空から落ちてきた14
母親が亡くなって一人ぼっちになった私の夢は暖かで幸せな家庭。
それに、私を援助して影から支えてくれてる足長おじさんの思いに答える為にも、私は幸せな家庭を手に入れたい。
そして、いつか『あなたのおかげで幸せになれました』と胸を張って足長おじさんに会いたいんだ。
「蒼空、お前・・・」
私を見つめるロキの瞳が揺れてた。
あ・・・そっかぁ~ロキに自分の身の上を話すのって初めてだったっけ?
「そんな切羽詰まった顔しないでよね。今はそれなりに幸せに暮らしてるし」
足長おじさんのおかげで何不自由なく生活をしてるし、学校には友達だって沢山いるもの。
今の私は決して不幸じゃない。
「お前の側に居たいと思ったのは嘘じゃねぇ。それだけはホントだ。でも・・・なんか・・悪かった」
頭と下げたロキが、悪戯して怒られた子供みたいに見えた。
やっぱり悪戯の神様だからなんだろうか。
「いいってば。気にしないで。せっかくのお誘いはありがたく断らせて頂くけどね」
と笑ったらロキは唇を尖らせて私を見た。
「笑ってんな。それにせっかく俺の一番にしてやろうって誘いを断ってんなよ」
いつものロキの口調が戻る。
「だって、嫌だもの。ロキと付き合ったりしたら、エロい事ばっかりされそうだし」
「当たり前だろうが。自分の女が目の前に居てヤらねぇなんて選択はねぇぞ」
「あぁ~ヤダヤダ、脳内メーカーやったら『エロ』だけで埋まりそうね」
「なんだそりゃ?」
「う~ん、遊びの脳解析? みたいな」
「フッ・・・よく分からねぇけど、蒼空がやったら『がり勉』って文字で埋まりそうだな」
ニヤリと笑ったロキに机の上の教科書を指さされた。
「煩いわね。足長おじさんに養って貰ってる以上、上位の成績をキープするのは当たり前でしょう」
お金を出して貰ってる身の上で、ダラダラした高校生活なんて送ってられないわ。
「て言うか、足長おじさんってなんだよ?」
怪訝そうに眉を潜めるロキ。
あぁ・・・う~ん、どうやって説明すれば・・・。
「足長おじさんは足長おじさんよ」
「だから、そいつはなんだってんだよ」
そんなに口調を荒げなくてもいいじゃん。
「私のお母さんが亡くなってから現れたの。あ! 現れたって言っても会った事はないんだけどね」
「はぁ? そいつ怪しいんじゃねの」
「うん、私も初めはそう思った。最初はお母さんの初七日の日、通帳とキャッシュカード、ここのカードキーと手紙が送られた来たの」
ロキはベッドに腰を掛けなおすと怪訝そうに眉を寄せて私を見た。
そして、おもむろに自分の隣をポンポンと叩いた。
「ちょっと、ここ座れ。そして詳しく話せ」
真面目な顔のロキに、椅子から降りてベッドの側まで行きロキの隣に腰を降ろした。
「詳しくって言ってもなぁ」
「良いから順序よく教えろ」
「まぁ、いいけど。母親は独身のまま私を身ごもって勘当されて家を出たから、私には頼る身寄りもなくてね。近所の親切なおばさん達が何も分からない私の代わりにお葬式とかやってくれて。そんな時に足長おじさんからの手紙が来たの。手紙には母親の古い知り合いだって書いてあった」
「お前・・・苦労したんだな?」
ロキの大きな手が頭の上に乗る。
大きなその手はなぜかとても温かかった。
「その頃ちょっと、自暴自棄になっててさ。一人ぼっちになってこの先どうなるのかなぁって。だからやけっぱちで怪しげな手紙の誘いに乗った。で、ここに来てみたら全ての家具とか衣食住が全て用意されてたの。ホント驚いたよ。それから時々励ましの手紙が来たりして徐々に相手の事を信用するようになった。クリスマスや誕生日にはプレゼントとケーキが届くの。その度に、1人じゃないんだって思わせてくれたんだぁ」
「・・・今では一人でよく頑張ってきたな」
優しい目をしたロキにワシャワシャと頭を掻き回された。
なんだか・・・ほっとして涙が出た。
ロキに話した事で気が抜けなのかな。
お母さんが亡くなってから、こんな風にしてくれる人は居なかったから。
まさか、ロキの優しさで泣いちゃうなんて一生の不覚だ。
それでも2年間溜めに溜めた涙は、止まる事を知らなかった。




