未来への決断4
目を瞑ってから胸に左手を当てた。
時を刻む鼓動は、規則正しく打っていて。
その鼓動に合わせるかのように、呼吸を整えた。
私の望む道。
再びロキと会いたいと。
ゆっくりと目を開けると、私を優しい瞳で見つめるシルビィがいて。
私の言葉だけを待っていてくれる。
「・・・シルビィ」
少し声が震えた。
「・・・はい」
シルビィのしっかりした返事に私は薄く微笑むと、
「話を聞かせて。どんな話でも受け止めるから」
と告げた。
本当は不安に押し潰されてしまいそうだけど。
ロキに近づく道があるのなら、聞かずには居られない。
「はい、お話しします」
目尻を下げたシルビィが優しい声でそう言った。
向けられた真剣なシルビィの瞳に手に汗を握りしめた。
そして、シルビィから語られた事実に驚愕する事になる。
空気の張り詰めたリビング。
煎れたてだった珈琲は、すっかり冷たくなっていて。
話終えたシルビィも、聞いていた私も言葉を発することは出来なくて。
あれか、どうやって家を出たのかも分からない。
でも、気付いたら教室の自分の机に座っていて。
4時間目終了のチャイムに我に返ったのだ。
ざわつく教室、椅子を引く音。
「・・・ひ~め、お昼よ」
私の肩をそう言って叩くのは麻美で。
もう片方の手に持ったお弁当の袋を掲げて見せた。
「あ、う・・・うん」
麻美へと視線を向けて頷いた。
「姫ちゃん、お弁当忘れたのぉ?」
といつもお弁当箱をかけている机の横を覗くのは蜜。
「そ、そう。時間なくてさ」
お弁当を作るどころじゃなかったし。
シルビィの話を聞いて、放心した状態で学校まできた。
まさか、あんな決断が更に待ってるだなんて思ってなかった。
ロキに会うためには、ここにある全てを手離さなければいけないなんて・・・。
「じゃ、学食いく?」
と笑顔で聞いてくる麻美。
「あ・・・ううん。購買でパンを買ってくるよ」
今は食欲もあんまりないし。
軽く食べれるクロワッサンでも買ってこよう。
「じゃ、買いに行こう」
と言ってくれた麻美に、
「蜜と先に屋上に行っててよ」
と返す。
わざわざついて来てもらうのは悪いし。
それに、今は少し一人になりたい気分なんだ。
頭がもうパンクしてしまいそうなの。
「えぇ~ついていくよぉ」
腕にしがみついて拗ねるのは蜜で。
「早くいかないと場所取られちゃうでしょ」
と言い聞かせる。
「でぇもぉ~」
蜜は瞳を潤ませて私を見る。
フフフ・・・可愛すぎるでしょ。
私は立ち上がると麻美を見る。
「麻美、場所取りよろしく」
と告げる。
「了解。ほら、蜜先に行こう」
私の何かを読み取ってくれたらしい麻美は、蜜の腕を掴んだ。
「あ、麻美ちゃん。ひ、姫ちゃん後でね」
蜜は自分の腕を引っ張って歩きだした麻美に困惑するも、振り返って私に手を振った。
そんな蜜に笑顔で手を振り返す。
「また、後でね?」
2人の背中を見送る。
不安そうな蜜の顔に申し訳なく思う。
そして、私の気持ちを察してくれた麻美にも。
でも、今の私は本当にどうしていいのか分からないんだ。
麻美や蜜と離れ離れになるなんて・・・。
ドアを抜けていった2人を見届けてから、私も足を踏み出した。
教室を出て向かうのは購買部。
本当にパンが欲しい訳じゃなかったけど。
今は何かをしていないと不安に押し潰されそうなの。
廊下には沢山の生徒が行き交っていて、私はその中をすり抜けるように歩く。
喧騒の中に居ても、心は自棄に静かで。
なのに、苦しさは私を立ち止まらせようとする。
こんなにも苦しい胸のうちを、どう処理していいのか分からないんだ。
無に成りたいと願ってしまう。




