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その日は嵐か、雲なき空か

作者: そこら辺の蟻

「やべぇ。超やべぇ」

俺は今日、人生の危機に瀕していた。

なんの危機か、それは……

「宿題終わらん」

もう夏休みも終盤だ。というかあと2日だ。最後の1日は友達と約束入ってるし……

じゃあキャンセルすればいい? なに言ってる、この学生人生の中での唯一の娯楽を俺から奪うか。

話を戻そう。

残りの宿題は手を付けていない読書感想文、各種テキスト、止めの自由研究だ。

どうしてこうなったか、いやぁ、しょうがなかったんだよ。

夏休みはいるじゃん?

遊ぶじゃん?

遊ぶじゃん?

帰省するじゃん?

遊ぶじゃん?

遊ぶじゃん?

なんと言うことでしょう! 匠の手によって、暇だった長い時間が、見事にあと2日に生まれ変わりました!

また逸れた。

今の時間は午前7時、昨日の夜そう言えば今日何日だっけ? つったのが始まり。親? もう半分赤の他人みたいなもんだよ。金だって自分で投資したりバイトしたりしてあるから学費も自分で出してる。

勝手にしてる感じよ。俺は。

「ッツー訳だ。頼む、答えを教えてくれ! 対価としてあの写真をやろう! あのアイドルのやつ!」

まず答えのないテキスト類を片付けるため、俺は電話であるアイドル好きの変態だが頭はいい同級生に懇願した。

「んだよ、しょうがねーなぁー、で、誰の写メ?」

「あの今人気の…お前ならわかるだろ? 手にいれるのに、苦労したぞ?」

「マジか!!!!」

「頼まれてくれるな?」

「良いとも!」

「じゃあ07時30分に○ニーズで会おう!」

よし、第一関門突破!

と言う訳で俺は家を出、○ニーズに向かう。あそこには電車をつかって行かねばならぬ。読書感想文を書くための本あるのでこれを読みながら行こう。歩きスマホだぁ? スマホじゃないからいいのだ。




ふぅ。やっとついた。いやぁ、危なかった。あと10秒遅かったら電車に乗り遅れてた。久しぶりに走ったお陰で我が腰に数々の親父達を苦しめてきた伝説のやうつうが俺に襲い掛かってきたわ。

「お待たせん! なにお前本読んでんの!?」

「そんな驚くことか? 読書感想文だよ」

「まぁいいや、で、例のブツは?」

テーブルで本を読んで待っていると例の変態が来た。

「ほれ、召し上がれ」

「うっひょおおおおおおおおお!!!!」

ブツを渡すと叫び出した。あ、天をあおぎ始めたわ。

「いてぇ!」

「…あのな?ここファミレスだよ?」

あんまり煩いし、周りの目線が痛いので秘技・TUKUENO-SITANO-KERIが火を吹いた。

「そっちもあるよな?」

「おう。これだ」

「有難う、心の友よ」

いけないことなのは分かってる! でもしょうがないんだ!

バレないように敢えて少し答えをはずしておく。

「ついでに飯食おうぜ」

「まぁ昼食ってねぇしいいか、オッケー」

俺はステーキを選んだが、あいつ、ここの最高級ハンバーグを選んでやがる。

俺はお金があるからいいが、あいつの家そんなに金あったっけ?

俺より先に来たんでがつがつ食ってるあいつ、もとい山田に聞いてみる。

「お金あんのか? そんなに食ってよ」

「……」

「おい? どうしたんだ?」

気になったので尋ねて見たが返事がない。俯いてるわ。何? 不味いのか?それ。

「おぉーい? はろー?」

「……ゴチになります」

なんか小さな声でゴチになりますとか聞こえたなぁ?

あれぇ? 不思議だなぁ? なんだろなぁ?

「……今なんと?」

「……財布忘れました本当に申し訳ありません!」

さっとソファから離れ、俺の前でDOGEZAかましてきた。

ふぅー。

落ち着け俺、落ち着くんだ!


脳内緊急会議開始!

ありがちな会議室を囲み、俺、天使、悪魔が座っている。

この天使と悪魔はまぁ俺の悪な感じのやつと善良な感じのやつの具現のようなもん。

『さて、どうしようか』

『ここはコイツに恩を売って後で回収しようぜ! 利息つけてな』

『駄目よ! 友達としてここは見返りを考えずに払ってあげましょ?』

『なにいってんだてめぇ? あぁ? 喧嘩売ってんのかぁ? あぁ?』

『なによ! 女子に喧嘩売るとか男としてどうなの? アホ?』

『うるせぇーー!』

余りに五月蝿いので机を叩いた。

『ここは私に任せなさい。ここを収拾してやるわ。』

『ミスんなよ? したら承知しねーぞ。』

と言う訳で天使に体を譲った。


「私の靴をなめたら奢ってやらんこともないぞ? 山田とやらよ」

「……え?」


顔をあげてポカンとしてるよ。あいつ。


『だぁぁぁぁぁ!』

『ふふん! どうよ? 私の手腕は』

『お前それ正気でいってんのか?』

やらかしやがった天使をしかったがこいつ、悪気ねぇのかよ。悪魔よりタチ悪いぞ。

『そうだそうだ! どうせレディーファーストとか言うだろうから譲ってやったのによぉ。』

『はぁ? 知らないわよそんなの。ばっかじゃないのー?』

『もういいよ。自分でやるよ。』

その言葉を最後に、第一回脳内会議を終了した。


「ゴメンゴメン、お金はおごるからさ、許してくれよ、な?」

俺もソファから降りて正座して手を合わせた。

「口止め料ってことでいいか?」

「おぉ! ありがとう! この恩は忘れねぇ」

まぁ最高級とはいえファミレスだしな。大丈夫だろ。それにこの間株でもうけたからな。

山田はソファに座り直したので俺もそうした。

「よし、じゃあ次だ」

「……は? まだ食うの?」

「当たり前だろ? ほら、遠慮すんなよ」

山田は舌で唇をぺろりと舐め、グランドメニューとかかれたメニュー表を渡してきた。

「遠慮もなにも、もう食えねぇよ」

「おいおい、嘘つくなって。そんなわけねぇだろ? 育ち盛りの高校生がよ、ステーキ一個で腹一杯って。」

「バッカいえ。誰も彼もお前みたいに腹にブラックホール抱えてる訳じゃねーんだよ」

このままだと俺の財布もこいつのブラックホールに持ってかれるぞ。

「ブラックホールってなんだよ。失礼だな」

「いやもう金があんまりねぇぞ?」

遠慮ってもんを知らねぇなぁ、こいつ。




結局、あのバカ(山田)に財布の大半を吸収されたわ。やっぱあいつパないわ……

家に帰ってくる前に100均で指紋セットとやらを買ってみた。どうも指紋採集が簡単にできるらしい。テキトーにまとめるとして、俺のだけだと不安だなぁ。どうするか……なぁ??

「何だよ、こっちジロジロ見て……っつかバレてんのかよ」

なんか付いてきてた山田を見る。

さっきのことがあったのか、流石にキレるのは自重したらしい。

「指紋くれ、あとまとめ方を教えて」

「おまぇなぁ……」

段々小さくなっていく山田の声を無視し、山田の家に押し掛けた。

「ただいま~」「お邪魔しまぁす」

「お帰り~……まぁ! お友達?」

山田のお母さんがキッチンからこちらの姿を確認するやいなや突撃してきた。相変わらずすげぇな……

「おう、クラスの又理君だ」

「ど、どうも……」

山田のお母さん(以下山田母と呼称)の嬉しそうな感じが刺さる。

家では親とも触れあわなかったからな。耐性がないような感じだ。

「ちょっとこいつと話があるから部屋にはいるわ」

「友達のことこいつだなんて言わない! ごめんね~こんな子で……」

「いえいえ! 大丈夫ですよ(いろんな意味で)」

ってな感じで山田母との会話を終え、山田の部屋に入った。

部屋はやはり思った通りの様相を呈していた。

6畳はあるだろうか、かなり大きい(子供にしては)部屋なのだが、壁一面ではあきたらず、ドアや棚などの様々な所にアイドルのポスターや写真が貼られている。

あと所々にちょうど山田の拳くらいの大きさの穴がある。

……深く考えない方がいいだろう。あいつにもいろいろあるのだ。

「んで、何からやるか?」

「ん~……お前もう宿題終わったろ?」

「あったり前よ! 見るか?」

「おう、見せてくれ」

部屋の真ん中にある机を挟んで座っていた山田が取ってきたのは……

「アイドルの研究……?」

「おう、アイドルにもいろいろ違いがあってよ……」

~5時間後~

「ってな感じなんだよ。どうだ? いいもんだろ? アイドルも」

「まぁ悪くはないかな……って今何時だ?」

窓の方を見るとそこにはそれはそれは綺麗な夕焼け空が広がっていた。


畜生、脳内緊急会議開始!

前回と似たような感じだが、今回はどうなることやら……

『さて、ここから約35日分の宿題を終わらせられるだろうか?』

『余裕だろ、俺とお前が組めば敵なしだ!』

『っは! 出来るわけないじゃん! もう割りきって遊んじまおうよ』

なんかもう天使と悪魔を入れ換えてもいいと思う。まぁもういいのだが。

『なにいってんだよ? あぁ? あとでやるのが面倒だからやるんだろ、バカか?』

『はぁ? テメェに言われたくないわよ! でもできないでしょって、そういってんのよ。文句あんの?』

『ぐぬぬ……』

なんか悪魔が劣勢か。同性だからか可哀想に思えるわ。

『というかさ、これって』

『『あんた(お前)のせいじゃね?』』

天使と悪魔のダブルコンボ!耐えられない!

『……二人とも仲良くなったねぇ』

『『話をそらすな!(でない!)』』

『ぐぬぬ……俺の負けだ』

ここは正直に負けを認めておこう。

しかし、俺には最終兵器があるのだよ。

出でよ! 分身の術!

『こんにちは。いい天気ですね』

脳内会議の議長権限で俺と同じ思考を持つ分身体を作り出した。

こいつなら何とかしてくれるだろう。

『『誰お前……』』

天使と悪魔も口を開けてポカンとしてる。

よし、止めだ!

『我が分身よ、宿題をするのだ!』

『まぁいいとも、オリジナルよ』

その言葉を信じるとするか。

『ってことでヨロシク!』

その言葉で第二回脳内会議を終了した。

同時に分身体に体を譲って俺は眠りについた。


「おい! おい!」

「ううん……?」

深い眠りから引きずり出された俺は不快感とともに回りを見渡す。

あれ? ここ学校やん! やば! 寝過ごした!


『お前……なにやってんだよ!』

脳内の分身体に問い質すとあいつは普通にこう言ったのだ。

『いや、だってめんどいんだもん。宿題とか』

はっ、忘れていた。俺と思考が同じってことは、宿題をめんどいと思う心も同じってことになるやん!

あーあ、人生お疲れ様でした。


「あれ? お前宿題は? 全部出てないけど」

そこで俺の意識は途絶えた。

こんなのもやってます。

暇であれば是非どうぞ。

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