空から落ちてきた13
「嫌よ、何が楽しくて休みの日まで一緒に行動しないといけないのよ。それに私は明日、衣弦と約束があるよ」
そうこれはホント、衣弦の妹10歳の誕生日プレゼントを一緒に探す手伝いがある。
今日の昼にお願いされた。
「・・・衣弦。あいつとはよくて俺はダメなのかよ?」
悲しげな声が聞こえて なんとなく振り返る。
そこには真っ直ぐに私を見ていたロキの姿。
どうしてそんな寂しそうな顔してるの?
「別にそうじゃないけど。衣弦に今日のお昼に頼まれたんだもん。妹の誕生日プレゼントを買う手伝い」
あっさり出かける内容を告げると、
「はぁ、デートじゃねぇの?」
目を見開いて尋ねてきた。
「うん、違うけど。てか、友達とデートってキモいでしょ」
「ククク・・・衣弦の奴、ご愁傷様」
「えっ? 何か言った?」
ロキの呟きが聞こえなくて聞きかえす。
「なんでもねぇよ。だったら、俺が一緒に行っても問題ねぇよな?」
口角を上げるロキ。
「まぁ~別に良いけど。あんま楽しくないよ? 10歳の女の子にあげるものだから、ファンシーショップとか回るし」
「あぁ、別に良い、一緒に行く」
「そっ、まぁいいけど」
私の返事を聞いて、満足そうに笑うロキ。
10歳の女の子の誕生日プレゼントを買いに行くのについて行けるのがそんなに嬉しい事なのだろうか?
「ところで、ロキは英語のレポートやったの? 明日一緒に行くならやっておきなさい」
自分のレポートの目を落としながらそう言う。
「あぁ・・・あれはなんとかっつ~女がやってくれるって言ってた」
なんとかって誰よ?
「と言うか、遊んだ女の子の名前覚えてあげなさいよ」
「別にヤるのに名前なんて必要ねぇよ」
「生々しい表現は止めてよね。エロ神様」
「本当の事じゃねぇか」
ロキは女の子の名前を憶えない。
私以外の名前を呼んでる所を聞いた事がない。
よく一緒にいる咲良達でさえも、『おい』『おんな』だったりする。
ホント、失礼極まりない男だ。
「あんたの、その女の子を性欲の捌け口にしか思ってないような発言止めなさいよね。いつか刺されるわよ?」
まったくもって、こんな男に引っかかってる女の子達の気が知れないわ。
「相手にも初めに言ってある。それでもいいって女しか相手にしてねぇよ」
女の子達もそれなりって感じかぁ~。
私なら自分が好きで、相手も自分を好きじゃないと嫌だなぁ。
シャープペンとクルクルと指で回しながらそんな事を思った。
「まぁ、遊びもほどほどにねぇ」
軽く言ったつもりなのに、
「お前が俺の相手してくれるなら、お前だけにする。他の女は全部切るぜ?」
となんとも、俺様発言をぶちかましてくれる。
「嫌だし」
「速攻かよ」
拗ねたような声のロキ。
「だって、心が通じ合って無い行為に意味は見いだせない」
「俺達ってなかなかいいカップルになれると思うぜ」
「はぁ? 寝言は寝てから言いなさいよ。私はロキを好きじゃないし、ロキだって心の中に居るのは私じゃないでしょう」
椅子ごとクルッと回ってロキを見る。
「・・・っ・・・」
ロキは目があった途端にバツが悪そうに目を伏せた。
私の読みは当たってる。
ロキが来て2週間で私が感じた違和感。
時々寝言で呼ぶ『アテーナー』と言う名前は、きっとロキの思い人。
そんな気がしていた。
ロキは寂しさを紛らわす為だけに、女の子達と関係を持ってる気がするんだよね。
でも、私は誰かの代わりになんてされたくない。
「悪いけど、誰かの代わりなら他を当たってね」
優しくされても身代わりになんてなりたくないよ。
「そんなつもり・・・は」
いつもと違って弱弱しい俺様ロキ。
「つもりはなくっても、心の中に違う人がいればそうなるよ」
「・・・」
「私はさぁ、母親が死んで今は天涯孤独なんだよねぇ。父親の事なんて生まれた時から知らないし。だから、自分の本当の家庭が欲しい。相手を愛して、私を愛してくれる人がいて。愛した子供達がいる家庭。だから、ロキの力にはなってあげれないよ」
気付いたら、自分の夢を話してた。
心に思い描いてる家族は諦められないの。




