パンドラの箱6
ここからはロキの視点です。
洗い終えた食器を拭いてると、バスルームから悲鳴。
「な、なにこれぇ!」
俺は水道を止める事さえ忘れて、蒼空が居るバスルームに駆け込んだ。
そこには、スカートにブラと言う悩ましげな姿をした蒼空が居て思わず見とれた。
突然侵入して来た俺に、驚いて立ち尽くす蒼空。
俺達は互いに無言のままで見つめあう。
このまま、襲ってしまいてぇな。
不埒な考えが頭に過ぎる。
体の方もそれに比例して反応し始めた時、2度目の悲鳴が響き渡る。
「いやぁー」
胸元を手で隠して、顔を真っ赤にした蒼空はかなり興奮してやがる。
一先ず落ち着かせねぇと。
「・・・ま、まっ、待て」
俺は手で牽制しながら、蒼空が次々と投げてくる品物を避ける。
クソが何でも、投げりゃいいってもんじゃねぇぞ。
「エロ神様、出てけ。早く出てけ」
投げる物が無くなった蒼空は、涙目で俺を睨みながら片手で必死にバスルームから押し出そうとする。
俺はさっきブラシが当たった額を摩りながら、蒼空を落ち着かせようと言葉を掛けた。
「待てって、いてぇ・・・落ち着け」
「いいから、出て。早く出て」
上目遣いに俺を睨む視線が、色っぽい。
色々な意味でやべぇな?
・・・ったく、いい加減冷静になりやがれ。
さっきの悲鳴の原因が分からねぇのに、出ていけるかっての。
「待て待て、お前。なにを叫んでたんだよ」
蒼空の肩を持った。
『あっ』って顔をしてから、ゆっくり自分の胸元に視線を落とす、蒼空。
「ロキ・・・変な絵が・・・」
「はぁ? とにかく見せろ」
俺は胸元を隠してる蒼空の片腕をそっと避けて、それを見た。
「はぁ?」
唖然とした。
てか、なんだこれ。
契約の印・・・か?
今までこんな鮮やかな蒼は見たことない。
「な・・・なんだと思うこれ?」
と言う蒼空の質問に、契約の印だと伝える。
でも、今まで見たことのない印に俺さえも戸惑っていた。
張本人の蒼空は不安で堪らなねぇんだろうけど。
俺は正直に伝えた。
聞いていた契約の印は、白色。
鮮やかな空色の2対の羽は、どんな意味を示すのか、俺には分からない。
それでも何故かそれに触れたくなって、指をそこに伸ばした。
その瞬間、大量の熱の放出と何かに阻まれるように、俺の指が弾かれた。
まさかの事態に放心してしまった。
蒼空は見る見るうちに、全身に熱を帯びていき。
苦しそうな呼吸を始めた。
どうすれば・・・いいんだ。
どうすれば、この事態を打開できる。
考えあぐねいてるうちに、蒼空の体がグラグラと揺れはじめた。
「・・・ロ・・・キ」
搾り出すように俺の名を呼んだ途端に、蒼空の体がその場に崩れた。
耳に届いた蒼空の声に、ハッと我に返ると蒼空を抱き抱えた。
熱くなった蒼空の体は、俺が触れ瞬間に冷却され始めた。
なん・・・だよ・・・これ?
俺に縋り付くと、蒼空はそのまま意識を手放した蒼空をギュッと抱きしめた。
「蒼空・・・」
不安に包まれた俺の声が、淋しげにバスルームに響いた。




