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落ちてきたのは神様  作者:
パンドラの箱
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パンドラの箱14


悲しげな表情を浮かべたまま身支度を整える武田の姿をぼんやり見据える。

名前も顔も覚えてられてなかったなんて、ショックなんだろうな。


武田雅タケダミヤビ24歳。

この春に赴任してきた保健婦。

明る目の焦げ茶色の髪、豊満な胸、整った顔。

スタイルも抜群で、男子生徒のマドンナ的存在らしい。

まぁ、私に言わせれば男の子の前だけ態度を変える馬鹿女だけどね。

気に入った男子生徒に媚びを売るような視線を向ける事で有名な女。

だから、女子生徒からは嫌われてる。

服装を整え終わった武田は、ロキの側に歩み寄って来た。

 

「か・・・神野君・・・ねぇ信じて」

上目遣いでロキを見上げる。

何を信じるのよ? 馬鹿馬鹿しい。


「・・・」

ロキは冷たい視線を降ろす。


「こ・・・こんな子より私の方が、貴方を満足させられるわ。貴方も調子に乗って肩なんて抱かれてないでよ」

今だにロキに肩を抱かれてた私を、ギロッと睨みつけた。

あ・・・忘れてたわ。


「巻き込まれるのは、勘弁」

肩に乗ったロキの手を払いのける。


「チッ」

今、舌打ちしたわね、ロキ。

キッと、隣のロキを睨みあげる。


「あんたの事情に私を巻き込むな」

「はいはい、悪かったよ」

ロキはニカッと笑って私の頭をワシャワシャと撫でた。

珍しく謝ったじゃん、ロキ・・・。


「神野君・・・」

あっ、保健婦の存在忘れてた。


「うぜぇ寄んな。さっさと出てけよ」

凍り付きそうなロキの声。


「・・・ひぃぃ」

ロキの腕に伸ばしかけた手を引っ込めて青ざめる武田。

しかも、ロキ・・・背中に何か黒いモノ背負ってんじゃん。


「な・・・何よ。この女のせいね」

私を指差すな。

そして、敵意剥き出しにすんな。


「はぁ? 意味不明。ロキに振られたからって、私に敵意向けんな」

武田を睨みつける。


「・・・ほ、本当の事でしょ」

「ウザい、マジでウザい。私はロキの従姉妹なだけだし。あんたに敵意向けられるのはお門違い。それに、生徒に手を出すってどう言う事、あんた社会的地位無くしたいの? このまま職員室に行ってもいいんだけど。どうしたい?」

一気にまくし立ててやった。

私に敵意なんて向けるからよ。

普通に出ていけば関わるつもりなんて無かったのに。

私に喧嘩売ってくるなんて、お門違いなのよ。


「・・・」

ワナワナと唇を震わせて、私を睨みつけ続ける武田。

綺麗な顔がだいなしね?


「生徒に本気になって嫉妬に狂うなんて、ほんと馬鹿みたい。自分の立場わきまえれば?」


「な、なんなのよ、貴女」

「ここの一生徒だけど何か? さぁ、どうします。今すぐここから出て行くか。私に喧嘩を売りつづけるか。もちろん、その場合は覚悟してください。容赦しませんよ」

言い終わった後に、ニコッと笑ってみせる。


「で・・・出ていけばいいんでしょ。ほんとムカつく子ね。そのうち痛い目に合うわよ」

さっきより、勢いの無くなった武田。


「褒め言葉をありがとうございます、武田先生」

「・・・なっ、ほんっと生意気。覚えてなさいよ」

武田が負け犬の遠吠えを吐く。


「おい蒼空に、何かしてみろ、お前に地獄を見せてやるからな。よく、覚えておけ」

ロキが般若のような顔で武田を睨みつけていた。

空間がギシッと歪んだような感覚に襲われる。

自分に向けられた殺意じゃないのに、息が詰まりそうになった。


「・・・」

武田は一気に血の気の失くなった顔をしたまま、慌てて保健室を飛び出して行った。

うん、その気持ち分かる。

今、空気震撼したよね?

私も鳥肌たったし。

これが、神様の力?


保健婦が去って行ったドアを見て、溜息をついた。

これもそれも、この隣の馬鹿野郎の責任だ。


「ロキ、あんたも手を出す相手を考えなさいよね。ほっんとに貞操なさすぎるわ。この間言った事分かってんの?」

ロキを睨みつける。


「・・・」

無言はやめろって。

そんなロキの姿にも苛立つ。


なんか胸がモヤモヤの苛々の・・・とにかく怒りレベルが上がっていく。


「そこに座りなさいよ」

丸椅子を指さす。

ロキは私の剣幕に、言われるままにそれに腰を降ろした。


情事の後がありありと分かるベッドが視界に入って、さらに怒りレベルを跳ね上がった。

乱暴にそこのカーテンを引くと、私は再びロキに視線を向ける。

さっき見た光景がロキの顔と重なった。

ロキも、ここであの保健婦と・・・。

胸の奥がギシッと傷んだ事を気のせいだと自分に言い聞かせる。


私は・・・何とも思わない。

私は・・・何とも思ってない。

それはもう呪文のように。


「あんたがどこで何をしようと、私には関係ないけど。毎回巻き込まれるんだから、相手を選んでよね。分かってんの?」

仁王立ちして、椅子に座るロキを見る。

悔しいけど、ロキとの身長さで目線が同じだ。

なんだか、腑に落ちない。

まぁそこは置いておくとして。

とにかく、今はこのあほに説教してやらなきゃ。

いい加減にして貰わないと困る。

私がとばっちりを受ける事で、私の友達にも心配かけちゃう。

ロキには言わないのが良いと思ってたのは、私の勘違いだ。

さっきの保健婦武田の憎悪に満ちた目を見て思った。

このまま、私が逆恨みに巻き込まれるなんて冗談じゃない。

自分のけつは自分で拭いて貰わなきゃ困る。



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