ねぇよな?」

衣弦は威嚇するように俺を見る。

蒼空を庇うようにして。

それが俺をさらに苛立たせた。

周りはそんな俺達を、興味津々で見てやがる。

でも、今はそんな事関係ねぇ。

蒼空を間に挟むように、俺と衣弦は睨み合う。

そう言えば、普段からこいつは俺に敵意むき出しだよな。


「肩と腕が痛いんだけど、喧嘩なら2人でやってくれない」

俺と衣弦は蒼空に振り払われた。


「どっちも、力入り過ぎて痛いのよ、まったくもう」

無茶苦茶怒ってやがる。

ちょっと不味い事になったか。

こいつのマジ怒りは不味い。

そう思ったのは衣弦も同じだったようで、顔が困惑していた。


「姫・・・」

「蒼空・・・」

衣弦と2人、蒼空の名前を呼んだ。

それなのに、蒼空は瑠衣の奴の背中に隠れやがった。


「そうそう2人は2人でやっちゃって。姫ちゃんはこっちに退避ねぇ」

ダメだ、今度は瑠衣にイラつく。

俺、どうなってんだよ。

蒼空も瑠衣の背中で安心したように笑ってんな。


「てめぇも余計な事すんな」

怒りの矛先を瑠衣に向ける。


「なんなの? ロキ。一体何がしたいのよ。本当に意味わかんないし。私の友達を威嚇するの止めてくれない」

瑠衣を庇うように立ちはだかる蒼空が、俺の怒りを煽る。

だからどうしてだよ。


「・・・チッ」

「舌打ちしても、知らないし」

蒼空の言葉が胸に刺さる。

俺にだけどうしてそんなに冷たいんだよ。


「・・・」

もっと俺の気持ちを考えてくれ。

・・・俺の気持ちって・・・なんだよ?

このモヤモヤした気持ちは何なんだ。


「お前は、どうして、こいつにベタベタ触らせてんだよ」

少しの沈黙の後に俺が言ったこの言葉に、蒼空は固まった。

でもすぐに溜息と共に吐き出された言葉は、俺の胸を締め付けた。


「はぁ? 自分はチャラチャラ女の子に囲まれてる癖に、人の行動にいちいちケチをつけないでくれる。それに、私はロキの所有物じゃないわ」

そう言われてしまえば・・・そうだ。

俺は・・・俺は、どうすれば。


「こいつらが俺から離れたら、お前が側に居てくれんのか?」

俺は周りを取り囲む女達を指さした。


「はい?」

そんな間抜けな言葉が聞こえた。

必死で絞り出した俺に、その間抜けな顔と声ってねぇだろ。

間抜けな顔をしてたのは蒼空だけじゃねぇけどな。

蒼空の傍に居た衣弦達も同じような顔してやがった。

もちろん女達も、『イヤー』とか『キャー』とか小さい悲鳴を漏らしていたが、この際そんなは構ってられねぇ。

蒼空だ、目の前にいる蒼空をなんとかしねぇと。

このまま離したらダメだ、そんな気がしていた。


「おいマヌケな顔してねぇで、答えろ」

俺の精一杯の告白を聞き流すつもりか、こいつは!


「ロキは私達と一緒に居たいの?」

返ってきたのは、なんともな抜けな返事で。

俺は落胆しながらも、言葉を吐き出した。

鈍感蒼空ちゃんだもんな?


「違げぇよ、蒼空と一緒に居てぇんだ」

チッ・・・ちょっと恥ずかしくなったじゃねぇか。


「熱あるんだね?」

そう言いながら俺の額に手を当てた蒼空。


「・・・熱なんてねぇよ。」

蒼空が鈍感すぎて、悲しくなった。

衣弦は意味が分かったみてぇで、難しい顔になった。

いや、衣弦だけじゃなくこの場に居た奴らには伝わったのに、蒼空だけはまだな抜けな事を言い始める。


「いやいや・・・だったら、食あたりかな。とにかく、保健室に行こうね」

そう言いながらやけに焦って、俺の手を引いて歩き始めた。

誰もそんな蒼空に何も言えなかった。

俺もただ、その手に引かれて歩く事しかできなかった。

こいつはこんな奴だ。

落ち着いて話すしかねぇな。



蒼空と向かった保健室では、保健婦が純情そうな男を連れ込んで最中だった。

キレ気味の蒼空に追い出された保健婦は明らかに蒼空に、憎悪を向けていたから、俺は去り際の女に釘を刺してやった。

蒼空に手を出す奴は、どんな奴だろうと許さない。

蒼空と話してても、遠回しだと何も気づいてもらえねぇ。

疲れ切った俺の頭に浮かんだ言葉。

『蒼空が好き』そんな簡単な事に、俺は今まで気づけてなかった。

このドキドキの訳も全て道理が通る。

自覚した俺はそれを伝えた迷わず伝えた。


蒼空の手を俺の胸に当てて、


「お前が傍に居ると、いつもこんなになっちまう」

なぁ、分かってくれよ。


「ロキ・・・?」

蒼空の瞳が揺れた。


「お前もこんな風になって欲しい」

俺の願いを伝える。

頼むから、その思いを込めて。


「・・・もう、なってる」

その言葉に目を見開いた。

まさか・・・嘘だろ?


「えっ?」

今度は俺が間抜けな顔をする番だった。


「ドキドキしてるよ」

そう言うと、俺の手を自分の胸に押し当てる。

ば・・・ばか、やべぇだろ、別の物が反応しちまう。

焦りながらも蒼空の胸に触れて、ドキドキと脈打つ熱を感じた。

嬉しさに胸が一杯になる。


「ふっ・・・一緒だな」

そんな簡単な言葉しか出てこねぇ俺は、ボキャブラリーが無さすぎだ。




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