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落ちてきたのは神様  作者:
神々の住まう世界
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神々の住まう世界1


シルビィの先導で、夜空を登った。

初めてなのに、スムーズに飛べたのはやっぱり私の中にある血なのだろうか。

バサバサと羽ばたかせるその羽は、重さを全く感じない。

随分と高い所までやって来たと足元を見下ろせば、少しの震えと寂しさが込み上げた。

眼下に見下ろす住み慣れたら街の夜景に胸が痛む。

もうあの場所には帰れないんだ。

頬を掠める金色の髪に、自分が違う世界の住人になったことをいやと言うほど思い知らされる。


「どうかしましたか?」

シルビィは眼下を見つめたまま止まってしまった私を振り返る。


「ううん・・・何でもないの」

左右に首を振った。

天界に行くことは自分が決めた事だから、こんな場所で寂しがってる場合じゃないよね。

バサバサと羽を羽ばたかせてシルビィの側まで近付いた。


「・・・蒼空様」

シルビィは心配そうに私を見つめる。


「さ、行こう。シルビィ。上空に上がると寒いね」

「・・・もう少しの辛抱です。もう少し飛べば天界へと入り口がありますから」

シルビィの言葉に夜空を見上げたけれど、それらしいモノは全く見えなくて。


「見えないけど、もう少しなの?」

小首を傾げてそう聞いた。


「はい、こちらからは見えないようになっていますが、近付いていけば天界の者にのみ入り口が反応してくれます」

「おぉ~便利なシステム」

簡単に見えたらダメだもんね。

普段は見えなくなってて当然だと思えた。

天界の入り口なんて人間に発見されたら、それこそ大スクープで大変な事になるよね。


「はい、だからもう少しだけ頑張ってください」

「うん」

頷いてシルビィの隣を上へと目指して羽を羽ばたかせた。

シルビィの言う通り、天界の入り口は突如現れた。

眩しいぐらいの光に包まれたと思ったら、私達はその中へと飲み込まれた。

眩しさに目を瞑った私の手を、シルビィの小さな手が掴んだ。

何とも言えない感覚に、恐怖が込み上げる。

本当に、私は天界の住人として迎えられるんだろうか。

ダメだと弾かれたら・・・。

初めて芽生えた恐怖に、カタカタと指先が震え始める。

少しして、先ほどまで感じていた寒さが無くなり、暖かさに体が包まれた。

どうなってるのかな?

もう目を開けて良いだろうか。


「蒼空様、もう大丈夫ですよ、目を開けてみてください」

シルビィの優しい声にゆっくりと目を開けた。

白・・・ 輝く一面の白。

天界の第一印象はそれに尽きる。

見渡す限り白の広がる世界に吐息が漏れた。


「・・・凄い、ここが天界」

「はい。住居区はあの山の向こうにあります」

シルビィの先示す方向には白くて大きな山があった。

目が慣れてくると、白の中に色とりどりの綺麗な花が咲き誇ってるのが見えた。

今まで見たどの景色よりも綺麗な場所が広がる天界。

まさに、神が住まう場所なのだと思えた。


「とても空気が澄んでる」

ゆっくりと深呼吸をしてから、シルビィを見た。


「はい、地上と違ってこの場所には不純物は有りませんから」

「なるほどね」

さすが天界。


「さぁ、もう少し飛びましょうか」

「う、うん」

ずっとここに居ても仕方ないもんね。

シルビィの後を少し遅れて飛び始める。

それにしても、私の潜在能力って凄いのか、順応性が高いのか。

生えたばかりの羽をこんなにも使いこなせるのか不思議。


大きくて羽ばたかせる事も出来るし、垂直にも平行にも飛ぶことが出来るんだもん。

それに、さっきみたいにホバリングみたいなのも、なんなくできる。

しかも無意識だから凄い。

ずっと前から背中に生えてた気がするぐらいだもん。


何となく・・・何となくだけど、試してみたくなった。

背中に力を入れるようにして、上空高く舞い上がる。


「そ、蒼空様、なっ、なにを?」

私の突然の行動にシルビィが顔を青ざめさせた。


「ちょっとだけだから」

そんな言葉を残して猛スピードで天空を目指す。

ここが天界なので、天空と言うのが正しいのかどうかは分かんないけどね。

心配そうなシルビィを他所に、高く舞い上がった私はきりもみ状態で下降した。

クルクルと回転しながら猛スピードで滑空する。


「あぁ・・・そ、蒼空様ぁ」

シルビィの悲痛な叫び声が聞こえる。

フフフ・・・楽しい、気持ちいい。

頬をかする風にご満悦な笑みを浮かべながら、天界の地面ギリギリで体を立て直し垂直に体を保って羽をバサバサと羽ばたかせた。


鳥になったみたい。

これ、楽しいんですけど。

春先の燕を見てあんな風に飛べたら楽しいだろうなって、いつも思ってたんだよね。

笑みが自然と漏れ出る。

私も鳥と同じだよ。


「そ、蒼空様、無茶は止めてください。俺の心臓が幾つ有っても足りませんよ」

フワフワと飛び始めた私に慌てて駆け寄るように飛んできたシルビィは、気難しげに眉を寄せた。


「大丈夫だって。羽が体の一部みたいに思うように動くから」

「当たり前です。もう体の一部なんですから」

と凄い勢いで叱られる。

シルビィってこんなに怖かったっけ?


「あ・・・そっか。でもさ、上手く飛べてたでしょ?」

自分で言うのもなんだけど、優雅だったと思うんだよね。 


「はぁ・・・確かにお上手でしたよ。でも、急にやるのは止めてくださいね」

そう言われたので、

「うん。じゃあ今度からは言う」

と答えた。

シルビィが呆れ顔で大きな溜め息をついたのは言うまでもない。


「さ、行きましょう」

シルビィがそう言って進行方向を向いた時だった。

沢山の羽音が聞こえてきて、それが私達目指して飛んできたんだ。

白い塊が徐々に人形を形成していく。

よく見てみると私と同じ様な大きな白い羽の生えたギリシャ神話に出てきそうな白い布を着た男の人達だった。


「どうやら、親衛隊の迎えが来たようですね」

シルビィはそう言うと飛ぶのを止めて私の肩にチョコンと座った。


「だ、誰? あの人達」

怪訝そうに眉を寄せた私に、

「主様の親衛隊です。蒼空様を迎えにあがったのだと思います」

とシルビィは言う。

すっごく物々しく見えるのはきっと気のせいじゃないよね。


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