空から落ちてきた18
毎日食卓には見事な料理が並ぶ。
茶碗に飯を注いで、2人で向かい合って座る。
両手を合わせて『頂きます』って言って食事を始める。
これは地上に落ちた俺が初めに蒼空に教わった事。
天界では、そんな事気にした事も教えられた事も無い。
俺は生まれすぐ両親と離れて生活するために、屋敷を与えられ、そこで乳母に育てられた。
それがうちの家の子供の育て方。
姉貴や兄貴が居るけど、そいつらも皆バラバラな場所でバラバラに育った。
親父は子供の面倒を見ることもなく、自分の自宅に住まわせた数人の愛人とよろしくやってる。
母親は・・・・そんなクソ親父に三行半を突き付けて、俺が生まれた直後に実家に帰ったらしい。
だから、母親の顔は知らねぇ。
バラバラに住んでる家族は、年に数回クソ親父の自宅に近況報告に集まる事になってる。
それ以外は干渉し合わない。
それはそれで楽だったから、文句はねぇ。
なのに、親父は自分が女を何人も囲ってる癖に、俺の素行に口出ししやがった。
確かに派手にヤリ過ぎて、天界じゃ俺の悪名を知らねぇ奴は居ねぇけど。
それでも、生まれた時から備わってるこの美貌に惹かれてやってくる女は引く手数多だった。
でも、俺は家族愛を知らねぇ。
家族での過ごし方なんかも知らねぇ。
だから、蒼空が欲しがってる暖かい家族ってのが、よく分からねぇ。
今こうやって蒼空と過ごすようになって、こんな穏やかな日々が続いて欲しいなんて思うようになった。
ったく・・・らしくもねぇよな?
蒼空を本気で手になんて入れられねぇのにな。
俺はいつか天界に帰る。
その時に人間である蒼空は連れては行けねぇ。
あいつが、少しでも神の血が入ってりゃ別だけど。
まぁ、・・・んな訳ねぇか。
無理だよな、俺の妄想だよな、そんなの。
「どうしたの?ロキ。お腹減ってないの」
食わえ箸で心配そうに俺をみる。
危ねぇ危ねぇ、ぼーっとしてた。
「いや、食う。相変わらずうめぇし」
そう言って、料理に箸を伸ばした。
今はまだ、先の事なんていい。
この時間さえあれば。
蒼空と過ごせるこの穏やかな時間を大切にしたい。




