空から落ちてきた10
こいつの、素行の悪さは雰囲気から感じ取れるし。
それが理由なら納得出来るわ。
「あっ、てめぇ、簡単に納得してんじゃねぇよ」
私の顔つきで分かったのだろうか?
「だって、素行の悪さが滲み出てる」
ボソッと言ったつもりが、しっかりロキには聞こえてた。
「うぜぇ、そんなもん、滲み出てねぇよ」
不機嫌そうに顔を逸らした。
いやいやいや・・・完全に滲み出てるから。
「まぁ、いい。詳しい話するから、一旦部屋に戻るぞ」
その言葉にうんうんと頷いた。
空中遊泳も、なかなか貴重で楽しいけれど、不安定な感覚はやっぱり慣れない。
出来れば早く地に足を付けたい。
ロキは私が頷いたのを確認して、方向転換すると元いた部屋を目指した。
5分程で、見慣れたベランダに降りる事が出来た。
ロキの腕から、飛び降りるとしっかりと自分の足でベランダを踏み締めた。
うん、やっぱりこうでなくちゃ。
少し膝が笑ってたけど、気を引き締めて歩きはじめる。
部屋の中に戻って、ベッドルームを通り抜けて、リビングのソファーに腰を降ろした。
ロキは黙ったまま私の後ろからやってくる。
「あんたはそっちよ」
隣に座ろうとしたロキを押し戻して、対面のソファーを指差す。
「・・・チッ、ケチくせぇ」
そう言ったのは聞こえない振りをしておいた。
「で・・・どう言う事か、一から説明してくれる?」
深くソファーに座って、腕組みをしたままロキを見る。
「あ~仕方ねぇな。まず、俺はクソ親父に力を奪われて天界から突き落とされた」
わしゃわしゃと自分の黒髪を掻き混ぜるロキ。
「素行が悪かったからね」
「いちいち、うるせぇ」
と睨んできたロキに、
「でも、本当の事なんでしょ?」
ニヤリと黒い笑みを浮かべた。
自業自得と言う言葉がぴったりだと思う。
ロキは悔しそうに眉を下げたまま、話を続ける。
「で・・・落ちた所にたまたまお前が居て。気に入ったから契約のキスをしたら、力が蘇ったって訳。まぁ、本調子の力じゃねぇけどな?」
と笑う。
「・・・」
て言うかさ、さっきから契約って言ってるけど、なによ、それ?
「契約ってのはな結ぶと、契約者の側限定で力が使えるようになるんだ。契約する事で、お前は下界での俺の管理者になり、俺はお前が居ないと力を使えないから無茶も出来なくなる」
「・・・」
「契約した俺が暴走しないように、足枷になるのが契約者と定期的にキスして、生気を交換しなきゃいけねぇって事。じゃねぇと、俺もお前も死ぬ。もちろん、互い以外の第三者とキスは禁止だ。それを破れば酷い目に合う」
なんともま~迷惑な話だ。
この男、なんてことしてくれたんだ。
「私、完璧に巻き込まれただけじゃないのよ」
ロキを睨みつけて抗議する。
「まぁ~そうとも言うかもな」
「呑気に笑ってんじゃないわよ。ふざけんな、この変態野郎」
テーブルにガンッと握り締めた拳を叩きつける。
「変態野郎はねぇよなぁ。これから生活を共にするんだから、仲良くやろうぜ?」
ヘラッと笑ったロキに殺意が芽生えた。
「冗談じゃないわよ。こんな契約無効よ。早く解除しなさいよ」
「それは無理。一度契約したら、俺が天界に戻るまで契約は解除出来ない」
サラッと恐ろしい事を言ってのけるロキ。
「い、いつになったら帰るのよ」
「さぁ、親父次第じゃね?」
「冗談じゃないわ。間違った契約をしたって、お父さんに言いなさいよ。そしたら、なんとかなるでしょ」
最後の望みを口にしてみる。
「あ・・・無理だわ。連絡の取りようねぇもん」
あっさりと帰される言葉に、肩をガクンと下げた。
終わった・・・私の人生最悪じゃん。
こんな変態と一緒に生活なんて真っ平ごめん。
でも、死ぬのもヤダし。
どうすりゃいいのよ。




