空から落ちてきた3
「今回は、前みたいなチャラ男じゃないよ」
私の心を読んだのか!と思わせる発言。
「それでも、無理。ほら、早く朝練行くよ」
足を早めて部室を目指す。
「もう・・・待ってよ~」
私の返事に納得できない様子の咲良は、少しふくれっ面。
そんなの知らないし。
部室に着くと、先輩達も数人来ていて着替えを始めていた。
「おつかれさまでぇ~す」
「お疲れさま。蒼空と咲良は相変わらず早いわね」
そう言って、微笑んだのはバスケット部の女神事、2年の渋木未来先輩。
学校のマドンナと言われるほどの、黒髪ストレートの超美人。
性格も成績もよくて、こんなパーフェクトな人は見た事ない。
私達2人を特に可愛がってくれる。
「あら、咲良は朝から機嫌が悪そうね」
綺麗な顔で笑う。
「聞いてくださいよ~。蒼空ったら、合コンに行かないって言うんですよ」
未来先輩に泣きつく咲良。
「合コン?」
「はい、そうです。今日はなんと!西華高校のイケメン軍団となんですよ。メインの蒼空が居ないんじゃしらけちゃいますよ」
は?メインになった覚えはないんだけどね?
「まぁ、蒼空目当ての男の子多いからねぇ」
そこで、そこであなたまで納得しないでください、未来先輩。
私は2人の会話を聞きつつも、ユニフォームに着替える。
「そうでしょう! 未来先輩からも言ってやってくださいよ」
「こら! 咲良。未来先輩を味方につけようとすんな」
キッと睨み付ける。
「だって。可愛い蒼空が居ないと困るのよ。みんな、あんた目当てで来るんだから」
「は? さっきから、私目当てって何?」
私は眉を潜める。
「そんなの、合コン条件に姫野蒼空参加って言うプレミア付けたもん。そしたら、希望者が続出したらしいよ。輝君が言ってた」
輝君とは西華に言ってる咲良の従弟だ。
ってか、意味の分からない条件を出してんじゃないわよ。
「私にはそんなに人を引き付ける力はない」
はっきりと言ってやったら、
「あぁ~ホント無自覚だよね」
となぜか呆れた顔をされた。
「仕方ないよ、それが蒼空だからね」
何故かウンウンと頷いて、咲良の肩ポンポンと叩いた未来先輩。
「はぁ~ですよね」
そんなジト目で見てきても知らないし。
咲良は名残惜しそうに私を見ながらも着替えだす。
未来先輩と咲良の意味不明な会話は終了したようだ。
その場に居た全員が着替え終わるのを待って部室を後にする。
1時間の朝練は、心地好い怠さと少しの疲れを体に残して終わる。
毎回の事ながら、朝練のせいで午前中の授業は眠い。
目を擦りながらも耐え忍び、昼休みを迎えた。
「姫~お昼行こう~」
同じクラスの大塚密が弁当片手に、声を掛けてくる。
黒髪のベリーショートで、フワフワした感じの彼女は、小動物に見える。
うちのクラスのマスコット的存在だ。
「うん、屋上行こう」
私も鞄からお手製の弁当を取り出す。
「あっ! 俺も行くわ。良いだろ、姫」
コンビニの袋を手にぶら下げて立ち上がったのは、剣持衣弦。
金髪モヒカンの彼、見た目にそぐわないぐらい硬派だったりする。
サバサバしてて、話しやすいクラスメートの一人。
顔は・・・たぶんイケメンの分類のはず。
「じゃあ、おーれもぉ。姫ちゃんと一緒に」
ハイハーイと手を上げたのは、女の子みたい可愛い顔をした坂下瑠衣君。
長めの赤い髪、いつも前髪を可愛いピン留めで止めてる、凄くキュートな男の子。
駆け寄ってきて、私の腕にしがみついた瑠衣。
「離れなさいよ。姫と歩くのは私よ」
瑠衣の腕を引き剥がして、代わりにしがみついたのは、松戸麻美。
胸まである薄茶の髪で、サイドに白メッシュをいれてる所謂ギャルメイクの彼女。
勝ち気で、男慣れしてる彼女は怖いものなし。
このメンバーが入学式から仲良くなった5人組。